崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「人間の絆」(Of Human Bondage)

2015年12月05日 06時15分05秒 | 旅行
手術後初めてのお風呂は緊張と弛緩の一時であった。鏡に写る傷口は敢えて見なかった。以前は手術したところは糸で縫合されたが、今では外科用のボンドで接着しており、糸を抜く過程はなくて済んだ。ボンドといえば壊れた磁器をくっつけるのに使うが、人の皮膚もくっつけるとは想像もしなかった。英語のボンドは「束縛」の意味であるが、同じに「絆」とも言われる。このたび私は入院と退院などで数百人の知人友人読者などを通して広く「絆」を感じとても感謝している。
 「絆」というとサマーセット・モームの「人間の絆」(Of Human Bondage)を思い出す。Bondageは束縛とも訳される。韓国語訳では牛の首環굴레になっている。人は愛犬にリードをする。恋人に戸籍の輪をかけ妻にする。つまり束縛のある、そしてネットワーク社会を作っているのである。自由から束縛へ、自尊心のある自身が頭を下げて人を尊敬する、服従するような人権思想とは逆行する自由からの逃避の現象が起こっている。そこに甘え、謙遜の本当の意味があるのである。人を愛することや尊敬することを知らない自由な人、放蕩な人の行く道は孤独死に至る。