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野球のビデオ判定にデジタルビデオは使えない

2009-10-12 10:46:35 | Weblog
スポーツのきわどいプレーが発生する都度、ビデオ判定の可否が話題になる。
何十年も前から導入されている大相撲は別格として、
近年ではアメリカンフットボール(NFL)でも導入(タイムアウト権利と引換)されている。
もちろん、陸上(競争)や競馬での写真判定は周知のことである。

ただし、写真判定とビデオ判定ではその精度において大きく異なる点がある。
それは、写真は瞬間を写すものであるが、動画は流れを再現するものだからである。

具体的には、昨日(2009.10.11)のヤクルトvs中日戦である。
この試合、ヤクルトのデントナが、中日ピッチャー山井から放った3塁ポール際の打球が、
ホームランかファウルかをめぐって繰り広げられた問題である。

テレビ中継では、3台のTVカメラそれぞれの映像がスロー・コマ送りで再生されていた。
TVカメラの位置は、センター、ネット裏、1塁側の3台である。
ところが、3台全て、ポール(柱)よりも手前にボール(球)が消えずに見えているのである。
センター側カメラからボール(球)がポール(柱)に隠れない(消えていない)ならホームランであるし、
ネット裏や1塁側からボール(球)がポール(柱)に隠れないならファウルである。
つまり、矛盾した画像になっているのである。


この打球がホームランであったかファウルであったかはさておき、問題は「ビデオ判定の信頼性」である。
球場のセンタースクリーンにビデオ映像が再生されたようであるが、
この時の映像はネット裏からの映像1つだけだったもようである。
審判団はビデオ判定を採用していないのでホームランと判定したが、
仮にこの再生画像を元に判定すればファウルであったと思われる。

ところが、前記の通り、3台どのカメラからの映像も、ボールが消えていないのである。
スクリーンに再生されたのはネット裏カメラの画像であるが、
仮にセンターカメラからの画像が再生されていればホームランとなったと思われる。


3台のカメラの画像が矛盾するものとなっているのは理由がある。
デジタル撮影された動画は、機械内部で「再作成」された画像だからである。
大きく動く被写体(ボール)と、あまり動かない被写体(背景)を分離して記録し、
再生時に前後の画像から推定補間しつつ映像にして見せるのがデジタル動画だからである。
前後のコマでボールが見えている映像から、間の1枚だけボールが消えている映像を再現させることは困難である。

要は、今の普通に中継するTVカメラの動画では、ホームランかファウルかのビデオ判定は正確性に欠くということである。


今回は、ビデオ判定の正確性、性能上の限界を提起したという意味で、
17分の中断も、落合監督の退場も、無駄ではなかったということであろう。


これは、特有の画像処理を行うデジタル動画ゆえの問題であり、デジタルカメラであれば問題ないようにも思える。
ただし、デジタルカメラであっても、画素補間処理のアルゴリズムによっては、
例えばポールによって一部が消えたボールがそっくり再現されるという懸念も絶対ないとは言えない気がする。
そもそもデジタルカメラの連写性能では、ボールがポールを通過する一瞬を写すことは困難であろう。

それにしても山井は、例の日本シリーズのことといい、かわいそうな役回りである。
ガンバレ山井!