◆シーズの設定
236:【デザインのコツ・デザインのツボ100連発!】第36発 商品企画
こんにちは!「工業デザイン相談室」の木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。
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このところ、ブログ関連で2つうれしいことがありました。一つは、二十年近くご無沙汰だった知人が、ブログを通して連絡をくれたこと。そして、もう一つは、十年くらいご無沙汰していた知人から、このブログを知り合いの中小企業に紹介したよとメールをくれたこと。今度、その中小企業の社長さんとお会いすることになりそうです。
いや、ブログっていいですねえ。頑張って続けますよ。
さて、今、中小企業振興公社主催の「ものづくりデザイン道場」で講師を勤めています。私の担当は「デザインの心・技・体」の「技」、コンセプト作りですので、講義の内容の詰めもかねて、しばらく商品コンセプトの話をしていこうと思います。商品コンセプトは、次の10項目が一般的です。
1) 商品の存在理由 (なぜ、今必要なのか?)
2) 差異化要因 (今までの製品とどこが違うのか?)
3) ターゲット設定 (誰がどこで買い、誰が使うのか?)
4) ニーズ設定 (使う人が求める機能は何か?)
5) シーン設定 (だれがいつどこでどう使うのか?)
6) 企業理念の確認 (なぜ、作るのか?)
7) シーズ設定 (どのように作るのか?)
8) 販売ルート設定 (どのように売るのか?)
9) 商品構成 (どのような商品にするのか?)
10)デザインコンセプト (どのようなイメージにするのか?)
今回は、「シーズ設定 (どのように作るのか?)」です。
■自社の技術でできること
「どのように作るか」というのは、次の三つの方法があると思います。
1)自社の技術で作る
2)新しい技術を開発する
3)パートナーを探す
「自社の技術で作る」というのは当たり前のことかもしれませんが、以前「コア・コンピタンス」のところで説明したように、「何が得意で、それを生かして、これからどういう方針で経営していくのか」ということです。当たり前のことのようですが、意外と明確になっていないことがあるみたいです。
自社が得意なことはなんなのか、まずはっきりさせることも大切なことです。
コンセプトをどう作り上げていったらいいか、悩んでいる場合は、まず自社の「シーズ」を見極めて、それを基準に残りの9個のコンセプトを作り上げていくという方法もあります。
ある熊本県の小さな企業の例をあげてみましょう。
その企業は、金属を曲げる機械しか持っていない小さな企業だったそうです。熊本県はユニバーサルデザインでの地元企業の活性化を推進しており、その企業に対して、工業デザイナーと組んで、ある提案をしました。
曲げ加工だけでできる車椅子用のスロープを作ってみたらどうか?
その結果、大企業の下請けにしか過ぎなかったその会社は、車椅子用のスロープというオリジナル商品を開発することにより、それまでの数十倍の利益を上げられるようになったそうです。今では九州地方の「車椅子用のスロープ」市場の大手になり、本州進出を狙っているそうです。
■新しい技術を開発する
「新しい技術を開発する」のは、なかなか難しいことです。商品の存在理由(なぜ、今必要なのか?)のとき例に挙げたミニクーパーは、その典型的な例です。
ミニクーパーは、革新的な設計思想を持つ、自動車工学の奇跡と言える画期的なスモールカーでした。FFをはじめその設計思想はそのまま、現代でも日本メーカーの小型車に受け継がれています。
小型化のための
1)モノコックボディ
2)史上初のFFの開発
(横置きエンジンをミッションと二階建て)
安定性と重心の低下のための
3)四隅ギリギリのタイヤレイアウト
4)四輪独立懸架サスペンション
5)十インチホイールタイヤの開発
設計者のアレック・イシゴニスは、天才だとたたえられています。
それでも、「小さなボディと大人四人と荷物が納まるエコノミーカー」という「コンセプト・商品の存在理由」がなければ、ミニクーパーは生まれてくることはありませんでした。
もし、誰もが納得するような素晴らしい「商品の存在理由」や「差異化要因」や「ターゲット」や「ニーズ」や「シーン」を発想することができ、それを実現することでエンドユーザーのベネフィットが確実に向上するということが確信できたのなら、新しい技術開発への挑戦は行うべきでしょう。
■パートナーを探す
そうは言いながら、新技術の開発には時間がかかります。普遍的なコンセプトだから開発にいくら時間を掛けてもいいとは言っても、物理的、経済的に時間は限られてしまいます。
そんなときは、差異化要因2(今までの製品とどこが違うのか?)で書いたように、求める技術に近い技術を持っている企業と組むという手もあります。
差異化要因2でご紹介したように、「テプラ」は、ブラザーの電子技術と、キングジムの文具流通が結びついて、完成した製品です。
テプラは、キングジムがこんな商品があったらいいと発案した商品です。しかし、キングジムは文具メーカーですので、電子技術を持っていませんでした。そこで、その技術を持ったブラザーと組むことにより「テプラ」は、誕生しました。
ブラザーとキングジムの橋渡しには、工業デザイン事務所が関与したといわれています。先の車椅子スロープの開発では、熊本県と組んだ工業デザイナーの力に負うところが多かったと聞いています。
もし、コア・コンピタンスとなる技術や、素晴らしい製品のアイデアを持っていたら、行政やデザイナーに声をかけ、コンセプトの立案やパートナー探しというような解決の手段を相談することも一つの方法だと思います。
デザインのコツツボですので、企画の話よりも、デザイン実務の話を中心に進めていたのですが、やはり、企画の話は避けて通れないみたいです。しばらく、企画寄りの話をしていきます。
でも、極力デザイン実務に近いところから攻めていこうと思っています。
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