オバサンは熱しやすく涙もろい

とてつもなくミーハー。夢見るのはお気楽生活

「ぼくを葬(おく)る」

2006-05-03 00:02:05 | 映画・DVD【は】
今日はうちでトラブルがあったため会社をお休み。
昼過ぎから体があいたので映画を観に行くことにしました。
前売りをもっている「アンダーワールド:エボリューション」を観ようと思っていたのに、スバル座に行くつもりが間違ってスカラ座に行ってしまい結局間に合いませんでした~~(涙)。
で、時間の都合上、「ぼくを葬る」を観ることに。

1800円払って映画を観たのは久々でしたが、 これはそれだけだしても惜しくない映画でした。



パリ在住のロマンは売れっ子のフォトグラファー。
刺激に満ちた仕事が次々と舞い込み充実した日々を送っていた。
そんな彼がある日、撮影の途中でめまいに襲われ倒れてしまう。
検査の結果、医師に「不治の病で余命3ヶ月」と宣告され、ロマンは絶望の淵に立たされる。
医師は「まだ若いのだから化学療法を試してみるべきだ」とすすめるが、ロマンはそれを拒む。そして同棲している恋人に一方的に別れを告げる。
両親や姉には病気のことを告げようとしても告げられず、やけになって姉にひどい言葉を投げつけ傷つけてしまうロマン。
自分一人の胸におさめておくのが苦しくなったロマンは、唯一の理解者である祖母にだけ病気のことを告げる。祖母は「今夜あなたと死にたい」といい優しくロマンを抱き寄せるのだった。
残された時間はあとわずか…。自分にできることはなんだろう?
ロマンは自らの死とまっすぐ向かい合い、未来に何を残そうとしたのか?


静かなドラマでした。
無駄なセリフもなく、主人公が泣き叫んだりわめいたりすることもなく、ただ淡々と時を刻んでいくような映画でした。
それだけにかえって主人公の悲しみや怒りや絶望がこちらに伝わってきました。

初めは自分におこった悲劇に、どうしていいのかわからなかったロマンが、さまざまな人と接しているうちに自分が何をするべきかを悟ってゆきます。
一方的に別れた恋人に真実を打ち明け、いつも衝突していた姉と和解し、偶然知り合った女性の「代理父になってくれ」という申し出を受け入れます。
そして彼は一人で死とまっすぐ向かい合い、死への準備を少しずつすすめていくのです。

公園で子供をあやす姉に電話をして「今忙しいんであえないんだ」と言いながらも、本当は公園のすみからそっと姉を見ていたロマン。
そして彼らの姿を心に刻むようにカメラをむけ、シャッターを切るロマン…。
この場面には涙がとまりませんでした。

最後にロマンは一人浜辺に向かいます。
周りは幸せそうなカップルや家族づればかり。
それを観ていたロマンの脳裏に子供の頃の幸せだった場面がフラッシュバックしていきます。

やがて彼は一人、優しく微笑みながら目を閉じます。

横たわるロマンの横顔のむこうで静かに太陽が沈んでいきます。
その場面はまるで絵画のように美しく、彼の自然への回帰を優しく受け止めているようでもありました。
彼は、今までの自分自身を受け入れ、そして許し、心安らかな死を迎え入れることができたのでしょう。
切ないけれど涙を流しながらも、何故だか「ロマン、よかったね」と思ってしまったのでした。



さて…この主人公を演じたメルヴィル・プポー、かなりかっこいいです。美しいです(ハイ。また病気が始まったdimです…)!!



彼は初めの頃、監督に「筋肉をつけるように」いわれたのに、最後の方では「10キロくらいおとさねば」ならなかったそうです。撮影現場でほとんど食べることを許されず、ロマンに近い孤独感を味わうことになったとか。
そんな悲惨(?)な状況が生かされたのか、この映画のメルヴィル・プポーの演技は本当に素晴らしいのです。
コメント (12)
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