崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

楽園と地獄の交差

2013年11月12日 04時36分11秒 | エッセイ
 フィリピンで台風30号(ヘイアン)による死者が1万になるという。映像、写真、記事などで悲惨な状況をみながら地獄のように感じている。一般的に「南国」は映画「南太平洋」などが描いているような楽園のイメージがある。調査旅行の準備のために昨日1933年日本海軍省作「海の生命線」を鑑賞した。フィリピンの東の海に点綴する島々、古くはスペインに占拠され、後にドイツ、アメリカへ、そして日本の委任統治の南洋群島、特にパラオ島の原住民と日本統治が生き生きと描かれている。当時の日本人の南国へのロマンスと侵略(?)が交差する70分余の映像である。ほぼ全裸で椰子と音楽と踊りなどが撮されており、ロマンスと野蛮(?)が交差するような映像である。日本統治以前から西洋帝国主義者が新天地を求めるフロンティア、ロマンスと侵略が交差する地域であった。
 この群島に世界第二次世界大戦により悲惨な戦争と被害をもたらしたのは今は昔近い歴史である。数年前フィリピンでスペイン植民地と戦って独立運動して処刑された医者ホセ・リサール(Jose Rizal)について資料を集めたことがある。人が多く、果物が美味しく、南国のロマンスを感じていたが、ホテルや百貨店の入り口に武装軍人にボディチェクされて驚き唖然とした。南国のロマンと脅威が交差する時であった。アキノ氏に代表されるような民主化で有名になった国とは思えない。その国に超大型台風が襲った。ただただ祈るだけである。私が持っている南国のイメージは虚像に過ぎない。楽園と地獄が交差するような地域である。地球上にはそのような地域がまだ多い。(the photos above from New York Times)