痙性斜頸と闘う友よ!

従来の同名の掲示板をブログにしてみました。従来の掲示板へのアクセスは一番最初の記事からお願いします。

グラクソ・スミスクライン、脳卒中などの後遺症の痙縮に対する治療であるボツリヌス療法の実際を解説

2012年05月10日 20時29分05秒 | 情報
グラクソ・スミスクラインは、A型ボツリヌス毒素製剤「ボトックス」について2010年10月に「上肢痙縮(じょうしけいしゅく)、下肢痙縮(かしけいしゅく)」治療への適用承認を取得した。
以来、市販後の治療症例が蓄積され、全国で治療実施施設も増加してきたことから、治療の実際について解説するメディアセミナーを5月9日に開催した。セミナーでは、東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座 主任教授の安保雅博先生が、動画などを交えながら、痙縮に対するボツリヌス療法の実際について説明した。
 
「当社は、A型ボツリヌス毒素製剤『ボトックス』の認証を、上肢痙縮、下肢痙縮ともに2010年10月に取得した。『ボトックス』は、つっぱりやこわばりのある筋肉に注射し、筋肉の緊張をやわらげる。ボツリヌス菌が作り出す天然たんぱく質を有効成分としており、世界80ヵ国以上で認められ、広く使用されている」と、グラクソ・スミスクライン ボトックスマーケティング部の中川恒司氏。
 「薬価基準収載品、保険適応であり、保険医療で治療が可能だ。ただし、薬剤費が3割負担であっても、上肢痙縮で約7万円、下肢痙縮で約8万3000円と高額だ」と、患者の費用負担が大きいのがネックであるという。
「そこで医療助成制度が適用され、70歳以上や障害者手帳1~2級受給者は原則1割負担となる」と、広く投与可能な状況が作られつつあるようだ。
「効果は3~4ヵ月持続する」とのこと。「上肢痙縮の投与量は合計240単位を上限し、下肢痙縮は合計300単位を上限とする」と、1回で投与できる量が決まっているため、分割しているのが実状だ。
「『ボトックス』を安全に使用してもらうために、現在は講習および実技セミナーを受講した医師のみ用いることができる薬剤となっている」と、承認条件がある点も「ボトックス」の特長であると中川氏は話していた。
 
そして、東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座の安保雅博先生が、「痙縮に対するボツリヌス療法の実際」と題した講演を行った。
「脳卒中は死因の第3位で、寝たきりの原因疾患の第1位となっている。脳卒中死亡率は減少したが、後遺症患者数は増加している」と、治療法が進み、死に至る人が減ったものの、後遺症は残るという現状があるようだ。
「脳卒中の上肢機能障害では、片手が使えない状態で退院し、自宅療法に切り替わる患者が大部分」と話していた。
「この片手が使えないのは痙縮(けいしゅく)という筋肉のつっぱりがあるため。これをリハビリでよくする必要がある」と、動かす訓練を行うことが大切になってくるという。「訓練をしやすくするために使われるのが、ボツリヌス毒素になる」と、ボツリヌス毒素を何のために使うかを解説してくれた。
 「ボツリヌス毒素とは、ボツリヌス菌により生成されるA型ボツリヌス毒素を有効成分としたもの。末梢の神経筋接合部における神経筋伝達物質のアセチルコリンの放出を阻害することで、筋弛緩作用を示す」と、ボツリヌス毒素の概要を説明。「毒素といっても、ヒトに対する致死量は、経口摂取では数十万単位、筋肉内注射では数千単位とされているので、いたって安全だ」と、危険なものではないと安保先生は強調する。
 「ボツリヌス毒素を投与すると、筋肉がやわらかくなる。これによってリハビリがしやすくなる」と、ボツリヌス毒素を投与する意味を説明。「手関節、手指関節の痙縮の改善効果が見られ、日常生活動作について反復投与するとさらなる改善効果も期待できた」と、ボツリヌス毒素を投与すると痙縮がよくなることがわかったと述べていた。
 「しかし、ボツリヌス毒素を投与するだけで痙縮が完全に改善されるというわけではない。リハビリを併用して行うことが重要だ」と、ボツリヌス毒素はリハビリをサポートする薬剤として活用して欲しいと訴える。
「ボツリヌス毒素の投与に、簡単な自主トレ指導を加えるだけでで、上肢近位部については受動的動作のみならず、能動的動作の改善をもたらすことができそうである」ことが確認できたという。「しかしながら、上肢遠位部については、より重点的なリハビリを行わないと、能動的動作の改善は期待しにくい」ことも明らかになったようだ。
 「ボツリヌス毒素を、リハビリに先立って投与することで、リハビリの効果が大きくなる。つまり従来の"治療の壁・限界"を克服することができる可能性が示唆された。ボツリヌス毒素をリハビリに対するpre-conditioningと位置づけることも可能だ」と、ボツリヌス毒素の投与が上肢痙縮に悩む患者の希望になると考える。「だからこそ、適用をしっかり見定めて、目的をもってボツリヌス毒素を投与して欲しい」と、どんな作用があり、投与後どんなことに取り組むべきかをしっかり理解した上で活用して欲しいと安保先生は呼びかけていた。
グラクソ・スミスクライン
患者向け情報サイト