
織田に焦点を当てれば、「挫折と再起」「価値観の転換」がテーマの物語。
見どころとなるのは、織田と柴崎との間で飛び散る火花。
それが、和解・融合へと変わっていくストーリー展開は、ま、ありきたりといえば、ありきたりでしょうか。
でも、映画としては、なかなか良いつくりになっています。
つっこみどころは、織田を中心に開発した「祝い膳」が、なぜ売れるようになったのかが、はっきり説明されていなかったこと。
いったん、うち捨てられた「組織論やマニュアル」が、そこでは、いつのまにやら、復活しています。
CS(顧客満足)的観点を融合させたハイブリッド型の手法で、問題を解決したということ?
最後のヤマ場である消防の査察の緊迫感は、心地良いものでした。
「消防の査察」という、映画的には、地味なシチュエーションに、ドキドキ感を抱かせるところは、何とも、コミカルな味わい。
ちなみに、高くそびえるピカピカの県庁は、2000年に竣工した香川県の新庁舎。丹下健三が設計した21階建て。
展望ロビーは、本当に、コーヒー飲めるようになってるんでしょうか?


「ラヂオの時間」「みんなの家」に続く、三谷幸喜監督作品の3作目。(「笑いの大学」は、原作・脚本のみ。)
文句なく面白かったです。
何本もの縦糸が複雑にからまりあった精緻なストーリー展開。
息つくひまもない、テンポの良さ。
テンコ盛りのエピソードで、見終わった後は、お腹いっぱいという感じ。
なにより思うのは、ドタバタ喜劇なのに、決して下品ではないということ。
俳優陣は、豪華絢爛。それぞれに個性が生きていたけれど、
一番、光っていたのは、神出鬼没のコールガール、篠原涼子かな。
出番も多かったし、びっくりするほど、演技が上手かった。
基本的に、彼は性善説に立って人間を描いている。その温かさが、嫌みを感じさせないんでしょうね。
よく考えてみれば、ご都合主義満載でもあるんですが、いつのまにか、それを忘れさせてしまう。
これぞ三谷マジックの世界ですね。


ここ数ヶ月で見た映画の中では、一番の出来でした。
何と言っても、野沢尚のストーリーの構築力に脱帽。
そして監督の手により、その世界が見事に映像化されていたことにも賛辞を送りたいです。
ま、一言で言えば、一家殺人の被害者の娘カコと犯人の娘ミホとの「交流」を描いた作品なんですが、互いの視線の絡み合いがすごい。
ピンと張りつめた二人の間の緊張感。そして「表層」と「深層」に分かれたカコ(内山理名)のセリフにもひきつけられるものがありました。
復讐の連鎖をどこかで断ち切らなければならないとカコが自覚し、前向きに行動するところは、いい意味できわめて「健全」。
ラスト直前のキスシーンは、普通ならドン引きしてしまうところですが、なぜか違和感がありませんでした。
そしてラストシーンでの携帯を手にしての、二人のそれぞれの行動。これが奇しくも同じなんですけれど、どこか、すがすがしさまで感じてしまいました。
これが、二作目だという監督もいい仕事していたと思います。映像に説得力がありました。
あれっ?と疑問が出てくると、それにちゃんと答えてくれるところはなかなかのものです。
一点、最後まで謎だったのは、ミホがいつ、カコを秋葉奏子と知ったのかということ。うーん、もう一度、見たくなってきます。


ヨン様ファンには、たまらないんでしょうね。でも、すべてが中途半端だったような気がします。
設定は、極めて単純。事故を起こした車に乗っていた男女二人には、それぞれ配偶者が……。そして、その配偶者どうしが恋に陥るというお話です。
ここに登場する誰にも、感情移入できないまま、起伏のないストーリーが、これでもかこれでもかと、延々と。変化といえぱ、事故に遭った二人の容態ぐらいかな。あっと驚くような展開がないまま、いきなりのエンド。えっ、これでおしまい??
主人公二人の台詞に、インパクトが欠けているし、映像的な美しさも???細かいことですけど、時間の経過を示すために、しょっちゅう登場するカレンダーは、ちょっと、自分の部屋には、飾りたくないなと思いました。
韓国映画を観る時に、期待するものってあるような気がするんですが、この作品は、それとは違ってました。たぶん、韓国の人たちにとっても、期待はずれだったのではないでしょうか?(ヨン様ファンの皆さん、すみません。ちょっと辛口になってしまいました。)


いまさらですが、「電車男」観てきました。
期待以上でも、以下でもなかったというのが、正直な感想です。どのように映画化されているのかを確認しにいったというところかな。主役の彼は、けっこういい線行っていたと思います。映画としての出来は、けっして悪くありません。ただ、前半、軽快だったのに、後半、テンポがゆるくなって、重たくなってしまったのが、ちょっと残念でした。
映画に限らないけれど、「電車男」って、ある意味、「メッセージ性」が強い作品だと思います。誤解を恐れずに言えば、押しつけがましい。もちろん、それは、電車男や彼を応援し続けたネットの仲間たちからの「押しつけがましさ」ではありません。匿名を前提にしたネット社会での、ある種、独特な仲間意識の存在を、「こりゃ当たる」と目をつけて、外の世界に引きずり出した既存マスメディアの「あざとさ」。それが、おしつけがましさにつながっているような気が……。「電車男」を手がけた出版社や映画会社やテレビ局、今頃、さぞかし笑いが止まらないでしょうね。
去年の今頃、まとめサイトで読んだ時には、そりゃ、私だって感動しました。この映画で、初めて「電車男」に触れた人にとっては、感動モノだと思いますよ。でも、ここまで踊らされるのもなぁと思うのも、正直なところです。(と言いながら、ドラマも欠かさず、毎回見てますが。)


前半は、パニックムービー、後半は、サイコサスペンスとして楽しめました。もちろん、全編にわたっての特殊撮影は、スピルバーグ監督としても、最高レベル。また父親に対する息子の屈折した心情や、家族を思う父親の気持ちなど、この種のSF映画には珍しく、人間ドラマの部分にも、そこそこ厚みがありました。
理屈で考えれば、突っ込みどころは、確かに多いかもしれません。「ハラハラ・ドキドキ」を純粋に楽しむというスタンスで臨まないと、取り残されてしまいます。結末も、あっけないと言えば、あまりに、あっけないのですが、まぁアリではないかと……。「インディペンデンス・デイ」のような、「アメリカ万歳!」がないのには、ほっとしました。
俳優陣の中で、ひときわ輝いていたのは、娘役のダコタ・ファニング。「タクシードライバー」のジョディ・フォスターを思い出しました。彼女の将来性に期待するところ大です。


「踊る大捜査線」のスピンオフ(脇役やサイドストーリーをもとにした)作品。正直、面白かった。映像のスピード感、テンポはなかなかのもの。撮影には、クレーンたくさん使っているようだし、まるでハリウッド映画のような演出でした。あざといと言おうか、造り込みが丁寧です。エンドロールで、カラス調教・○○と名前が出てきた時には、そこまでやるか、と思いました(笑)。
謎解きも、それほど鮮やかというわけではないし、第一、交渉人が、「言葉ゲーム」はしていても、「交渉」は、してないんじゃないのかなぁ。でも、ユースケ・サンタマリアの、あの、のほほんとした独特のキャラが、まっいいか、という気にさせてしまいます。
(ここからは、ネタバレ注意)
地下鉄の新型車両暴走の話から、ホール爆破の話への展開が、強引といえば強引?よくわからなかったのは、爆弾処理班が処理していたのは、爆弾ではなく、起爆装置?爆弾は、カエル急便の中?どうして新型車両クモから爆破の信号を送らなければならないのか?まぁ、わからないこともいろいろあるけれど、エンターテーメントとして退屈せず、楽しめたので、満足です。


封印された過去を引きずるインテリアデザイナー(パク・シニャン)と、霊視能力を持つヒロイン(チョン・ジヒョン)との、哀しくも、はかない出会いと別れの物語。ホラーのようでいて、全くのホラーではありません。その点は、「箪笥」と同じ。
特典映像のメイキングなどを観てみると、監督のこだわりはよく見えてきます。「このシーンでは、こんな工夫をして、こんなことを伝えたかった。」それは、とてもよくわかります。確かに、一つ一つのシーンは、きれいにできあがっていて、「完成度」は高いんですが、それが全体の中で、どういう意味を持つのかが、いまひとつわからない。そんな場面がけっこうありました。(そもそも、なぜ四人の食卓なのだろう?)
謎解きの物語は、ジグソーパズルの最後のワンピースが、ピッタリ収まるからこそ爽快感、満足感を得られるのに、結局、5つも6つも、はまらないピースが出てきてしまった感じ。観終えても、パズルは、とうとう解けないまま、欲求不満が残ってしまいました。主演二人の演技を堪能したいのであれば、お勧め。


先週末、汐留の劇場に出かけました。まぁ、舞台は舞台で、映画は映画で、それぞれに良いところがありますよね。
当然のことですが、限られた空間を最大限活かすために、様々な工夫が凝らされていました。地下のボートは、いつの間にか、ソファに化けているし、石段をシーソのように動かすことで、移動感を出しているし。ファントムが消えるところは、まるで引田天功のイリュージョンのよう。ただ、映画では、見所となっていたファントムとラウルの格闘シーンがないのは、ちょっと寂しい気が……。まぁ、舞台は、ある意味、様式美を楽しむということでもあるわけですが。
出演者(ファントム・高井治 ラウル・佐野正幸 クリスティーヌ・佐渡寧子)の歌は、素晴らしいの一言に尽きます。さすがプロ。オーケストラの生演奏含め、このライブ感は、映画では絶対無理だと思いました。
映画では、あんなにフラフラしていたクリスティーヌが、舞台版では、割としっかりしているように見えたのは、不思議。やっぱり、エミーの口半開きの印象が強すぎたんでしょうか?俳優の表情など、細かなところまで描写できるのは、映画の有利なところなんですが……。
人それぞれだと思いますが、私としては、どちらかというと映画の方が受け入れ易かった気がします。

去年のカンヌ映画祭で、グランプリに輝いた韓国映画。審査委員長のタランティーノ監督が、絶賛したとのこと。 (ここからは、ネタバレ注意)ひとことで言えば、「二重構造を持った復讐譚」です。主人公であるオ・デスが、15年間監禁されたことに対する復讐を遂げようと行動を起こしますが、実は、彼が動けば動くほど、それが逆に、オ・デスに対する復讐となってしまうのです。その奇抜な物語の構造には、感服しました。 「なぜ15年間、監禁されたのかではなく、なぜ、今、解放されたのか?」これが、まさにキーワード。 鬼気迫るオ・デス役、チェ・ミンシクの熱演。斬新な映像のセンス。緻密に構築されたサスペンスとして、かなりのレベルに達した作品です。でも、絶賛する気にはちょっとなれないなぁ。何か、後味が悪いというか……。いえ、これは、単に趣味の問題ですが。

DVDで観ました。とても面白かった。映像のテンポ、ストーリー展開のテンポが心地良かったし、ロサンゼルスの夜景も、きれいでした。
派手なカーチェイスがあって、ピストル、バンバン撃って、人がバタバタ死ぬ、単なる「アクション映画」かと思ったら、ちょっと違います。登場人物の心理描写が秀逸。タクシー運転手のマックス(ジェイミー・フォックス)の、トホホ感と、腕利きの殺し屋ヴィンセント(トム・クルーズ)の虚無感。そして主役二人の間に生じた微妙な心理の綾が、見事に描かれていました。
(ここからは、ネタバレ注意)
理不尽なことに巻き込まれた、気の毒なマックス。(ちなみにコラテラルとは、「巻き添え」という意味だそうです)一見、凡庸にも見える彼が、徐々に成長を遂げ、最後には勇気を振り絞って、女性検事アニーを救おうとする姿に、共感を覚え、魅了されました。
これまで恐らく完璧に仕事をこなしてきたヴィンセント(トム・クルーズ)ですが、今回は、マックスとの出会いによって次々と誤算が生まれ、最後には死を迎えます。そこで彼は、自らの死を、「これでいいんだ」と素直に肯定します。彼は、自分の哲学に生き、そして死んだのです。
たった一晩のうちに起きた出来事を追っていますが、「人間」がきちんと描かれている奥の深い作品だと思いました。


ものすごく面白いかと言われると、微妙ですが、けっこう楽しめます。どうしても、オリジナルとの比較にとらわれてしまいがちですが……。
意外と、オリジナルに忠実なのには、驚きました。
キャストの中で、オリジナルの雰囲気が最も生きていたのは、渡辺えり子役の女優。彼女そのままと言ってもいいぐらい。たま子先生役も、オリジナルとよく似ていました。
一方、ヒロインに、ラテン系のジェニファー・ロペスを持ってきたところは、色白の草刈民代とは、対照的。
アメリカと日本では、社会的な背景や感覚が違うので、エピソードなど、もっといろいろアレンジしているのだろうと思っていたのですが、リメイクだと感じさせないぐらい、ディテールが自然に描かれていました。(ただ「社交ダンス」に対する日本人の「気恥ずかしさ」が、アメリカ人にも、通じるのかどうかについては、?ですが……)
ラストが「夫婦愛」になっているところは、実にアメリカ的。ここは、違っていて当然かな。「映画」としては、ハートウォーミングな良作です。


子供たちのオーディションから、カンヌでの授賞式までを収めたメーキングDVDです。
やはり、撮影方法は、「映画」としては、かなり特殊ですねぇ。
監督は、子供達に台本を渡さず、台詞は、キーワードだけを決めて、本人の言いやすい言葉で話させるようにしたということです。状況設定にしても、紙で渡すことはせず、口で。
母親役のYOUにも、決まっている台詞だけを伝え、会話の流れは、本人に任せたということです。
あのリアリティを出すために、とんでもない手間をかけていたんですねえ。
クランクインが2002年の10/26、クランクアップが、翌年の8/7だから、秋から夏へと1年がかりでの撮影。その自然な時の経過も、作品にリアリティを与えていました。
クランクアップの時、柳楽クンが泣いていたのが印象的。その彼を監督が抱きしめる光景も。


花火つながりというわけではないけれど、たまたまレンタルで見つけたので。前々から観たいと思っていた岩井監督の作品。45分とは思ってなかったので、あっという間に終わってしまいました。エンドロール見たら、助監督に、なんと、「セカチュー」や「北の零年」の行定さんが入っているのには、ちょっとびっくり。まぁ、時代は移りゆくものなのだと……。もう12年前の作品になるんですねぇ。
あまりにも短すぎて、「心象風景のデッサン」という感じ。片田舎の小学校、セミしぐれ、プール、花火、小学校最後の夏休み。ノスタルジックな道具立ては、一応ちゃんと、そろってますね。
奥菜恵が初々しい。子役も、かなり達者。こういう作品を地道に作って、今の岩井監督があるのだなぁと感じる一品でした。


ファンタジックで、なおかつナチュラル。天国と地上が交互に登場して、ストーリーが並行して進んでいきますが、作り込みが丁寧なせいか、ややっこしさは、ありません。「天国」の不思議な世界観には、まぁ微妙なものがありますが、美術さんは、かなり苦労したんでしょうね。
竹内結子の演技が光っていました。「黄泉がえり」と比べてみると、明らかにパワーアップしていますね。(「いまあい」も見事でしたが。)自然な演技ということでは、今や、彼女の右に出る若手女優はいないような気がします。俳優陣では、香川照之が、屈折した心情をよく表してたし、何より「天国の本屋」の店主、原田芳雄の存在感が、際だっていました。
ロケ地は、小樽や江別、稚内など。特に、北海道を強く意識した作品というわけではありませんが、緑や空がとても、きれいで、そこに広がる風景を眺めているだけでも、心が洗われます。余韻が残る、ハートウォーミングな作品でした。
