崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

死者の人格

2008年03月23日 07時06分39秒 | エッセイ
 昨日沖縄大学で1975年3月29日に撮った洗骨葬の写真を初公開した。反応は良かった。しかし洗骨葬を撮ることについて私の古い友人ともいえる沖縄大学の比嘉正夫氏が写真を撮ることを問題にした。彼は私より一年早く見たが撮らなかったという倫理を強調した。つまり1974年に洗骨それを見たがプライベートなものであり、死者には失礼と思い撮らなかったという。これはカメラの暴力とか、なぜ外部の人が沖縄をとるかというオキナワ人の象徴する問題点を引き起こして激論となった。結局マイクが私に回ってきた。私は「死者の人格」から肖像権を考える上では貴重なコメントではあるが、その論理を尊重すれば、極端にいうと「食事の場面」さえも撮れないのではないか反論をした。根本的な議論が盛り上がって良かった。死や命を含めて考える場にもなった。今日は復活節であり、死者の人格も考えてよいのではないだろうか。

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2 コメント

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復活祭のメッセージ (鍬野保雄)
2008-03-23 23:15:24
死者の人格、難しいテーマに思えます。
殺されていった死者の人格は殺人罪で償われるのでしょうか。その犯人が捕まらないとすればどうやれば償われるのでしょう?
死者の人格とは?生きている私達は常に問われているのではないでしょうか。
「天に恥ずかしくないように生きたい」とうたった尹東柱の詩を思い出しました。昨日福岡市の朗読会で聴くチャンスがあり幸運でした。
今日のエッセーは復活祭へのメッセージとしても読みました。
Unknown (barrett_hutter)
2008-03-25 07:41:53
日本国憲法第20条では、
1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
とされており、それに対して宗教的として死者の人格権を争った訴訟として、所謂自衛官靖国合祀事件があります。これは、自衛官の遺族が公務中に死亡した自衛官を靖国神社が合祀したことを不服として、死者の宗教的人格権を主張し、合祀の取り消しと信仰生活の静謐をそこなったとして損害賠償を請求した事件です。しかし、日本の最高裁判所はこのような死者の宗教的人格権を否定する判決をすでに昭和63年に出しており、このような死者の宗教的人格権を法的利益として認めることはできないとしております。私はこの判決は窮めて妥当であり、納得のいくものだと考えております。

私のみるところ、韓国のように宗教的人格権を認めてしまうと、真面目な学術研究として歴史上の人物を研究した場合でも、民族的情緒に反した研究結果に対して遺族が宗教的人格権を元に名誉毀損を訴えるケースが多々見られ、正常な歴史学の研究を阻害している例があまりにも多くみられます。このような現象は、近代法理の精神にある意味反していると私は考えており、前近代的な宗族社会特有の悪弊だと思います。このような連座制にも似た悪弊はむしろ積極的に否定するべきであり、それを「死者の人格も考えてよいのではないだろうか」などというのは、韓国人特有のナイーブさの表れではないでしょうか。この点、崔さんのご意見には、賛同致しかねます。

なお、念のため、有斐閣の判例六法から、判例要旨を抜き出して以下に提示しておきます。

何人かをその信仰の対象とし、あるいは自己の信仰する宗教により何人かを追慕し、その魂の安らぎを求めるなどの宗教的行為をする自由はだれにでも保障されているから、 静謐[せいひつ]な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益を宗教的人格権として法的な利益と認めることはできない。 (最大判昭63・6・1民集四二・五・二七七 〈自衛官合祀事件〉 憲百選Ⅰ[四版]四九)

人が自己の信仰生活の 静謐[せいひつ]を他者の宗教上の行為によって害され、そのことに不快の感情を持ったとしても、このような静謐な環境の下で信仰生活を送るべき利益は、直ちに法的保護に値する利益とはいえず、これに基づいて損害賠償や差止めを請求することはできない。 (最大判昭63・6・1民集四二・五・二七七 〈自衛官合祀事件〉 憲百選Ⅰ[四版]四九 ……伊藤裁判官の反対意見がある )

信教の自由の保障は、何人も自己の信仰と相いれない信仰を持つ者の信仰に基づく行為に対して、それが自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であるべきことを要請しており、宗教的人格権なるものは法的利益として認めることができない。 (最大判昭63・6・1)

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