崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「楽園の島」ハワイ

2015年04月26日 05時21分00秒 | 旅行
日韓関係がよくなっていく時には在日朝鮮韓国人の中には差別から抜け出たのように韓国人という自尊心を持つようになり、中には通名より本名の韓国式の名前を宣言する人も多かった。そして韓国語や韓国文化をよく知らない韓国人が多くなり、私のような韓国からのニューカマーと混同されることもあった。しかし最近日韓関係が悪く、ヘイトスピーチなどの状況においては本名宣言を後悔している人もいるという。私も日韓の橋渡し役と言われてきたがその立場が混迷状況のようになった。研究結果を表現すことさえ自由ではないことを感じている。こんな状況を打開するためにはもう一回冬ソナが必要だと冗談で言っていたら本当に続編が作られるという。
 
湖畔に夕焼けが映り始めた。ユージンとチュンサンは、手をしっかり握って夕陽が沈んでいく湖を眺めた。チュンサンは静かに口を開いた。「とてもきれいだろう?」「あなた、見えるの?」「いや、感じられるんだ。本当に美しいものは、見えなくても感じられるんだよ。君の姿がどんなに美しいか、僕には見える」。チュンサンはゆっくりユージンを抱きしめてささやいた。「僕たち、幸せになろう」。さわやかな初夏のある日、ユージンとチュンサンは湖畔で結婚式を挙げた。
 
 旧友白水繁彦氏を思い出す。私がほとんど日本語が理解できなかった時代にほんとに、ほんとに大変お世話になった人である。彼が下関のわが家に尋ねて来た時、私に英語で話したことがきっかけになりアメリカ留学もできたと、意外にも感謝の言葉をいただいた。先日彼が編集した『ハワイにおけるアイデンティティ表象』(御茶ノ水書房)が届いた。在日の方々にも読んでもらいたい“自分たちの表しかた”マイノリティの自己規定と他者規定、そしてその表象の話である。研究書でありながらスラスラ読める語りかけるような文章に引き込まれる。ハワイでは多くの民族がそれぞれ民族性を忘れるか、思い起こすか、平和に共存するハワイ、やはり「楽園の島」である。日韓もきっとそうなるだろう。