羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第6回~北海道戦争史(2)~

2005-12-07 12:52:01 | 塾戦争光の第1章
(2、正規軍の全国制覇)
こんにちは。
本日の2コマ目は、いよいよ進学会についてです。

進学会は、1972年4月に札幌で「北大学力増進会」として創業しました。
株式会社化は1976年、1979年には札幌だけでなく旭川など道内各都市での校舎展開を開始、1983年12月には東北地区への進出を果たします。
以後、1987年には株式会社名を「進学会」とし、関東地区へも進出、翌年には東京店頭市場で塾業界では当時異例の株式公開、1989年には東海地区に進出、1990年には西日本へ進出、1994年には九州への上陸を果たし、2004年には東京証券取引所2部上場、翌年には1部上場を果たしています。

1987年からは札幌市内でのスポーツクラブの経営と、自社開発のコンピューターソフトの販売を始めています。

ちなみに進学会は地域によって塾の呼称が違います。
北海道は「北大学力増進会」
東北地方は「東北大進学会」
関東地方周辺と静岡は「東大進学会」
名古屋や東海地区は「名大進学会」
西日本は「京大進学会」
九州は「九大進学会」
となっています。
ここでは統一して「進学会」と呼ぶことにします。

しかしそれにしても、こうして歴史をたどると、全国展開しているということから、相当の規模の学習塾のように感じます。
現に、2005年度の進学会全体の公立・私立問わず高校合格者総数は19145名となっており、全国津々浦々の高校から合格者を輩出しています。
フランチャイズなどを織り込んだ塾ならいざ知らず、全国すべての教室を直営でやっている塾は皆無です。
ただ…資本金は39億8410万円、2004年3月期の会社全体の売り上げは82億2000万円で、経常利益は16億1000万円となっており、健全な経営に見えるのですが、ただ全国展開している割には経営規模がそれほどでもないような気がします。

そうなのです。
今日このように、進学会が北海道をスタートとして九州にまで、全国展開し校舎も450を数えているわけですが、これを可能にさせたのにはある「からくり」があるのです。

たとえば秀英は秀英自身で用意した全校舎秀英だけの、独立した塾授業のためだけの建物となっています。
つまりビルのテナントだとか、商店の2階とかに教室を構えることが無く、建物全体が独立して秀英のもの、ということになっているわけです(だから建物全体を秀英が気兼ねなく使える、ということになる)。

進学会はどうでしょうか。
まず自社の建物はほとんどありません。
スポーツクラブと併設された札幌市内の各本部や、室蘭、帯広の各本部と、イントロダクションでお見せした札幌市白石区の総本社ぐらいです。
あとは、ビルのテナントだったり、商店の2階だったりと、自社物件でない非独立校舎です。
ですから周りの騒音や環境の悪さ、また大家の都合である日突然移転を余儀なくされる…なんてことは日常茶飯事です(進学会の既存校舎に移転が多いのはそのためです)。
北海道など寒冷の地では建築物の寿命が温暖な地域より短い、という背景があるため常套手段とも言えますが、その後の全国展開においても進学会は同じ方策を採っています。

また講師のほとんどはアルバイト講師です。
たとえばお膝元の札幌は「北大学力増進会」の看板通り、北海道大学の学生アルバイトが大半を占めています。
「東大」「東北大」といった塾名に大学名があるのは、そこを目指すぐらいの学力ある子供を育てる目的や、その大学名から感じられるクオリティーの高さをイメージとして多くの人に持ってほしいとの願いもありますが、一方でこの大学の学生が講師として多いというのも暗に示しているわけです。
…というわけで、進学会は2004年3月現在、従業員が308名に対し、バイト講師などの臨時従業員が1352名で、正社員比率が19%に満たない状況です。

確かに大学生の講師では指導の能力に疑問があるかもしれません。
しかしつい数年前までは、現役の受験生だったわけです。
つまり新鮮で生きた経験を生徒に伝達できる、というメリットも一方でありますし、何より小中学生の中には、脂ぎったおっさん講師ではなく、大学生のかっこいいお兄ちゃん先生や、きれいなお姉さん先生に勉強を教えてもらう…このことに魅力を感じ足を運ぶ生徒もいるそうです(また年齢の近さが生徒にしてみれば話しやすいという面もある)。
つまりバイト講師も生徒集めの一助になっているわけです。

一方で賃貸の校舎やバイト講師の多さは、経営の観点からみると、建物と人件費がかからず、コスト軽減になる一番の方策です。
そのため進学会は教育の環境よりもコストを選んだとも言えるでしょうし、その結果、進学会は遠く九州まで、さほど多額の資金を必要とせずとも、全国各都市での校舎展開を早々に可能にしたとも言えるのです。

…といったところで、今日はここまで。
次回は更に進学会について語り、そしてライバルの練成会にふれていきます。

それでは、また。
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