崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

追認賞

2012年01月26日 05時31分31秒 | エッセイ
 山口県は「スポーツ・文化特別褒賞」の第1号に芥川賞に決まった下関市の田中慎弥さんに決めたと発表した。祝賀を賞にすることであろう。賞の趣旨はいろいろである。中国がノーベル賞に対立する「孔子賞」を発表したり、あるいは賞金作りの余裕のある人が自分の栄誉のために作ったものもある。社会的に悪くはないだろうが、趣旨を考えてみてほしい。
 芥川賞の祝賀パーティ代わりに賞を上げるような「追認賞」的なものはどうであろうか。地域が早く人の存在を認めてから都会が認めてくれるような地方自主的なことが欠如している。イエスも故郷では認められなかった。地元ではやきもちや嫉妬などのため人が地元を捨てて出るようになり都会で成功すると地元が歓迎するような構造は昔も今も変わっていない。下関を嫌な社会として描がいた作家や監督がただ地元出身だということで喜ぶのはどうなのだろうか。「地元出身褒めあげ」も考えなおすべきであろう。ある人は家族からも信頼されず、家出をする。しかし成功するとその家族が栄光を叫ぶのと同じ論理である。栄光は戻せるかもしれないが、愛情はとり戻せない。お互いに近い人を愛し、親しい人を信頼し、また信頼される社会を作るべきである。