永野宏三のデザイン館&童画館  アート日和のできごと

イスラエル国立美術館、ミュンヘン国立応用美術館、国立国会図書館、武蔵野美術大学美術館図書館他に永野宏三の主な作品が収蔵。

デザインの思想。かたちの思想。

2009-11-15 07:06:21 | 日記・エッセイ・コラム
小さなニュースで佐賀の陶磁器デザイナーの森正洋さんが五年前に他界されていたことを知り驚く。ぼくがデザインの道に進んだころ、銀座松屋のデザインコーナーで森さんの食器などのデザインをはじめて目にした時、同じデザインでも平面と立体の違いがあり分野も違う(その頃、ぼくのデザイン意識は他のデザイン分野と線を引いていた)のだが、森さんの食器デザインは他の食器とは違っていて、食器の表面をデコラティブにデザインするという思想ではなく、食器を使う人の立場に考えてデザインされた機能性のある思想を持ったデザインだつたのである。器のカーブ・把手などが全て機能性からつくられたものであり、それがデザインになっていたのである。ぼくはデザインの仕事をはじめたばかりで、かたちや色彩の構成ばかりが頭にあって、森さんの器に「これがデザインというものだ」と、頭にガァーンと啓示みたいなものが落ちてきたような気がした。その後、森さんのお仕事はデザイン関係の本などで意識して情報収集していた。森さんは地道にデザインを追求してこられた方で、よくデザイナーにありがちな派手さは表には出されない。むしろストイックに佐賀という地方都市でデザインをつくっておられたと思う。森さんのデザインは機能性からくるモダンなかたちとなって独自の世界をつくっていたが、それはドイツやデンマークなどのデザイン思想に繋がっているような気がする。