羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第9回~北海道戦争史(5)~

2005-12-15 12:09:38 | 塾戦争光の第1章
(4、ゲリラ軍、全道へ)
こんにちは。
今日はこの1コマのみで、ざっと練成会のことを語っていきます。

練成会は、帯広畜産大学の学生だった、奥山英明氏が1977年に、家庭教師先の親の要望に応えるべく帯広で「畜大練成会」を設立したのが、そのはじまりとされています。
1981年には法人組織に改変し、翌年から北見進出を皮切りに、釧路・旭川・札幌・小樽・函館・苫小牧・室蘭・岩見沢の各都市に拠点校舎(本部校舎)を次々に開設し、全道展開を推進します。
そして2003年には個別指導教室である「3.14…」を札幌で開設し、今日に至ります。

また一方で、1988年に帯広市内に全国初の学習参考書専門店「合格堂」を開店、更に2002年には奥山氏の執筆による『いつまでさまようのか!日本の教育』をポプラ社から刊行しています。
進学会よりも更に塾事業に特化している、という印象があります。
また、帯広生まれということで、前述の十勝毎日新聞との結びつきが強いのも特徴のひとつです。

ちなみに、進学会同様に練成会も地域によって塾名が違います。
帯広とその周辺は「畜大練成会」(畜大とは帯広畜産大学の略)
北見と網走とその周辺は「北見練成会」
釧路は「釧路練成会」
旭川は「旭川練成会」
札幌とその近郊都市は「札幌セミナー」
函館とその周辺は「函館練成会」
小樽とその周辺は「小樽練成会」
苫小牧は「苫小牧練成会」
室蘭と登別、伊達は「室蘭練成会」
岩見沢と美唄は「岩見沢練成会」
札幌の個別指導教室は「個別指導3.14…」
となっています。

このように、ほとんどの地区で塾名が「地区名+練成会」である中で、札幌地区の塾名のみ「札幌セミナー」となっています。
これについて補足説明をすると…

札幌地区に練成会グループの拠点を置くべく、「札幌セミナー」が開設されたのは1984年のこと。
しかしその開設は他地区の練成会のようなイチからの立ち上げではなく、市内でもともとあった「札幌セミナー」を買収、という少し意味合いの違ったものでした。
またこの設立経緯に違いがあったため、セミナーは練成会とは別会社とし、社長を奥山義則氏(奥山英明氏の弟)に据え、練成会とセミナーをまとめて「練成会グループ」と呼ぶことにしました(札幌セミナー以外の塾部門は(株)れんせいの傘下になっている)。

それはともかく練成会全体の会社規模を数字で見ると…まず資本金は3500万円です。
グループ総計で従業員数386名。
校舎数は150を超え、生徒数は1万人以上。
2004年3月実績の売り上げは60億3900万円となっています・
進学会の売り上げが82億ですから、練成会が進学会と肩を並べると言って差し支えないでしょう。

では練成会と進学会の違いは何でしょうか。

まずスタートが違います。
進学会は大都市の札幌から北海道全体に商圏を広げました。
先行していたこともあり北海道の塾業界ナンバー1になりやすかったわけです。
練成会は創業が地方都市の帯広です。
北海道全体に商圏を広げるにしても、後発であったこともあり、不利であったわけです。
しかしそれでも商圏が広がったのは、地方都市発であるという、ある種のコンプレックスをエネルギーに変えて動いたということです。
私はそれゆえ、練成会を「ゲリラ」と見立てるのです。

しかし実際は学生アルバイトによる非常勤講師の多用、校舎の多くは非独立校舎…進学会ほどではないにしろ、練成会もまたこの方策を踏襲しました。
ですがやはり、進学会に満足しない小中学生の保護者を中心に「進学会よりはマシではないか」という想いが、または後発ゆえの新鮮な印象が、練成会を北海道で進学会に次ぐ大手の学習塾へと押し上げた決定的な要因となったのです。
ということは、イメージがよかったということでしょうか。

否、それだけでなく、進学会との明確な違いがいくつかあります。
校舎展開において練成会は都市部中心だったのに対し、進学会は富良野や留萌など都市部から遠く離れた地域にも校舎を置きました。
これは都市部から離れているのも関わらずある程度の生徒が見込めるとの計算がはたらいた上での進学会なりの戦略でしたが、練成会はその戦略を選びませんでした(実際に進学会はそういう地域で授業する場合、毎週土曜日に6時間、1週間分の全教科を指導するコースしか設けない。このことにより都市部から遠く離れているという地理的な難しさを克服した。そこに通う生徒には大変だと思うが)。
練成会は進学会と違って都市部に絞って校舎展開をしたのです(そのため北海道全体の校舎数は進学会のほうが多い)。
また、毎年3月の北海道公立高校入試の日は、老舗のHBC(北海道放送)を使ってテレビ解答速報をやる進学会に対抗して、今や北海道ナンバー1の民放となったSTV(札幌テレビ放送)で解答速報を放映しています。
しかし総じて言えば、塾としてのスタイルに大きな違いは見受けられません。
せいぜい「どちらがマシか」程度です。
それはつまり見方を変えれば、塾というものが北海道は少なく、消費者の選択肢が限られていたことにつながりました。

…といったところで、今日はこれまで。
次回はもうちょっと進学会と練成会について語った後、一気に新しい章に入っていきます。

それでは、また。
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