永野宏三のデザイン館&童画館  アート日和のできごと

イスラエル国立美術館、ミュンヘン国立応用美術館、国立国会図書館、武蔵野美術大学美術館図書館他に永野宏三の主な作品が収蔵。

昭和30年代のリアリティ。

2009-11-09 09:53:03 | 日記・エッセイ・コラム
テレビで松本清張原作「点と線」再放送を見る。解説付きバージョンもありあらためて見ごたえあり。小説は何度も読んだけれど、テレビは鳥飼刑事のプロ意識による捜査を原作に忠実に表現されている。鳥飼刑事役のビートたけしさんの寡黙な演技は引き付けるけれど、小説中の鳥飼刑事とはあとひとつ泥臭さが感じられない。自宅で酒を呑みながら捜査のことを考える場面でも、映像ではちゃぶ台や畳の部屋などで当時の生活感は表現されているけれど、清張さん文学の真骨頂である平凡な市民の生活感があとひとつ物足りない。小説中でのそういう場面は活字だけで生活臭さが妙にリアルに伝わってくる。
それにしても原作は、新幹線とか交通手段や情報手段が今みたいにまだまだ発達していない1957年という遠い昔の作品なのに、タイトルの「点と線」というイメージからして、鳥飼刑事がひとつひとつ点を追って押さえ線に繋げていく様は現代のインターネット社会を予感させる。