画著作〈C〉永野宏三
地域にある市民センターのスタッフの人にぼくが描いた門司区錦町にある昭和初期頃の建造だと思われる木造三階建ての絵をを描いた絵を見せると、「この家はもうありませんよ」と云う。ぼくは「えっ」と、つい声をあげてしまった。
そういえば、数日前にこの建物がある路地を歩いていたら、いつもの散策コースである三階建ての家の道路に行きあたらない。なにぶんあたりは狭い路地が幾重にあるので道をまちがえたのかなと思っていた。ぼくはこの三階建ての家を絵にしているにもである。
門司港の町はこの数年古い家が壊されてきている。原因は世代交代のせいでもあるだろうとはわかっているけど、見慣れた町の風景がかわっていくのは独りよがりであるけれど寂しいものである。散歩していたこの時分にこの三階建ての家はすでに消えてなくなっていたのである。ぼくの曖昧な記憶の中でミステリアスな楼閣になってたのだ。
いつか見た町、消えた街角.記憶している当たり前の風景といまの風景の視覚の差は頭の中に収納されている風景の思いは、町の歴史の事情はともかくぼくのこころの中で葛藤するのである。
路地にあったありしびの景色を頭に描くことにより空想することで、好きなこの町の通りを歩いていた。