pride and vainglory -澪標のpostmortem(ブリッジ用語です)-

初歩の文書分析と論理学モドキ(メモ)

アポカリプス 第七章 天使城⓴

2021-08-01 06:14:24 | ψευδεπιγραφία
 煙幕がまた薄れ、立体映像が消える。
 「そう私はヴィーダのクローンと言うわけだね。そしてあなたは僕をあなたの計画の切り札として使おうとしている。
 しかし覚醒した私にどうしてこれだけの情報を与えたのかな。私がオリジナルのヴィーダと同じ結論に達し、君に協力するのを拒否するリスクは考えなかったのかな。」
 アスタロテは肩をすくめるようにして答えた。
 「勿論その危険性は十分考えた上での事です。しかしあなたの覚醒をもっと進めなければ計画そのものが成り立ちません。そして覚醒を進める為にはあなたの同意が必要なのです。
 正直に手の内を話しましょう。以前にこれ以上の覚醒なしであなたを地上に降ろそうとした事がありましたが、まったくうまく行きませんでした。そして今一人あなたと同じ状態まで持って行きながら拒否されてしまった事も有りました。その方々の運命についてはお話するまでも無いでしょう。
 時は煮詰まって来ております。でも私にはまだ時間がございます。もしあなたが拒否なされたらまたやり直すだけの事です」

 「私はオリジナルのヴィーダとは違う。しかしヴィーダの最後の言葉を受けよう。やりたいようにおやり。少なくとも私はあなたの計画に賭けてみよう。」
 アスタロテはヴィーダと同じような悲しい目をして微笑んだ。
 「ではこれから、あなたの覚醒の進行を進める前に私の計画をお話する事としましょう。一端覚醒が進めばあなたの能力は私を遥かに超えるはずです。
 あなたの能力はソフィアやアスラを超える事となるでしょう。あなたを超える能力の持ち主はオリジナルのヴィーダだけとなるはずです。
 そうなれば計画はあなたの物。私は狂言回しに過ぎなくなります。あなたがどのように計画を変更なさろうとも私はそれに従います。それがヴィーダと別れる時からの私の覚悟です。」
 「でも、君がシナリオライターであることには変わりあるまい。ところでオリジナルのヴィーダは君が葬ったのではないかね。」
 アスタロテは夢見るような表情で答えた。
 「ヴィーダは話してくれませんでしたが、トロネイの隠者が話してくれた事があります。かつてヴィーダに私はヴィーダよりソフィアやアスラに似ていると言われたその意味は何かと言う疑問についてです。
 トロネイの隠者はこう答えました。ソフィアやアスラは不老不死だがヴィーダは遍在するものだと。
 私の理解が正しければ、ヴィーダを殺す事は不可能なのでしょう。あの時ヴィーダを撃ったのもヴィーダの命を取ろうと言うよりも、ふらつきがちな私の意志を後戻りできない形で固めようとするものだったのだと思います。
 しかし蘇ったヴィーダがこの一件に関与するかどうかは分かりません。あの最後の時私を抱き寄せたヴィーダはこう囁きました。
 やりたいようにおやりアスタロテ。君が考えている事は十分分かっている。ぼくがもう一度古き大地に降り立つか否かは君の計画にではなく、ソフィアやアスラの反応を含めて古き世界で事態がどのように進展するかにかかっている。

 これがあのお方の最後の言葉でした。私にはどのような進展でも引き受ける用意があります。」

 幸紀は微笑みながらアストロテに答えた。
 「いつか私は私に出会うのだろうか。それとも私がいつの間にか私以上の私になってしまうのだろうか。いずれにせよ君に賭ける事にしたのだ。事を進めるしかあるまい。では君の計画を話しておくれ。」
 天蓋がスクリーンへと変わり、アスタロテによる計画のプレゼンテーションが映し出され始めた。
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