崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

車内美談

2010年02月07日 05時32分18秒 | エッセイ
 韓国から来て下関に住んで半年の家族との送別会があった。母と子供たちが小旅行をした時、姉弟の小学生の母親は日本では電車内では静かにするようにと子供たちに注意をしていたが、男の子が母の隣席のお爺さんに自分たちが食べていたチョコレートを分けて上げたそうである。それから子供たちとの会話が始まり、静かな電車の中での子供たちの声に母親は困ったという。そのお爺さんは子供たちに100円づつチョコレートのお返しをしたという。母親は日本で他人に失礼なことをしたと思って子供にそれはもらわないようにとサインをした。お爺さんは母親のサインに戸惑っている子供たちに「ママが怒る前に早く」といい、結局子供がもらったという。その若奥さんと子供からこれは悪かったのではないかと聞かれた。
 私は日韓関係の大きい文化交流として微笑をしていた。日本ではプライバシーとか迷惑などといってこのような美談は聞けない社会になっている。この話さえ迷惑と思う人は多いだろう。私は韓国の電車の中で私の靴の紐が解けていたのを見つけた若い夫人が結んでくれたことを今でもありがたく覚えている。韓国では人への思いやりや人情を大事にする。そのようなことを聞く日本人は日本でもあった古いもの(古臭い)と思うだろう。しかし私は非常に大事なことと思っている。私は古いものかもしれない。