永野宏三のデザイン館&童画館  アート日和のできごと

イスラエル国立美術館、ミュンヘン国立応用美術館、国立国会図書館、武蔵野美術大学美術館図書館他に永野宏三の主な作品が収蔵。

門司港。港町の匂い。

2011-03-10 10:13:35 | 日記・エッセイ・コラム
“忘却”の中にあって、記憶の種を蒔こうとすると、忘却はさまざまな形で身を潜めているものです。
時が刻々と過ぎゆく時は、忘却は灰の中にかすみ、記憶の形の輪郭がぼやけて見える時があります。
門司港・港町の匂いは、忘却の中の記憶に今も留まっています。海峡の匂い。船の匂い。ディーゼル・エンジンの匂い。鉄道の匂い。倉庫の匂い。それは、ひょっとしたら風にも流されるような匂いかもしれません。
明治・大正期の国際港湾都市としての性格をもって、日本の近代化過程の側面を物語る港町の姿であり、経済発展のための機能だけを持った都市としての一時代の偽りの姿であったのかもしれません。時代、時代に築かれた港・鉄道・倉庫は、今の時代には遠い時代の思いが匂いとなってかすかに残されていますが、町の様子は少しづつかたちを変えてニュートラルで味気のない希薄で現代的な匂いに変わってきています。
このブログで以前に書き込みしましたが、東港の倉庫街は形を少しづつ崩し、匂いさえ消えつつあります。つい数年前までは保税倉庫からの小麦粉の匂いがあたりの町の特徴を出していました。でも、消しても消せない痕跡。それは忘却の中の記憶の匂いだと思います。


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倉庫内には入ってはいけません。火気厳禁。〈C〉永野宏三・ひろみプロ