おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

在日米軍のアメリカ人は悪い奴らなのか

2016-05-19 22:36:14 | その他
私の住んでいるうるま市内で起きた事件が最悪の結果を迎えてしまいました。市内の20歳の女性が行方不明、本日遺体で発見。容疑者は米軍関係者(軍属)で嘉手納基地所属の32歳の男。事件現場が近所だったということもあり、とても残念です。悲しいことです。事件の全容解明と被害者のご冥福を祈ります。

今後、基地反対を主張するメディアや反対運動がより大きくなるものと予想されます。

「繰り返される米軍による犯罪」「基地がある限り犯罪はなくならない」「米軍に蹂躙される沖縄」などなど。

ただ、犯罪をするのはアメリカ人だけではなく、日本人も多くの犯罪をしています。残念ながら県内のテレビ局や新聞はどこも揃って「米軍危険、出て行け」の論調で冷静な報道をしてくれない。

ここぞとばかりにマスメディアは事件を騒ぎ立てると思います。でも、許されない犯罪人が米軍から出たことと、米軍関係者による犯罪が多いかどうかは、別の問題として考えなければなりません。果たして在日米軍のアメリカ人は悪い奴らなのか。

犯罪については公的機関から統計が公表されています。感情論ではなく、しっかりとしたソースから考えてみます。

県内の犯罪の統計については警察庁の「平成27年警察白書」から引用。
http://www.npa.go.jp/hakusyo/h27/data.html
統計資料
→[第2章関連]
→2-1 都道府県別刑法犯の認知件数、検挙件数、検挙人員(平成26年)

沖縄県内の米軍構成員による犯罪の統計については沖縄県の「沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)平成27年3月」から引用します。
http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/toukeisiryousyu2703.html
4、演習・訓練及び事件・事故の状況
→2.事件・事故
→(2)米軍構成員等による犯罪検挙状況

両方とも現段階で最新なのは平成26年の1年分の統計です。この1年の統計で比較してみましょう。件数と人数がありますが、この記事のタイトルに合わせて人数で比較します。件数で比較しても結果は大して変わりません。ちなみに、米軍構成員は在沖米軍人・軍属・家族のことを指すようです。今回の容疑者も軍属なのでここに含まれますね。

さて、平成26年の刑法犯の検挙人数は
沖縄県内:3,408人 県内米軍:27人 
そのうち凶悪犯(殺人・強盗・放火・強姦)は
沖縄県内:58人 県内米軍:1人


なんだ、県内マスコミでは米軍が悪いかのように扱われているのに罪を犯しているのはほとんど日本人じゃないか。でも総人口が違うのでこの比較はフェアじゃない。これを、住んでいる総数で割って割合を出してみます。

人口は
沖縄県内:1,427,431人 県内米軍:47,300人(これは平成23年のもの。その後は非公表のため。)なので、ここから1人1年あたりの犯罪率を計算します。

刑法犯を全て合わせると
沖縄県内:0.24% 県内米軍:0.06%
→米軍の刑法犯の犯罪率は県内平均の4分の1

凶悪犯は
沖縄県内:0.004% 県内米軍:0.002%
→米軍の凶悪犯の犯罪率は県内平均の2分の1


というわけで、米軍構成員の方が日本人よりも犯罪を起こしにくいことになります。「日本の敷地内で」という条件付きですが。

これは米軍敷地外の統計で、軍敷地内で起こった事件は含まれていないので単純比較はできません。米軍敷地内のデータはないので、これが統計の解釈の限界。


ただ、1つだけ言えることは、米軍がいるから犯罪が起こるというのは明らかに間違い。米軍だから犯罪を犯すのではない。米軍がいなくなれば犯罪がなくなるのでもない。

もし米軍構成員の犯罪率や凶悪犯が多いという主張をするならその根拠を出典とともに示すべき。米軍人の犯罪が多いように感じるのであれば、それはメディアがたくさん報道するから。実際に、県内で米軍人による事件・事故が発生した場合、県民による事件・事故に比べ、大きく報道されます。

私は職種上、うちなんちゅの酔っぱらいに殴られて負傷した人をよく見るのですが、この時の犯人は報道すらされません。仮に殴ったのが米軍人だったらもちろん報道されるでしょう。米軍人は酔っ払って住居侵入したくらいで報道されるくらいですから。凶悪犯であれば犯人が日本人であろうが米軍人であろうが報道はされますが、報道される期間とその報道に割かれる時間が異なります。米軍人が実際よりも多く悪さしているかのような感覚があるとしたら、それはメディアによる錯覚です。

ちょっとだけメディアを擁護すると、かつて米軍の犯罪が多かった時期があるのは事実です。
以下、1972年から2014年までの米軍人の毎年の犯罪人数をグラフにしたものです。久しぶりにExcel使ってみた。ちなみに以下のグラフですが、県内メディアが取り上げる時は毎回決まってここ10年くらいのみ(右4分の1)のほぼ横ばいの場所を切り取り「米軍による犯罪はいつまでたってもなくならない」といった主張をします。あえて右端だけを切り取るのは全体を取り上げると都合が悪いからで、当然意図的に切り取られています。


目盛りが消えていますが横軸が年。縦軸が人数。
確かに昔は多かった。一番多かった1977年は刑法犯396人、凶悪犯69人と、両方とも今の10倍以上多く、特に凶悪犯の割合が高かった。このころの沖縄の方々は辛く苦しい思いをされたでしょう。主に年配の方が「米軍人はひどい」と考えるのは昔の記憶が鮮明だからだと思います。

昔は犯罪率が高かったかもしれないけれど、今は違う。今の米軍人に対して、昔と同じような目を向けてはいけない。配属されている人も昔とは変わっていて、今の時代に米軍で働いている人が悪いわけではない。

私が心配するのは、今回の容疑者と全く関係ない米軍関係者に怒りや偏見の目が向けられることです。多くのアメリカ人が沖縄に住んでいるし、アメリカ人と結婚しているうちなんちゅ、その夫婦の間に生まれた子供など、多くの人が間接的ではあれ米軍と関わっています。

米軍を批判することは悪いことだとは思いません。日米地位協定も見直しが必要だと思います。
ただ、米軍に関わっている「人」を、犯罪を起こしやすい人かのような目で見ることは、どう考えても偏見でしかありません。

全く悪くない人々に対して、偏見や嫌がらせやイジメが増えたり、肩身の狭い思いをさせることがないよう、強く祈ります。


今後、報道が過熱すると思われるのであえて文章にしてみました。県内2大新聞社も県内3民放地方局も、反安保や基地反対に終始していて、今回の事件もその主張の材料となり肝心の報道内容が偏ることが予想されるので。

今回の犯人は悪い。どこの国の人間だろうが悪い。それに対してはしっかり追及する必要がある。でも、そこからあたかも米軍関係者による犯罪が多いかのような、視聴者を錯覚させる報道の仕方をするのはどうなのか。せっかく複数のマスメディアが同じ地方にあるにも関わらず、残念ながらどのメディアも揃って似たような立場。反論が生まれないメディアは1つの権力です。

なお、この記事に対する異論反論は歓迎いたします。様々な意見があって良いと思っています。


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