オバサンは熱しやすく涙もろい

とてつもなくミーハー。夢見るのはお気楽生活

「クラッシュ」

2006-02-16 10:54:54 | 映画・DVD【か】
クリスマス間近のロサンゼルス。
この都会で起こるひとつの出来事から思いもよらない“衝突”の連鎖反応が生み出され、様々な人々の運命を狂わせていく。
刑事、自動車強盗、地方検事とその妻、TVディレクター、鍵屋とその娘、雑貨屋の主人…。
人種も職業も異なる彼らは、予想もしない角度で交差しながら、愛を交わし、憎しみをぶつけ合い、哀しみの淵に立たされる。
(プログラムより)

      

この脚本は、ポール・ハギス監督の個人的な経験、恐れ、観察がもとになっています。
ハギス監督は過去にロスのビデオ店から出てきたところで銃を突きつけられ、カージャックされたことがあり、被害にあった後、家に戻ってから家の鍵をすべて交換し、犯人たちについて深く考えたそうです。
そして数年後、彼らの視点から脚本を書いてこの作品ができあがった訳です。

彼は「不寛容さと思いやり、そして人が選択したことと、そのことによって支払うべき代償」について描きたかったと言っています。

最初に言っちゃいますが実にいい映画でした。見終った後、じわじわと感動が沸き上がり、不思議な温かさに包まれました。

この物語では登場人物に人種差別という問題が何らかの形で影響を及ぼしていますが、基本的には誰にでも日常的におこりうることが描かれています。
だからこそ、彼らがぶつかり合って生じた憎しみや愛、哀しみや怒りといった感情が共感できるのだと思います。

また「人は単純に悪と善、白と黒にハッキリと分けることが出来ない」ということを認識させてくれます。
たとえば人種差別主義者のライアン巡査は、パトロール中に、黒いリンカーン・ナヴィゲーターに乗っていた黒人夫婦を車からおろし、妻の下半身に手はわせ、屈辱的な思いをさせます。
しかし最後には交通事故に巻き込まれたその黒人女性を命がけで救出します。
また父親思いの優しい一面も持ちあわせており、病に苦しむ父親をなんとか助けようと奔走します。
ハギス監督が描こうとした「不寛容さと思いやり」がライアンの中に混在しているのですね。
ライアンは私たちでもあるんですよね。
私は「絶対に善人にはなれない~」と常々思っていたのでなんだか少しホッとしました(笑)。

しかし、黒人女性に卑劣な行為をしたライアンを嫌悪したハンセン巡査が、差別をせず正しくあろうとしながらも、誤って黒人の青年を射殺してしまうのはなんとも皮肉でした。

一番「ぐっ」ときて泣いてしまったのは雑貨屋のファサドが鍵屋のダニエルに銃口をむけた時です。
ダニエルの娘が父親を助けようと父親にしがみつく場面ですね。
父と娘の愛情の深さに涙が暫くとまりませんでした。
そしてその愛情によってファサドはのちに救われることになります。

みんながみんな幸せになるエンディングではありませんでした。
良くも悪くもそれぞれの登場人物が先に進むように、優しく背中を押したような終り方とでもいいましょうかね。
見えないけれども物語が今も何処かで続いているような気がします。
コメント (10)
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