俺には、自信を身につけることなどできない。
確かに、客観的には俺は先生や道場の方々から実力や努力を認められていたように見えるだろう。
しかし俺は、今までと同じことをしていただけだ。
「今までと同じこと」とはなにか? 「他人の言いなりになること」だ。
他人が望むようにすれば、他人は賞賛してくれる。
そこに俺は必要ない。
心地いいことなんだよ。他人の言いなりになることは。
だって親とか言うクソの言いなりになっていれはヤツらはエサをくれたし世話してくれた。
そこに俺の意思など求められはしなかった。
実際、道場の先生や道場の方々の指導は妥当で正しいものだった。
ではなにが敗北の原因だったか。
俺だ。
俺が成功するために排除されるべきなのは、俺だ。
俺は、何も達成することができない。
だから、俺は俺から取り除かれるべきだ。
そうすれば俺は成功し、周囲の人間は喜ぶ。
実際そうだ。
俺など捨ててしまえ。
簡単な事だ。
だって、今までもそうしてきただろう? 自分を殺してきただろう?
審査当日の晩、結果を伝えた時に先生は言った。「落ち込むな!」と。
ええ、簡単な事です。慣れてます。俺を殺せばいいのだから。
今までどおり、自分の苦しみも悲しみも誰にも言わず表現せず、腹の中で膝を抱えて声も立てられずに泣いている哀れな一匹の子供を、頭を割って殺せばいいだけですから。
でも、もう、殺す自分が残っていません。