崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

ストレンジャー

2015年04月04日 05時08分49秒 | 旅行
 韓国のシャーマニズム研究者である日本人浮葉正親教授から『異人論とは何か』(山泰幸・小松和彦編)が届いた。異人論は日本民俗学では古い説の一つであり、小松和彦教授によって深められてきた。伝統的な村、村落社会に現れるストレンジャーの存在である。同質社会で異人は妖怪であり、怖い破壊者のような存在であった。しかし都市化や国際化によってストレンジャーによって村という共同体が壊れていく。今ではストレンジャーの中から村人を探すくらい変わっている。私はなわばりの強い日本にストレンジャーのように住み始め30年弱である。他の異質な多民族国に比べて日本はまだ村落社会のように感ずる。私も日本に同質化、同化されてストレンジャーと向き合っている。本書は異なった分野の研究者の研究成果を集めたものである。浮葉氏の論文には私の青春時代の論文なども引用されていて懐かしく、嬉しい。
 昨日西日本新聞の平原奈央子記者が研究室に訪ねてこられた。彼女は最近韓国全羅南道の有名な作家の紹介を連載しており、その方と私の関係、人脈に関する質問があった。私の研究は文学から始まったことを話すと驚く表情をした。彼女は今話題になっている植民地研究者としか知らなかったようである。上述の浮葉氏が書いたようなシャーマニズムの話になった。しかし私から彼女はなぜ韓国に関心を持って作家たちを取材しているか逆質問をした。九大の朝鮮史出の方々をはじめ、多くの人脈の話、取材ではない歓談であった。楽しい時間を共有しながら私はアジア向けの福岡の繁栄が羨ましく、下関の衰退は反省すべきと思った。