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加計問題に匂う許認可利権、アベノミクスは国家社会主義か

2017-06-20 00:19:02 | 日記
【第137回】 2017年6月8日 山田厚史 :デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員

ビールや発泡酒が6月1日から値上げになった。「スーパードライ」は350cc缶で15円ほど上がった。酒税法が改正され「安売り」が禁止されたから、という。自由競争であるはずの「モノの値段」を政府が規制する。日本は市場経済ではなかったか。

 安倍首相の旗振りで「生産性向上国民運動推進協議会」が5月24日、官邸で開かれた。全国から300社が動員された。冒頭の挨拶で首相はこう意気込んだ。

「生産性向上を全政府的な動きにしたい。私が先頭に立つ」

 日本経済の課題が生産性向上というのはわかるが、首相が先頭に立って国民運動を展開するというのは、大きなお世話だ。

 東芝の半導体子会社を売却にも政府は介入する。台湾企業はよろしくない、政府は大手企業に「奉加帳」を回して受け皿にしようと動く。

 日本は、規制緩和を叫ぶ「小さい政府」と思ったが、いつの間にか「大きい政府」になっていた。

 アベノミクスの変転から、「加計学園疑惑」を眺めると、今の政権の本質が読み解ける。

自治体の声を活かした小泉政権の特区
安倍政権は中央主導の「上が決める特区」

「分厚い既得権益の岩盤に、穴を開けるドリルが国家戦略特区」

 安倍首相は国会で何度も「既得権益に風穴を」と繰り返した。

 この考えは小泉純一郎首相のころから政府の基本的な方針となった。既得権益支配する古い経済が日本の成長を阻んでいる。抵抗勢力を打破するのは規制緩和だ。経済活動を自由にする。新しいビジネスが生まれ、日本の生産性を向上する。突破口が「特区」だった。

 日本の法律で認められていない制度や事業を、地域を限定して特定の業者に認める。うまくいけば全国に拡大しようという目論見だ。「制度に風穴を空ける」試みだった。

 2002年末、小泉内閣は「構造改革特区」を制定、第1号は群馬県太田市の「外国語教育特区」だった。自動車産業で働く大勢の外国人労働者の子どもたちが公立学校で母国語を習えるようにした。こうした特例は、酒税法の適用除外を認めた「どぶろく特区」や「ワイン特区」などユニークな取り組みにつながり、地域起こしにひと役買うこともあった。

 構造改革特区は、地域の特性に合わせ自治体が例外を求める「ボトムアップ型」だった。安倍政権になって始まった国家戦略特区は、これとは真逆、中央主導の「トップダウン型」である。

 分かりやすい例が外国人による家事代行サービス。アジアから「家政婦さん」になる女性を集め、共働き家庭などに派遣する。大阪市、神奈川県、東京都が特区となり、人材派遣業のパソナなど6業者が指定業者として認可された。

 外国人材の受け入れは、日本ではビジネスエリートや技術や資格を持つ特別な人材に限定される。いわゆる「肉体労働」にはビザは発給されてこなかった。

 政府は「働く女性支援」として家事労働を支える人材が必要と判断。東京・神奈川・大阪を指定したのは、稼ぎのいい女性が働き手として多数いるので、ニーズがあるから。

 国家戦略特区は、文字通り国家戦略として政府が事業を吟味し、地域に割り振る。「上が決める特区」である。

 家事代行サービスは「能力・技術・資格のある人材」に限って認めていた労働ビザを、家事労働にも門戸を広げた。認可された人材派遣会社は「外国から肉体労働者を連れてくることができる資格」を手にした。

特区は政治家・業者癒着の温床にも
加計学園の認可はフェアだったか

 特区のビジネスは、「規制緩和」ではあるが、誰もが参入できる「自由化」ではない。参入業者は政府が決める。特定の業者に「特権」を認める制度なのだ。

 実質的に許認可の権限を握る政治家と、資格が欲しい業者が「お代官様と越後屋の関係」にならない、と誰が言えるだろうか。

 さて、加計学園の疑惑である。今年3月、内閣府は愛媛県今治市の特区に加計学園が経営する岡山理科大学に獣医学部新設を認可した。先発の獣医養成機関によって新規参入が閉ざされていた学部新設に、52年ぶりに風穴が空いた、というストーリーだ。新設に慎重だった文部科学省は、既得権益を守る側の「抵抗勢力」と描かれた。

 その側面は皆無とは思えないが、現実はどうか。獣学部の新設をめぐる動きはこれまでもあった。2015年6月には「獣医学部新設4条件」が閣議で決まった。

 1. 現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、
 2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、
 3. 既存の大学・学部では対応困難な場合には、
 4. 近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

 要するに、最新の医学技術に挑戦する必要が生じ、既存の大学・学部で対応ができない場合は、獣医師の需給動向を見ながら対応する、ということだ。かなり高いハードルで、当時の担当大臣の名をとって「石破4条件」とされた。

 獣医学部の新設は、加計学園だけでなく、京都産業大学、大阪市立大学からも申請が出ていた。

 農水省は「獣医は概ね足りている」、厚労省は「技術革新へ特段の対応が迫られている状況とはいえない」という対応だった。

 文部科学省は「4条件を踏まえ、獣医学部を新設する必要性は認められない」と主張していた。

“政治主導”で大逆転
既得権益がまた一つ増えただけ?

それがひっくり返ったのは、「総理のご意向」とされる。文科省の前川前事務次官は「2016年9月と10月首相官邸に呼ばれ、和泉洋彦首相補佐官から『総理の口から言えないから私が代わって言うが』と獣医学部の新設を認めるよう言われた」と述べている。

 一連の傍証は大手メディアで詳しく報じられているのでここでは省くが、首相周辺の「政治主導」で獣医学部の新設が決まり、加計学園に認可が下った、という流れは疑いようがない。

 これが「規制緩和」なのだろうか。規制緩和とは、政府が民間に対して口出しや指導を極力行わないことだ。企業の創意を引き出し、対等・平等の市場で思い切り競争させることではないのか。

 安倍政権が、加計学園にしたことは、政治力を使って「お友達企業」を既得権益勢力の一端に押し込んでやった、ということではないか。

 大学の定員管理を文部科学省が握っている今の制度は妥当か、ということに議論はあるだろう。役人が大きな権限を握っていることが正しいか、という問題もあろう。では、定員など決めずに私立大学は自己責任で学部の新設や増員をすればいい。教育機関も市場原理に委ねればいい、という考えが国民に支持されている、とも思えない。

 学部の乱立、教員の不足、知的水準の維持できない教育環境などの弊害が生じる恐れがある。学部を新設するには、大学としてふさわしい基準を満たし、それをチェックするのは文科省の責任でもある。

 仮に獣医学部が必要だとしても、認可されたのが加計学園でよかったのか。選考は公正に行われたのか。示された「内部文書」を見る限り、疑問符をぬぐうことはできない。

中国で大成功した特区制度
半面で深刻な政治腐敗の温床に

 ある業者だけ「特別扱い」にする「特区」は、行政による「許認可」とワンセットになっている。国家戦略という仰々しい言葉がかぶさり、政治主導が叫ばれると、許認可の差配には政治家が絡みやすい。

 分かりやすい例をもう一つ上げよう。カジノである。

 賭博は法律で禁止されている。カジノができる地域を特別な法律を作って、そこだけは刑法の賭博罪が適法されなくする。つまり特区だ。そこで特定業者だけに免許を与えカジノを経営させる。過当競争を抑えるため業者の数や地域は制限し、儲かる仕組みを作ってあげる。それが「カジノ解禁法」である。

 カジノ業者は、自治体が決めることになっているが、実際はカジノ解禁に突破口を開いた政治家が仕切る、と言われる。それが政治主導だが、カジノ議員と業者の癒着は大丈夫だろうか。

 加計学園と首相の関係も同じだろう。中国で問題になってる「政治腐敗」も同じ構造なのだ。

 特区という制度は、途上国で成功した制度だ。国内に成熟した法秩序がなく、外資企業を誘致するために「特区」を作って優遇した。際立った成功例が中国だった。深センなどに外資を誘致して国内資本との合弁を条件に事業を認可した。鄧小平が特区の旗を振り、「社会主義市場経済」だと言った。

 社会主義は国家が経済を管理する。市場経済とは相容れない概念だ。鄧小平は、能力に恵まれた者は自由に金儲けしていい、と市場経済を支持しつつ、国家・共産党が、業者を決めることで「社会主義」を堅持した。許認可である。

 党が認可した業者だけ市場経済に参加できる。

 この「許認可権」が腐敗の温床となった。中国市場でビジネスをしたければ、役人から認可を得なければならない。許認可をカネで買ってでもビジネスをしたい。賄賂の横行は自然の成り行きだ。

特区は許認可権限復活の足場
市場に介入する政治主導に透明性はあるか

 1990年代の日本での銀行・証券を巡る汚職の構造が問題になった。大蔵省や日銀が握る許認可がスキャンダルの根元にあった。

 特区は、許認可の塊である。鄧小平が深センで始めたようなことを安倍首相は国家戦略特区で行っている。知恵を付けたのは安倍政権を支えている経産官僚である。かつては産業育成や業界再編で、許認可の味を知っていた役所である。自由化・国際化・規制緩和という流れで、許認可権限は原子力など限られた業界だけになってしまった。特区は、権限復活の足場である。

 国家戦略特区諮問委員会は、「岩盤規制」として槍玉に挙げているのが教育・農業・医療・労働の4分野だ。市場経済を導入すれば効率化する、と単純に言えない分野である。だから、行政の関与が必要だった。この4分野の権限を握るのが文科省、農水省、厚生労働省である。これらの役所に問題がないとは言わないが、守旧派に見立てて権限を剥奪すれば成長戦略になる、というほど簡単な話ではない。

 特区を管理するのは総理府だ。旧経済企画庁や行政管理庁が母体の寄り合い所帯の役所だが、特区を差配するのは経済産業省から出向した役人。首相官邸の要請だ、と言って文科省の担当者に圧力を掛けたとされる、藤原審議官の経産官僚である。

 経済は市場に任せよ、という構造改革から、市場に介入する政治主導に経済政策の流れが変わってきた。特区もその一環だろう。「大きい政府」は決して悪ではない。問題は、行政の介入が「公正」であるかが問われる。

 公正を担保するには「情報公開」「政策過程の透明性」だ。しかし、加計も森友も、透明性は限りなくゼロである。

(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
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なぜ財務省は森友学園に通常あり得ない厚遇をしたのか (Unknown)
2017-06-20 00:28:27
【第130回】 2017年3月17日 山田厚史 :デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員

「虚偽答弁」で防衛相は辞任の瀬戸際。広告塔を務めた首相夫人は深手を負った。二人とも籠池泰典・森友学園理事長との交友がアダとなった。安倍晋三首相に馴染み深い「右派人脈」が、盤石と見られた長期政権を揺さぶっている。そしてもう一つ、森友学園によって自滅する権威がある。財務省。そもそも事件の発端は、国有財産だった。

 世間の怒りに火をつけた「タダ同然の払い下げ」を決めたのは財務官僚である。過去にも例がない奇妙な取引が実現した謎は、まだ解けていない。背後に垣間見えるのが消費増税を巡る官邸・自民党との関係だ。
タダ同然の払い下げ実現に
財務省で働いた「特別の力学」

 9億5600万円と不動産鑑定士が評価した土地を、埋まっているゴミの処理費用と称して8億2200万円値引きして1憶3400万円で払い下げた。

 既に払ったゴミ処理代1億3200万円を差し引くと、森友学園は200万円で大阪の豊中市に8770平米の土地を取得した。さらに学園には国土交通省から補助金として6000万円が出た。木造体育館への助成だという。破格の優遇である。普通の学校関係者は、こんなにちやほやしてもらえない。

「特別の力学が働いたと思わざるを得ない」

 作新学院理事長でもある船田元衆議院議員はブログにそう書いた。国有地の払い下げを受け新設校を開校した自らの経験と比べ、森友学園の場合は、迅速に格安な払い下げが決まった。「安倍総理大臣や昭恵夫人との関連は、自ら明らかにされること」とやんわり首相の説明不足を突いている。

 安倍首相も稲田防衛相も「土地売買には一切関与していない」と繰り返している。

 関与とはどういうことを指すのか。財務省に電話して「籠池理事長の話を聞いてやってくれ」とでも言うことなのか。それとも「国有地を安く払い下げてやれ」と具体的に指示することか。それほど品格を欠く介入を総理大臣が直接やるとは思えない。

 財務省の役人に聞くと、首相官邸からの「要請」は珍しくない、という。高官から直接に連絡があったり、出向している財務省出身者を介しての紹介や問い合わせが来るという。

 国会議員は日常活動の一環として役所への「口利き」をしている。有権者の事情を直接行政に取り次ぐのは政治家の仕事の一部とされてきた。

「役人に、大きな声で要求をするのは、まだ力のない若手のやりかた」ともいわれている。ベテランになれば、「よろしく」「頼むよ」という穏やかな言葉に、断り切れない威圧を込める。さらに上を行くと、言葉はいらない。サインを読み取れない官僚は「×」である。

 財務省には天下の秀才が集まっている。仕事を早く、正確にこなす能力では優劣つけにくい。問われるのはセンスだ。

「ヤレと指示されて、できなければバツ。そんな役人はウチにはいない」。バブルのころよく聞かされた言葉だ。

「指示された仕事ができたからといって『○』にはならない。場合によっては、状況を読み、いま必要なことを判断して成果を示せるのが、できる役人」というのだ。

 銀行など民間ではこう言われてきた。

「調査役は課長になったつもりで。課長は部長の立場で考え、部長は役員の眼で…」

 指示待ちはダメ、自分から案件を探し、リスクを取って成果を上げてこそ出世の道が開ける、という木下藤吉郎なみの「気働き」が説かれてきた。

 過労死が問題になる民間では、もうそんな元気はなくなっているかもしれない。

 しかし、政府中枢で局長・次官を目指すなら「気働き」「先読み」のセンスは必須だ。
財務省は政治家らに「番記者」
ならぬ「番官僚」をつける
Unknown (Unknown)
2017-06-20 00:29:05
「財務省には『番官僚』がいますよ」

 教えてくれたのは閣僚経験のある学者だ。六本木の事務所で会った時、傍らに財務官僚がいた。その人が帰った後、「彼は私を担当する連絡係です。政治家でもない私にまで担当者をつけ、情報を届けてくれる。さすが財務省です」。

 構造改革の旗を振るこの学者は、財務省には目障りな存在だが、「御用聞き」を張り付けて、動きをマークする。有力な政治家には『番』を貼り付け、関係を保ちつつ、取り込んでゆくというのが財務省の戦略だ。釣り針につけるエサは役所が握る権限や情報だ。

「番官僚」には、担当の政治家が何を欲しがっているのかを嗅ぎつける嗅覚が求められる。情報、許認可、国有財産。裁量が及ぶ範囲で対応すれば「違法」にはならない。常日頃から「便宜供与」を続けることで、いざ国会対策という時に、財務省ネットワークが生きる。

 閣僚経験に乏しい安倍首相には、財務省との接点が希薄だ。父親の安倍晋太朗氏は外相・通産相が長く、秘書だった晋三氏は経産・外務の若手と交わり、当時の人脈が今も生きている。財務省にはそうしたつながりがない。パイプがないことで、政策的にも疎遠になりがちだ。

 そうした中で、第一次安倍内閣の時、首相秘書官として仕えた田中一穂氏は、貴重なパイプ役だった。

 第二次安倍内閣が発足した時、田中氏は理財局長で、事務次官は同期の木下康弘。安倍首相の政権復帰で、田中氏は2014年7月、主計局長になる。

 この時、次官になったのはやはり同期の香川俊介氏。予算配分を仕切る重要なポストに首相と親しい局長を充てることで、官邸との円滑な関係を保とうとした。

 翌年7月、「安倍番」の田中氏が次官に昇格する。

 異例の人事だった。79年入省の同期三人、木下、香川、田中が、たらい回しで次官になる。それほど、安倍官邸との接点を財務省は大事にした。
田中・迫田コンビの時代と
消費増税、森友学園の符合

 田中一穂氏が主計局長・事務次官を務めた2014年7月から2016年7月までの2年間は、消費税増税を先送りしようとする安倍首相を、財務省が必死で引き留めようとする、壮絶なバトルが展開された時期だ。そしてこの時期に、大阪で森友学園が急展開する。

 首相夫人の昭恵さんが森友学園の幼稚園で「ファーストレディーとして」と題する講演をしたのが2014年4月。前年に籠池泰典理事長が用地取得に名乗りを上げた。

 14年は、小学校の設立認可、国有地の払い下げへ準備作業が進んでいた。

 資金が潤沢ではない森友学園が認可を取り、国有地を取得することは極めて難しい。府の私学審議会や国有財産地方協議会では「財務基盤の弱さ」が指摘された。門前払いもおかしくない案件が、スンナリ通り、短期間に決まった背景には、船田議員が指摘するように「大きな力」が働いた、と見るのが普通の感覚だ。

 この時期、財務省は防戦に必死だった。2014年4月、消費税が8%に引き上げられた。景気にブレーキが掛かる。官邸では首相が「財務省に騙された」と周辺に語る険悪な空気が広がった。2015年10月に予定される「10%引き上げ」に否定的な意見が持ち上がり、財務省は首相をなだめようと必死になった。

 森友学園が計画する新設小学校は「安倍晋三記念小学校」の名で寄付を募った。名誉校長に安倍昭恵さんが就任、講演には政府職員が同行し、教育方針を称賛する。どこから見ても「首相肝煎り」の小学校である。こうしたサインを財務省が見過ごすことはない。

「主計局長になった田中さんの一番の仕事は、首相を怒らせない、機嫌をとることでした」と財務官僚は言う。

 首相は11月、「消費増税を1年半延期」を打ち出し、総選挙の焦点にした。「憲法改正を争点から隠した」と言われた総選挙で、与党は安定多数を確保、「増税先送り」の味を占める。

 安倍首相に近いとされる人物がもう一人いる。首相の地元である山口県下関市出身の迫田英典・国税庁長官だ。伊藤博文以来、数多くの首相を輩出してきた旧長州藩の分厚い保守人脈は、官界人事にも影響力がある、とされている。

 迫田氏は「山口人脈」で首相と知り合い、「安倍番」に加えられた。

 田中主計局長が次官に就任した時、迫田氏は理財局長に抜擢、田中・迫田コンビで「安倍対策」を担うかたちになった。理財局長は、国有財産の管理の元締めである。

 迫田局長の下で、「8億円の値引き」が決まり、「タダ同然の払い下げ」が進んだ。
“虚偽答弁”稲田防衛相にも
財務官僚が「家庭教師役」

 森友騒動にはもう一人大事な脇役がいる。稲田朋美防衛大臣。答弁が一日でひっくり返るなど「虚偽答弁」が国会で問題になっているが、財務省にとって、「重要な工作対象」になっている、という。2014年9月に自民党政務調査会長になったことで「番官僚」が張りついている。自民党政調は党の政策を決める機関だが、経済政策に疎い。情報不足を補うのが財務官僚で、「家庭教師役」を務め稲田氏を取り込んだ。

 政調会長時代の稲田氏に「財政再建」を重視する発言が目立ったのは、その成果だ。安倍後を見据えた財務省の布石でもある。

 森友学園の籠池理事長が自民党会館で握手した、というのは政調会長をしていた時期である。

「政治家の関与」は、財務省が記録している「対応記録」を見れば分かることだ。しかし「処分された」(佐川宣寿理財局長)という。文書管理規定が定める保管期限を超えたから、と説明する。これが建前の話であることは多くの官僚が証言している。前回書いたが、政策立案過程を記録した文書は、情報公開を避けるため保存文書から外し、個人の「私的メモ」として残している、という。これは役人の常識という。

 財務省は、交渉経過を隠しているのだ。都合の悪いことが書かれているからだろう。

  国会では佐川理財局長の鉄面皮な答弁が続いている。8億円の値引きは「法に従い、適切に処理しております」。ゴミ処理を確認したか、と問われても「契約上(状況を把握する)義務はなく、詳細は承知していない」。

 注意深い役人が、法律に触れることをするとは思えない。世間が怒っているのは、普通はありえない厚遇を財務省が行ったのではないか、ということだ。法律問題ではない。なぜ財務省はこれほど森友学園の側に立って行政をしたのか、ということだ。

 疑念を晴らさない限り、財務省は信用ならない、という世論が沸騰するだろう。

 法律に違反していないから問題ない、という強弁を続ける限り、財政再建や増税の訴えは、空しく響くばかりだ。

 財務省は、誰を味方と考えているのか。

(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
森友学園、財務省の「交渉記録は残っていない」は本当か (Unknown)
2017-06-20 00:31:53
【第130回】 2017年3月2日 山田厚史 :デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員

 国有財産は国民の財産だ。火の車の財政を抱える財務省は切り売りして収入を確保しようと必死だ。少しでもいい値段で売る。それが役人の務めだろう。ところが大阪府の森友学園の一件には唖然とさせられた。

 評価9億5600万円の土地が1億3400万円で払い下げられた。85%の値引き。

 交渉経過を示す文書は「残されていない」(佐川宣寿理財局長)という。ところが、ある財務省OBは一笑に付す。「文書がないなどありえない」と。財務省は重要文書は「私的メモ」として公文書から外して保管している、というのである。一連の経過は、近畿財務局や本省理財局の担当者の手元にあるはず、というのだ。

 それにしても今回の事件で財務省の動きは不可解だ。トンデモ売却の実現は、財務官僚の手引きなしにできるものではない。交渉経過が表に出ると困るのは誰なのか。
ほぼ同じ広さの隣地は14億円
財務省に何が起きたのか

 大阪府豊中市。伊丹空港の滑走路近くにある問題の土地8770平米は、騒音被害に悩む住民の家を大阪航空局が買い上げ更地にした。技術の進歩で騒音は減り、土地は売却されることになった。何件かの交渉は不調に終わり、2013年に大阪市内で幼稚園を経営する森友学園が小学校用地として名乗りを上げ、昨年6月近畿財務局と売買契約を交わした。

 疑惑の発端は昨年9月、豊中市の木村真市議が起こした情報公開請求だ。近畿財務局は「売却価格は開示できない」と拒否。国有財産をいくらで売ったかは「原則公開」と理財局長通達で決まっているのに、である。

 市議は決定取り消しを大阪地裁に提訴。財務局は一転して1億3400万円という売却額を公開し、大騒ぎになった。

 かつて7億円で買収を申し出た業者があったが、財務局は「安すぎる」と一蹴した。豊中市が買ったほぼ同じ大きさの隣地は14億円だった。この違いは何だろう?

「値引き」の根拠とされた「地下埋設物の処理」に疑惑の眼は集まった。

 財務省は内規で、算定価格は不動産鑑定士など専門家の評価を参考にすることを決めている。9億5600万円は鑑定士によるものだったが、8憶2200万円という「値引き」は、外部の専門家がはじいたものではない。財務局に頼まれ大阪航空局が算出した。地下9.9メートルまで掘り返し、土盛りする経費として8億円余を計上したという理屈だ。

 敷地全体のゴミの掘り返しなど森友学園はしていなかったことが後に明らかになる。森友学園の籠池泰典理事長はテレビのインタビューで「校庭の土は入れ替えていない」と語った。処理費8億円のうち少なく4億円は「丸儲け」になったわけだ。
ないはずがない交渉記録
巧妙に隠す財務省の“手口”

「東西の ここ掘れわんわん 腐敗臭」

 朝日新聞に載った読者の川柳である。西の瑞穂の国記念小学校に腐敗臭が立ち上ったのは2015年の7月である。学校用地に鉛などで汚染された土がある、と学校を建設する森友学園が言い出した。「地下3メートルまで汚染土を除去した」とゴミ処理の支払いを請求。財務局は1憶3176万円を森友に支払った。

 ゴミが出ればカネになる、と思ったのだろうか。森友側は「地下にもっと大量のゴミがある」と言い出し、併せて土地の購入を申請した。そんな中で2015年9月4日、近畿財務局9階会議室で会議が開かれた。

 森友学園、近畿財務局、大阪航空局の三者が建設業者を交えて会合を持った。共産党の宮本岳士議員が内部資料をもとに参加者の実名を示し、予算委員会で質問した。

 財務省は佐川理財局長が「売却価格について森友側と交渉したことはない」と答弁していただけに、会議については「確認できていない」と突っぱねた。そして答弁は変わる。

「個別の会議はたくさんあり交渉記録は残っていないと思われます」(同局長)

 財務省の行政文書管理規則は保存期間1年未満、保存期間は事案の終了までだという。2016年6月の売買契約締結をもって保存期間は終了した、文書は残っていない、というのだ。

 この答弁に、財務省の文書管理に詳しいOBは、私の取材にこう語った。

「交渉記録を残しておかないとあとで問題になった時、困る。行政経験の積み上げという面からも資料を残すことは大事だ」

 ただ外部から覗かれるのは困る、というのが財務省の基本的な立場である。決裁文書などは公文書として保管するが、経過や政治家など外部対応などが詳細に書かれた文書は「担当者の私的メモ」とする。情報公開の対象から外すための工作である。

「私的メモ」といっても担当者個人が持っているのではない。関係者が共有できるファイルになっている。取り扱い区分は「私物」なので、捨てたり焼却しても法に触れない、という便利な扱いだ。

 佐川局長は「交渉記録はない」「保存期間は終了している」と強調するが、「廃棄した」とは言っていない。

 文書はまだ残っているのだろう。本省も財務局も担当者は毎年のように変わる。いま問題が紛糾しているのだから、財務省にとって当時を知る大事な文書のはずだ。

 財務省は「私的メモ」を理由に公開を拒否するだろう。その際、国会は国政調査権を発動して文書を押さえることができるが、国政調査権の発動は与党の協力がなければできない。

「ゴミ処理費」と称して8億円も値引きしながら、麻生財務相は「適正な価格によって処分を行った」と言い張り、ゴミは処理されたのか、と聞かれた理財局長は「確認していない。確認する必要もない」と木で鼻をくくった答弁を繰り返す。

 国会とは何なのか、と思う。国民の利益を代弁する議員が集まり国民主権を全うする場だというのに、与党はひたすら隠し事をしている。こうした中で、国民の財産が「格安」で得体の知れない学校法人に払い下げられたのである。

 ひどい話ではないか。財務省や国土交通省には立派な役人が沢山いる。こんな払い下げはまずいよ、と言う役人はいなかったのか。今になっても「適正に処理された」と言い張っている。

Unknown (Unknown)
2017-06-20 00:32:22
時代の空気が生んだ森友学園
幼稚園児まで巻き込むアナクロニズム

 日本でおかしなことが立て続けに起きている。東芝もそうだったが、多くの人が「おかしい」と思うことを口に出せなくなっているのではないか。空気を読み、忖度し、長いものに巻かれろ、と判断を停止する。

「全体主義」と言ってもピンとこない人が多いだろう。私たちの親や祖父母の時代、若者は「天皇陛下万歳」の歓声で戦地に送られた。戦争はイヤだ、と思っても口に出せない。学校では子どもたちが教育勅語を暗唱し、「鬼畜米英」と叩きこまれた。

 そんなのは昔のこと。ほとんどの人はそう思っているだろう。ところがである。

「朕オモフニ我ガ皇祖皇宗國ヲハジムルコト……」。

 幼稚園児が集団で教育勅語を暗唱する動画にネットで出合った。70余年前にタイムスリップしたかのようだ。運動会のシーンもある。運動着姿のかわいい子どもたちが、思いっきり声を張り上げている。

「大人の人たちは、日本が他の国に負けぬよう、尖閣列島・竹島・北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が、心改め、歴史で嘘を教えないよう、お願い致します。安倍首相ガンバレ!安倍首相ガンバレ!安保法制国会通過よかったです!」

 森友学園が経営する大阪の塚本幼稚園のひとコマだ。言葉も意味も分からない子どもに「愛国心」を刷り込んだ過去と重なる光景である。

 いまさら戦前には戻りませんよ、と多くの人たちは言う。そうであればいいと思う。

 トランプ大統領がアメリカに登場した。欧州では大戦の反省から生まれたEU統合が崩れつつある。ネオナチや極右が台頭している。移民や難民を敵視する排外主義は日本も無縁ではない。近隣の中国・韓国を敵視する偏狭な愛国主義を煽る人たちが日本に増えた。

 森友学園は、時代の空気と無縁ではない。園児まで巻き込むアナクロニズムが、堂々と次に小学校を狙っている。

 奇妙なことがひとつある。「天皇陛下万歳」ではなく、なぜか「安倍首相がんばれ!」なのだ。

 森友学園が開校する小学校(瑞穂の国記念小学院)は「安倍晋三記念小学校」という名称で寄付金を集めていた。

 名誉校長になって「広告塔」を演じたのが首相夫人安倍昭恵さんだ。2014年4月、12月、15年9月と、三度にわたって塚本幼稚園を訪れ、講演までしている。

「こちらの教育は大変素晴らしいと主人も思っています」と持ち上げていたという。

 首相は「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と答弁しており、昭恵夫人が学園を深くかかわることを夫が了解していたことを伺わせた。

 私学が独自の理念に沿って教育することは尊重されても、判断のつかない幼稚園児や小学生に極端な政治教育をすることは問題だろう。2006年に東京新聞が塚本幼稚園の異常さを取り上げた時、文部科学省の担当者は「適当ではない」とコメントした。

 それから10年。首相夫人が訪れ「大変すばらしいと主人も思っています」と褒めたたえた。
東芝で起きたことが
財務省でも起きているのではないか

 国有地の異常な払い下げは、この時代の空気と無縁ではないだろう。10年前なら相手にもされなかった教育方針を掲げる小学校が、大阪府の私学審議会で「認可」され、認可されれば、という条件付きで国有地が払い下げられた。

 私学審議会では教育方針や運営に疑問が吹き出て一度では決まらなかった。私学審の紛糾を知りながら財務省は、国有財産地方審議会にかけ、契約相当という結論を引き出した。

 議事録を読むと、森友学園の財務や賃貸借契約に疑義が出ていた。それを事務局が「私学審が条件付き認可をしたのだから、その条件を満たせば」という苦しい理屈付けで押し切った。

 国有地売却は競争入札が原則だが森友は随意契約だった。払い下げは売却が原則だが、賃貸借でという異例のケースだった。

「小学校を設立する、という公益にかない、経営基盤がぜい弱なことに配慮した措置」と財務省は言う。初めから優遇されていたことがうかがわれる。

「ゴミが埋まっている」ということで処理費用や値引きが繰り返され、破格の安値で森友は国有地を手に入れた。定められた規則を潜り抜ける様々な手法は財務省上層部の了解なくしてできることではない、と関係者は言う。疑われているのは近畿財務局長、理財局長という高級官僚の関与だ。

「佐川局長は自分は関与していないから強気の答弁ができる」。財務官僚OBは言う。

 関係者が注目するのは前近畿財務局長の武内良樹国際局長と前理財局長の迫田英典国税庁長官という。その上に誰がいるのか。明らかにするのが国会の役割だ。

「安倍晋三記念小学校」の応援団は安倍夫妻だけではない。自民党、立ち上がれ日本、大阪維新などの右翼系議員が支援していた。「ナチスの手法を見習ったらどうか」と言った麻生財務大臣も日本会議と近い関係にある。

 官僚の世界で上り詰める条件のひとつが「空気を読む術」である。どう立ち回れば組織で評価されるか。上司やトップが期待することを読んで、行動する。トップが狂うと組織が暴走する。

 東芝で起きたことが、財務省でも起きているのではないか。安倍首相や麻生副総理の責任は重い。

(デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
加計問題を現役官僚が徹底討論!「財務省の陰謀」説も (Unknown)
2017-06-20 00:45:48
2017年6月16日 横田由美子

前文部事務次官の“暴露”まで飛び出し、炎上している加計学園問題。“政”と“官”の問題も取り沙汰される中、当の官僚たちはどのように捉えているのだろうか。当事者となった文部科学省を始め、財務省、経済産業省の現役官僚たちに集まってもらい、省内の雰囲気と、加計学園問題が及ぼす影響について聞いた。(ジャーナリスト 横田由美子)

──各省庁で、加計学園問題は話題になっていますか。

財務省 正直、メディアが話題にしているほど、官僚たちの間でこの話題は話されていない印象を受けます。もっと言えば、申し訳ないんですけど、どこか人ごとのような感じがあります。

 “我が社”は、森友学園の国有地売却問題で、理財局長が大阪府への許認可要求を行ったことに対して、「忖度」があったのではと集中砲火を浴びました。また、最近では面談記録の廃棄問題ばかりか、森友学園の籠池泰典・前理事長側に立つ市民から訴訟も起こされています。でも、担当部局ではない若手なんかは本当に何も知らないから、「大変だなあ」という感じですね。

経産省 うちは、やっぱり森友問題がはじけたときから、結構、危機感がありましたね。というのも、安倍昭恵夫人付きの女性スタッフ5人の内2人が経産省からの出向者だからです。

 この人選に、うち出身の今井尚哉政務秘書官が関与していたのではないかといった “飛び火”を警戒しています。省内には、「またお友達人事と批判を浴びるのではないか」「第一次安倍内閣同様に、ドミノ的に倒れるのでは」といった不安感が漂っています。
文科省は財務省のように
叩かれ慣れていない

文部科学省 今井さんは、安倍政権に骨を埋める覚悟ですからね。そのため経産省は、橋本(龍太郎)内閣以来の強大な“権力”を霞が関で握っている。しかし一方で、今井さんが飛ばされるなどの憂き目に遭ったり、政権自体が倒れたりするようなことがあったりすれば、財務省に形勢を逆転されてしまうのではないかと見られているようですね。

財務 いやいや、そんなことはないと思いますよ。ただ、菅(義偉)官房長官の記者会見は話題になっていますね。毎回、かなり険悪な雰囲気になっているだけでなく、最近では女性記者との言い合いが話題になり、ワイドショーでも取り上げられていた。この女性記者は、“女”を上げましたが。

経産 それこそ、塩崎(恭久)元官房長官の姿がデジャビュしましたよ…。

文科 でも、うらやましいですよ。文科省の場合は、正月の「天下り問題」から始まって、過去にこれほどまで話題になったことはないというぐらい連日叩かれていますからね。旧文部系と旧科学技術庁系とでは温度差があるのですが、今回は全て旧文部マターで、省内では立場が悪くなっています。ここまでくると、省内でこの問題について話すことはタブーに近い状態ですね。

財務 それにしても、「天下り問題」が発覚したとき、文科省、中でも旧文部系の体質の古さには驚きました。ここまで独特の閉鎖的な“世界”を築いていたとはあらためて驚愕しています。

経産 文科省はこれまで、財務省のように叩かれ慣れていないからじゃないんですか。申し訳ないけど、文科省ってのんびりと内輪だけでやってきて、それで許されてきた気がする。付き合う相手も学校関係者ばかりでしょう。その点、国交省など他の省庁は外の業者とも付き合わないといけないので、文科省のようにあからさまに規定に違反した天下りは絶対にないでしょう。

文科 まあ、文科省の体質は“個人プレー”に走りがちな経産省さんなどとは違いますし、目立つ人もいない。それこそ、前川さんが唯一の“大物官僚”だったぐらいですからね。

経産 その前川前次官ですが、加計学園問題は前川さんの暴露のせいで火を噴いた。せっかく天下り問題が沈静化し、森友問題も落ち着いてきたのに「なんで今?」というのが、霞が関での共通認識のように感じます。

 内心、「よく言った!」と思う官僚も多いかもしれないけれど、「あの人、何なの?」と批判的に感じている人は少なくないはず。経産省出身で内閣府の藤原豊審議官のところまで火の粉が降りかかってきましたからね。
Unknown (Unknown)
2017-06-20 00:46:38
3〜4月なら分かるが
なぜ今のタイミングで暴露?

──経産省の方がおっしゃったように、「前川さんはなぜこのタイミングで暴露したのか」と、霞が関の多くの官僚が疑問に思っているんでしょうね。

経産 確かにそうですね。次官を退任したのは1月。懲戒処分が下ったのは3月です。普通に考えたら、3〜4月のタイミングで暴露するはずです。しかしこのときは、森友問題が燃えさかっていたときで、文科省幹部は加計に飛び火することを恐れていたんでしょう。なぜなら、「誰かがふたを開けてしまえば、森友より大問題になる」ということは、官邸周辺では周知の事実でしたからね。

財務 さすがは経産省さん。安倍さんの情報をじかに取れる今井さんから情報が降りてくるだけあり、「情報通」ですねぇ。でも、なぜ国会が燃えさかっていた4月ではなく、通常国会が終わる寸前の「今」なのか不思議でならない。通常国会が終われば、報道も東京都議会選挙一色になって、尻すぼみになるのは目に見えていたじゃないですか。

経産 組織票がかなり都民ファーストに流れて、「自民党がトリプルスコアで負ける」なんて話も出ているぐらいですからね。しかし、ここにきて、松野博一文科相が「加計学園の調査をする」と発表したのも、「話がここで終わる」ということを見越したからなんじゃないですか。「いつまで」という時期も明確に示していないし。

文科 きちんと調査はすると信じていますが…。

──こうした状況について、財務省は「内心いい気味だ」と思っているんじゃないんですか。安倍政権になってから、アベノミクスに代表される経済政策は、全て経産省主導になっていますから。官邸でも主席秘書官を経産省に握られて、暗躍する“隙”もないほど、財務省の存在感が薄れていましたし。

経産 そんなことないと思いますけど(苦笑)。とはいえ、財務省と官邸との距離は、かつてないほど「遠いものになった」と言われていますね。安倍政権以前の財務省は“一強”でしたから。

 ところで、情報をリークした前川さんの情報源は、内閣官房の職員だと疑われていますよね。しかもそれが、「実は財務省からの出向者なのではないか」と、まことしやかにささやかれています。財務省さん、そのあたりどうなんですか。

財務 そんなの、ただのうわさですよ。それより、前川リークで最初に“得”をしたのは経産省なんだし、経産省さんの方が疑わしいんじゃないんですか?

 森友問題では財務省も叩かれていますが、勤務時間中に国有地払い下げの件について財務省に確認を入れ、籠池泰典前理事長に返答FAXを送っていた中小企業庁経営支援課課長補佐の谷査恵子さんや、昭恵夫人付きの重松宏美さんら経産省の連中が、「公務」として動いたことは明らかですしね。

 昭恵夫人の講演などにも「休日に私人として付き添った」と苦しい言い訳をしていましたが、休日でも総理夫人の付き添いとして動くなら上司の決済は必要ですから、あり得ないですよね。それこそ、そういった文書もまるごと「廃棄文書になったのでは」などとうわさになっていました。それが、前川リークによって、すっかり忘れられた感じがありますから、経産省としてはありがたいリークでしたよね。
官邸との距離や人事権の問題から
疑われてしまう財務省

文科 まあまあ、そんなに熱くならないで(苦笑)。

財務 どこかのジャーナリストが、背景に「清和会VS二階派の構図がある」と言っていましたが、どうなんでしょう。前川さんの実妹が中曽根弘文元文科相に嫁いでいることを考えれば、中曽根派の系譜に連なるので、二階派が裏で糸を引いているというは、ちょっと違うかなという気もするんですが。

文科 前川さんの暴露は、政治的な思惑と無関係だと思いますよ。単純に官僚としての“矜持”の問題だと、僕は信じています。

経産 でも、前川さんの場合は、再就職できなくても全くお金に困らないですよね。お家柄がいいから。だから報じられているように、ボランティアでの仕事もできるわけで…。そうなると、やっぱり政治的な動きが存在したのではないかと勘ぐられても仕方ないですよねぇ。

 財務省は、最近、岸田派系との距離を急速に縮めていますよね。岸田文雄外相は、リーダーシップに欠ける印象が強いと批判は浴びていますが、次の総理候補の一番手。そうした機敏な動きを見るにつけ、やっぱり財務省が、裏で操っている感じがして仕方がないんですけど(笑)。

財務 確かに、「財政健全化」という意味では、“我が社”と岸田さんとでは考えが近いでしょうが、それ以上でもそれ以下でもありませんよ。私は、政治的な動きではなくて、「何か隠さなければならない重大なことがあった」から、この時期に前川さんは暴露したのではないかと見ています。「出会い系バーへの出入り」よりもっと大きな問題が背景にある気がしてなりません。あくまで憶測ですけどね。

──政治絡みでないとすれば、「人事」が背景にあって、財務省が動いたと考えられませんか。“政”と“官”、もっと言えば“官邸”と“霞が関”との関係は、3年前に設置された「内閣人事局」によって、やはり大きく変わりましたし。

経産 確かに、“一強”だった財務省の力がそがれたのは、今井秘書官などの「人」が原因なのではなく、幹部の「人事権」を官邸に奪われてしまったことにあります。

財務 実際、そうでしょうね。その影響で、“我が社”は力を失ったわけです。うちの幹部には、「官邸の手先として働いております」などと、自嘲気味にあいさつをする人もいるぐらいですからね。

経産 財務省さんは、着々と巻き返しを図っていますよね。菅官房長官も、財務省出身の秘書官をかなり重用していると聞いていますよ。それにしても、政権が現状のままだと、文科省幹部は今期もさることながら、来年の人事が心配でならないでしょうね。

文科 うーん…、答えに困りますねぇ。

財務 今年は、前川チルドレンたちも守られているように見えるけど、実際人事が発令されれば旧科技庁系が重用される、ということも十分あり得る話だと思いますよ。恐らく安倍政権はしばらく続きますからねぇ。

──“前川の乱”は、文科省の今後の人事に憂いを残してしまったと。

文科 おっしゃるように省内のパワーバランスは変わってしまうかもしれませんね。

http://diamond.jp/articles/print/132009
「忖度機関」に堕した霞が関で囁かれる加計問題幕引きシナリオ (Unknown)
2017-06-20 00:48:41
2017年6月19日 ダイヤモンド・オンライン編集部

加計学園への獣医学部認可問題をめぐり、文部科学省の再調査で、内閣府の特区担当者から「総理の意向」を伝えられたという「文書」が存在することが改めて確認された。また、首相補佐官に続いて、官房副長官の「関与」が疑われる文書も見つかった。安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学園に「特別な便宜供与」があったのか、それが首相の指示を直接受けてのものなのか。疑惑の解明が待たれるが、文書や首相側近の動きから浮き彫りになったのは、「官邸支配」のもとで霞が関全体が「巨大な忖度機関」化していることだ。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)

 愛媛県今治市の「国家戦略特区」の事業主体に、加計学園が運営する大学の獣医学部構想が認定されたのは今年1月。この構想は、小泉政権時代からの「構造改革特区」でこれまで15回提案され、すべて却下されてきたが、今回は、安部政権の「日本再興戦略」の一環として異例のスピードで認められた。

「(加計学園ありきで)関係者の暗黙の理解があり、特例を認めるべきという結論が出て、公平であるべき行政が歪められた」

 この問題を“告発”した前川喜平・前文部科学次官の会見などによると、特区を担当する内閣府と、特区の認可4条件を満たしていないことから慎重姿勢を取っていた文科省との協議が続いていた昨年秋、内閣府の担当者から「総理の意向」、「官邸の最高レベルが言っている」と、文科省の担当課に伝えられたという。

 その時の協議の内容を文科省側がまとめたものが、今回の再調査で確認された文書だ。前次官自身も、協議が進められていた当時、首相補佐官や首相のブレーン役の内閣官房参与から、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」などと、対応を求める働きかけを受けたという。

 また文科省の再調査では、実質的に加計学園しか応募できなくなるような、急きょ付け加えられた認可の要件作りを、官房副長官が主導していたことを示唆する文書が新たに見つかった。

 内閣府や官房副長官は否定しているが、文書や前川氏の証言通りだとすると、少なくとも首相周辺が「総理の意向」を振りかざし、具体化に向けて動いたことが浮かび上がる。
「総理の意向」を
個別問題で使うのは異例

 こうしたことは、霞が関において「日常」のことなのか。

 ある省の入省約20年の中堅官僚は言う。

「『総理の意向』や『総理マター』という文言は、何かをやろうとして、他省庁や省内で折衝する際に口にしたり、文書に書いたりすることは少なくはない。虎の威を借りるじゃないが、総理も同じことを考えているということにすれば、話が進めやすいからだ。相手側もその狙いを分かった上でやり合うのだけれど」

 だが、今回の場合は、異例さを感じる点が多いという。

「『総理の意向』を使う場合でも、例えば、岩盤規制に穴を空けるのは『総理の意向』といった一般的な言い方をするが、個別の問題で使うことはない。ましてや総理と親密な間柄の人の陳情案件のような問題で使われているのは、かなり筋悪だ」

 また別の省の幹部は「『総理は自分で言えないから、私が代わって』などと、首相補佐官が言ったのなら、忖度そのもの。役所では、(自分のポジションの)上の上の人が何を考えているか、その人の立場を念頭にいつも動けと教えられてきた。そして、二つ上の人は、そのまた上の上の人のことを考えて動くから、最終的には、大臣や官邸、有力政治家の意向や利害を考えて動くことになる。そういう体質、処世術が染み込んでいる。ましてや今の霞が関は、官邸の意向には逆らえない状況だ」

「官邸支配」のきっかけになったと、官僚が口をそろえるのが、第2次安倍政権で内閣官房に「内閣人事局」が作られたことだ。
幹部人事と情報握り
強まった「官邸支配」

 小泉政権で、経済財政諮問会議に象徴される「首相主導」の予算作りの枠組みが作られ、民主党政権時代も事務次官会議に代わって閣僚委員会などが設置されるなど、政策決定の主導権を「官」から「政」に移す動きが進んできた。だが、内閣人事局が局長など審議官以上の幹部人事を一元管理し、実質的な人事権を握るようになると、官邸の力が一気に強まる。

「省内の評価と一致しない人が偉くなったり、役所の意向を無視したりするような掟破りの人事が増えた。上になればなるほど、官邸の顔色を見てやらざるを得ない。物言えば唇寒しという状況が決定的になった」と、ある官僚は話す。

 昨年の農林省の次官人事では、前任の次官が10ヵ月での退任となり、林野庁などの外局の長官を経験してから次官になる通例を破って、農協改革を担当していた本省の経営局長が抜擢された。この人事には、菅義偉官房長官の意向が働いたといわれている。

 厚生労働省でも、「エース」とされていた局長が転出。直接の原因は、年金局長時代、塩崎厚労相が執心したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用拡大に抵抗したから、との見方が強い。株価を維持し、アベノミクスを支えようとした厚労相に反対し、一方で消費税増税による「税と社会保障一体改革」に取り組んできたことが、政権の成長戦略重視の方針に沿わないと判断されたのではないか、というわけだ。

 前川・前文科事務次官が、「天下り斡旋問題」で自主退職を迫られたのも、加計への認可で逆らった文科省への見せしめ懲罰という面のほかに、前川氏がかつて小泉政権が進めた「三位一体改革」での義務教育費削減に抵抗した“前科”が背景にある、と見る向きもある。

 こうした各省庁の動向や、幹部の発言を細かく見ているのが菅官房長官。首相に持ち込まれる案件は、事前にすべて官房長官を通すが、菅氏はどの省庁がいま何で動いているかをつぶさに把握し、「この案件はまだ(首相に)上げるな」といった指示を事細かく出すという。

 官邸に情報が集まる仕組みが整備され、中には一部のメディアから、懇談や私的な会合での発言ややりとりを記した「メモ」も集められるという。菅氏自身も、「一晩に2階建て、3階建ての会合」をこなしているにもかかわらずだ。

「どこで誰が何を話したか、政権批判のような過激なことを言えば、すぐに伝わっている。官房長官は毎朝、新聞各紙を読んだ後、必ず集められた情報メモに目を通す。そんな話がまことしやかに言われているから、恐ろしくて何も言えない」とある省庁の幹部は言う。

 最近でも、外務省の釜山総領事が突然、交代になったのは、帰国中に会合をした時のメモが流出し、その時の「政権批判」が逆鱗に触れたといわれている。
成長戦略で経産省の一人勝ち
増税先送りで地盤沈下の財務省

 予算配分や税制改正で、与党や政治家と渡り合い、もまれながら政治の過剰な介入を抑える役割を担ってきた財務省の“地盤沈下”も、対官邸に対する霞が関全体の力関係に影を落とす。

 経済政策では、これまで財務省と経済産業省が連携したり、時に対立したりしながら主導してきたが、安部政権では成長戦略をかつぐ経済産業省が官邸を支える最有力官庁として前に出て、財務省は後ろに置かれている形だ。

「アベノミクスで、第三の矢(成長戦略)が弱いとの批判を受けた時に、経産省が官邸に持ち込んだのが法人税減税だった。逆に財務省は、消費税増税を主張して、先送りされ一敗地にまみれた。財務省が抑え込まれたのは衝撃だったし、どこの省庁も、官邸と一体となった経産省の一人勝ちの状況を見ている。だから、官邸に逆らうことはなんのプラスにもならないと、みんな分かっている」と、ある省の幹部は言う。

 官邸で菅官房長官とともに差配するのは、第1次安倍政権の首相秘書官を務めて以来、首相の最側近にいる経産省出身の今井尚哉政務秘書官だ。

 消費増税先送りやアベノミクスが、企業や富裕層重視との批判を受けると、介護職員の処遇改善などの「一億総活躍社会」や「働き方改革」を持ち出し、主導したのも今井秘書官だ。

 一億総活躍社会なども、通常は財源の目途などを財務省などと事前に調整するのだが、根回しや折衝はなく、頭越しに進められた。この今井氏につながる経産官僚のネットワークが、加計問題では文科省に「総理の意向」を伝えたとされる内閣府の審議官であり、「森友学園問題」では、国有地売却で近畿財務局と折衝した「首相夫人付き」だ。

「政務の総理秘書官は側近中の側近。首相夫人の担当でもある。いつも一緒にいるから総理の意向は分かっているし、そうなるようにするのが仕事。総理と一心同体だ。加計の場合は、ルートはいくつかあると思うが、総理秘書官らを中心にいわば官邸主導で動き、内閣府などが従った可能性が高い」。総理秘書官の経験のある元官僚は話す。
力関係は「政」に大きく傾く
「一強体制」首相の強弁

 もとはといえば、「政治主導」「官邸主導」は、戦後の「官僚主導」の行き過ぎや限界が露呈する中で取り組まれてきた。「政」と「官」が拮抗し、緊張関係が維持されることで公正な行政も期待できたが、力関係が「政」に大きく偏る中で、霞が関は「巨大な忖度機関」へと堕落してしまったのだ。

 霞が関や官僚OBの中に、前川・前次官の「告発」には批判がないわけではない。

「(加計学園への認可は)おかしいと思ったなら、辞めた後でなく、なぜ次官の時に反対しなかったのか。少なくとも大臣に上げて、(大臣が動かなかったら)戦うべきだった」といった批判が典型だろう。

 どの省庁も、時には族議員を予算獲得や法改正などの応援団に使いながらも、それでも政治の圧力や利益誘導に対しては抵抗し、省庁間で対立しても党や官邸に持ち込むのではなく、霞が関の中で着地点を見つける苦労をしてきたという思いがあるからだ。

 だが、かつてない「1強体制」「官邸支配」のもとでそれができたのかどうか。

「総理は(加計の問題で)異論があれば、(前川)次官が官邸に来た時になぜ言わなかったのか不思議だと言っているが、言えるわけがない。それを分かっていて強弁している」。ある官僚は吐き捨てるように言う。

 何もかも霞が関が「忖度」してやったことにすれば、野党の追及から逃げ切れるし、忖度した役人は人事や天下り先で処遇してやることで、口をつぐませることができる。縮こまる霞が関を尻目に、官邸や与党内部ではこんな幕引きのシナリオが語られている。
加計問題で翻弄された“信念の官僚”、前川氏と藤原氏の悲哀 (Unknown)
2017-06-20 00:51:30
2017年6月9日 横田由美子

“政”と“官”のあり方が、今、再び問われている。

 加計学園への獣医学部認可問題でぐらつく安倍政権に、文部科学省の元事務次官、前川喜平(54年入省)が、「行政のステップを踏まなかった。極めて無責任な行政と思わざるを得ない」「公正、公平であるべき行政のあり方が(政治的介入により)歪められた」などと強烈な矢を放ち続けている。

 森友学園問題でも、認可について「官僚の忖度」が俎上に上げられたが、正直、告発者のキャラクターなどが影響し、国民の印象では「疑惑の域」を出なかったと言わざるを得ない。そういう意味で、森友問題では官邸の“印象操作”が功を奏した形だった。

 しかし今回の加計学園問題では、「総理の意向」を印籠に官僚が動き、便宜が図られたことは明白だ。なにしろ、認可が降りた後に、所管省庁となる文科省の元事務次官が、「総理のご意向と書かれた文書は確実に存在した。あったものをなかったことにできない」と、記者会見で明確に証言しているからだ。

 官房長官の菅義偉は、前川の言う「総理の意向」と記された文書について、“怪文書”と切って捨てたが、5月22日には、「藤原(豊)内閣審議官との打ち合わせ概要」(獣医学部新設)」という題名の添付文書が明るみに出た。

 そもそも、仮にも文科省のトップだった行政官が、実名も顔もさらした上で「怪文書」など出すだろうか。ネット上では、「前川元次官の爆弾発言は、天下り問題で任期半ばにして詰め腹を切らされた腹いせだ」といった、明らかに官邸周辺から発信されたと思われる情報がもっともらしく流布されているが、これも印象操作の一つと考えざるを得ない。

 実際、「280926 藤原内閣審議官との打合」というファイルも発覚しており、「総理の圧力」の裏付けこそ取れていないが、内閣府と文科省の担当者間での協議において、「総理のご意向」が働いたことは間違いないといっていいだろう。
突然出番が回ってきた
国家戦略特区の中心人物

 ファイル名にもなってしまった内閣府審議官、藤原豊(62年入省)は、経産省からの出向者で、霞が関では「国家戦略特区」の中心的人物として知られる。

 戦略特区は、小泉政権時代の規制緩和策として採用された「構造改革特区」にその原点を見ることができる。ちなみに初代特区担当相は、鴻池祥肇参議院議員(麻生派)だ。

「当時、藤原さんは特区の中心人物で、竹中平蔵・現国家戦略特区諮問会議議員や、三木谷浩史・楽天会長との太いパイプはこの時にできたものです」(当時の特区室担当者)

 その後の自民党の凋落とともに、特区ブームも衰退。藤原を除く特区室のメンバーは、次々と霞が関を去った。民間企業に転職した者もいる。民進党の後藤祐一や福島伸亨など、政界に転出したメンバーも珍しくない。

 彼らは、「構造改革特区組」と特区室の中でも区別されていて、考え方も行動も他のメンバーより急進的だった。それがために、役所を去らざるを得なかったと見られている。一方、藤原のように残留したメンバーは、冷や飯食いが続いた。それが、民主党政権を経て、安倍政権の誕生をきっかけに、突然、出番が回ってきたのだ。
血を吐くまでやれと命じられ
無理をせざるを得なかった藤原

 しかも今回は、究極的には大蔵族だった元首相の小泉純一郎の指揮下ではなく、経産省びいきである首相の安倍晋三が、成長戦略の一つとして掲げるほどの力の入れようだ。首相の政務秘書官である今井尚哉(57年入省)、第一次政権からの側近である長谷川栄一広報官(51年入省)の強力なバックアップに加え、応援も見込めるという追い風的環境だ。

 だが、それが逆に、「必要以上に無理をせざるを得なかった要因ではないか」と、藤原と交流のある内閣府の官僚は指摘する。

「藤原さんは、前川さんとは別の意味で毀誉褒貶のある人だが、信念の官僚。特区を活用して岩盤規制に斬り込みたいと真剣に思い、実行した。だが、安倍首相主導という政策ゆえに、かかる期待もまた大きかったのだろう。上司から、“血を吐くまでやれ”と檄を飛ばされていたほどだ。加計の獣医学部の背景は別として、藤原さんは、獣医学部の新設は必要と考えていたし、10年近く検討課題にされ続けていた案件を、機に乗じてまとめたいと考えるのは、仕事ができる官僚なら当然のことだ」(内閣府の官僚)

 今回の過程で起きた、獣医師会の意を受けた農水省と文科省、そして厚労省の引け腰も、役所の縦割り行政を否定する藤原にとっては、許しがたいことだったのかもしれない。
財務省の最強チームを相手に
徹底抗戦した前川

 しかし、前川もまた“信念の官僚”だった。二人は育ったバックグラウンドや手法こそ異なるが、タイプとしてはよく似ている。永田町に広い人脈を持ち、政治家への説明も上手ければ、“寝技”もできる。時流を見極める感覚があり、国民の声を反映した政策に官僚生命までも賭そうとする…。少々褒めすぎかもしれないが、前川はそんな官僚だった。

 筆者が、前川元次官の名前を知ったのは、小泉政権の時代である。“聖域なき構造改革”をスローガンとし、「三位一体の改革」を推し進めた。これは国と地方公共団体の行財政システムを改革するという壮大なものだった。柱は(1)国庫補助負担金の廃止・縮減、(2)税財源の移譲、(3)地方交付税の一体的な見直しの大きく三つだった。

 この過程で、存廃の対象となったのが、文科省の「義務教育国庫負担制度」だった。小泉元首相の意を受けた財務省は、「財源を地方公共団体に移譲した上での一般財源化」を主張し、地方6団体の同意を取り付けた。

 この時の財務省側のメンバーがすごかった。当時、主計局次長で後に次官を務めた勝栄二郎(50年入省)を中心に、やはり後に次官となる香川俊介(54年入省)らが脇を固めるという最強のチーム。この時点で、義務教育国庫負担金は廃止が決定したようなものだった。

 ところが、そこに立ちはだかったのが、前川を始めとした「チーム前川」とも呼べる中堅文部官僚の一派だ。

 当時の前川は、初等中等教育局初等中等教育課長で、省内に理念と志を同一にする「奇兵隊」を組織し、財務省とそのバックにいる小泉、当時の懐刀だった幹事長の安倍(05年より内閣官房長官)に対して徹底抗戦を見せたのだった。

 この頃、前川らの動向に対して官邸周辺からはこんな情報が発信されていた。

「文科省予算約4.5兆円のうち、ざっくり3兆円が文部省予算で、その半分が義務教育国庫負担金だ。つまり、旧文部官僚のパワーの源泉であり、彼らがどうしても守りたい既得権益なのだ」

 それに対して前川は、「奇兵隊、前へ」というブログを開設し、さらには「月刊現代」に寄稿して、義務教育費の削減は道理が通らないということを声高く主張した。現役官僚が、時の総理が推進する政策に真っ向から盾突くのは、霞が関の常識ではあり得ないことで、相当な物議を醸した。

 だが、旧文部官僚のほとんどが陰に日向に前川を支持していたこと、また当時の文教族の力が小泉・安倍が所属する清和会の中でも圧倒的だったことなどから、一時は「廃止」が確定していた義務教育国庫負担金は、3分の1にまで戻す形で決着したのだった。

 ちなみに、当時の文教族議員と言えば、元総理の森喜朗を筆頭に、「文科(旧文部)大臣経験者でなければ族議員でない」と言われるほど人材が豊富だった。町村信孝、故鳩山邦夫、伊吹文明など、そうそうたる顔ぶれだ。彼らの後押しを受けて政策が揺り戻されたことは容易に想像がつく。

 興味深いのは、元総理の中曽根康弘の子で、前川の義弟にあたる参議院議員の中曽根弘文が1999〜2000年にかけて文部大臣の職にあり、やはり文教族の重鎮だったということだ。

 少々、話は脱線するが、前川を理解するために、彼の出自を見ていこう。前川の家がかなりの名家だということは、霞が関内では知る人ぞ知る情報だ。

 出身は奈良県で、前川家は旧家だった。祖父の代に上京し、総合機械製造業の前川製作所を設立。現在は叔父が3代目を継いでいる。もう一人の妹はレストランチェーンを中核事業とする一部上場企業の会長夫人。元文部大臣である弘文の娘は、日本交通の3代目社長に嫁いでいて、前川を「キヘイ叔父」と呼び慕っている。縁戚は、鹿島建設の鹿島家とも繋がる。

 そうした出自の前川が、記者会見で首相補佐官の和泉洋人が「総理は自分の口から言えないから私が代わって言うと言った」と証言し、再び政権の掲げる政策のあり方に真っ向から異を唱えた。

 その姿は、文教族の内部闘争の延長のようにも感じられる。現在、文教族の世界では、下村博文を始めとする清和会系で安倍のお友達や、親衛隊の台頭が著しいからだ。
“前川の乱”に
追い詰められる首相

 そうした中、突如、読売新聞が報じた、前川の「出会い系バー」出入りの報道は、“前川の乱”ともいうべき行動に、安倍が思いの外、追い詰められていることの裏返しである印象を受ける。前川は、自らの立場を考えればもう少し慎重になるべきであったが、貧困女子の実態を調査していたという「出会い系バー」で、彼と性的関係を持ったという女性は一人も出ていないからだ。

 また、安倍が参議院本会議という公の場で、「プロセスは関係法令に基づき適切に実施しており、圧力が働いたことは一切ない」と弁明せざるを得なかった。これもまた、安倍自身、そしてその周辺が追い詰められている証左なのではないだろうか。

 加計学園にまつわる問題は未だ謎に包まれており、もしかしたら全容が解明される日など来ないかもしれない。しかし、いずれの官僚も、自らの信念の元に政策を推し進めようと奔走した。にもかかわらず、官僚に本来の姿を失わせ、事態を複雑化させたのは政治家たちであり、諸悪の根源は安倍、その人にあるのではないか。

 前川と藤原──。加計学園問題で登場した、似た者同士の二人を見るとき、政治に翻弄された“官僚の悲哀”を感じずにはいられない。(敬称略)

http://diamond.jp/articles/print/131006
2015年6月8日国家戦略特区ワーキンググループ議事録 等 (Unknown)
2017-06-20 15:36:48
国家戦略特区ワーキンググループ
ヒアリング(議事要旨)
(開催要領)
1日時平成27年6月8日(月)18:34~19:12
2場所永田町合同庁舎7階特別会議室
3出席
<WG委員>
委員原英史株式会社政策工房代表取締役社長
委員本間正義東京大学大学院農学生命科学研究科教授
委員八代尚宏国際基督教大学教養学部客員教授昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授
<関係省庁

北山浩士文部科学省高等教育局専門教育課長
牧野美穂文部科学省高等教育局専門教育課長補佐
藁田純農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長
大石明子農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長補佐
國分玲子農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長補佐
<事務局>
富屋誠一郎内閣府 地方創生推進室長代理
藤原豊内閣府 地方創生推進室次長
宇野善昌内閣府 地方創生推進室参事官
富田育稔内閣府地方創生推進室参事官
(議事次第)
1開会
2議事
国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)
3閉会
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf


「日本再興戦略」改訂2015
-未来への投資・生産性革命-
(新たに講ずべき具体的施策)
平成27年6月30日閣議決定
参考資料2
科学技術・学術審議会
総合政策特別委員会
(第10回)H27.8.31
関連部分抜粋
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/02/1361479_14.pdf

国家戦略特区ワーキンググループヒアリング(議事要旨)
(開催要領)
1日時平成28年 9月16日( 金)14:12~14:34
2場所永田町合同庁舎7階特別会議室
3出席
<WG委員>
座長八田達夫アジア成長研究所所長大阪大学社会経済研究所招聘教授
委員原英史株式会社政策工房代表取締役社長
委員本間正義東京大学大学院農学生命科学研究科教授
委員八代尚宏昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授
<関係省庁>
浅野敦行文部科学省高等教育局専門教育課長
辻直人文部科学省高等教育局専門教育課長補佐
磯貝保農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長
大石明子農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長補佐
<事務局>
藤原豊内閣府 地方創生推進事務局審議官
(議事次第)
1開会
2議事
獣医学部の新設
3閉会
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf
国家戦略特区ワーキンググループ 提案に関するヒアリング (Unknown)
2017-06-20 16:03:17
平成27年6月5日愛媛県・今治市
国際水準の獣医学教育特区
提案書(PDF形式:101KB)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/150605imabari_shiryou03.pdf
配布資料(PDF形式:1,486KB)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/150605imabari_shiryou02.pdf
議事要旨(PDF形式:232KB)
議事 国際水準の獣医学教育特区
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/150605_gijiyoushi_01.pdf
(12月10日)
追加提案資料(PDF形式:460KB)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/150605imabari_shiryou01.pdf
議事要旨(PDF形式:228KB)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/151210_gijiyoushi_02.pdf

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