崔吉城との対話

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書評『戦争を論ずる』

2011年08月20日 06時12分49秒 | エッセイ
 昨日は韓国の学会誌に論文を投稿し、大学の紀要に掲載した書評『戦争を論ずる』が届いた。マイケル・ウォルツァー著、駒村圭吾・鈴木正彦・松元雅和訳を読んで書評を書いたものである。本欄でも以前に言及したことがある。戦争を「正しい」といい、公に論じるのは難しい。私は一般的な平和運動主義者たちに恐怖感を感じながら本当の平和を考えており、この本を選んだのである。戦争論者は怖いが、平和論者はより怖いという私の「真の平和主義」によって珍しい戦争論を読んだのである。
 著者は戦争が最終手段であり、無辜な人々を殺さないための防衛戦など「正しい戦争」もあると主張している。未来学者のトフラーは将来には武器だけを破壊し、兵士も殺さない戦争が可能になろうという。虐殺や人権侵害などを防ぐために戦争は正当であるというのがアメリカなど西欧の価値観であろう。日本は子供の虐待には憤慨しても他国での人権にはよく沈黙しているのとは対照的ある。それよりも私はウォルツァーが戦争を正当化するために人道、人権を主張するようなことに反論したい。もう一つはテロを戦争と定義しながらテロについては国際政治に任せる無力な論理には失望した。無辜な大衆を殺すテロにももっと誠意のある書き方を願っている。