ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

法学(法律学)ノート(2):法体系

2014年11月06日 00時00分14秒 | 法学(法律学)ノート

 一口に法と言っても様々なものがある。手元の六法を開けば、最初に日本国憲法が掲載されており、それから多くの法律や条約など掲載されていることであろう。例えば、三省堂の『デイリー六法』平成27年版には234件の法令が掲載されており(但し、一部のみが掲載されているものもある)、憲法、法律はもとより、会社法施行規則(法務省令)、最高裁判所裁判事務処理規則(最高裁判所規則)なども掲載されている。また、私が仕事で使用する税務六法や自治六法(どちらもぎょうせい刊行)には、政令、総務省令、財務省令も多く掲載されている。

 これだけ多くの数、そして種類の法が存在すると、気が遠くなるかもしれない。しかし、少なくとも、国内法は、それぞれが単独に、バラバラに存在するのではなく、一つの体系(システム)として存在するし、そうでなければならない。

 (1) 法源

 法の存在形態に着目した言葉で、裁判の権威を正当化するものとして認められる一般的規準の存在形式を指す、という説明もあり《佐藤幸治・鈴木茂嗣・田中成明・前田達明『法律学概論』(有斐閣、1994年)204頁[田中成明執筆]》、法がどのような現象形態かを示す言葉と説明されることもある《三ヶ月章『法学入門』(弘文堂、1982年)210頁》

 [1]成文法

 制定法ともいう。簡単に言えば、法が文書の形において示されているというものである。厳格に定義するならば、国家機関が一定の形式および手続に従って制定し、公布し、施行する、文書の形における法のことである(日本国憲法第7条・第41条・第59条・第72条・第73条第6号・第74条・第95条、その他、国会法、内閣法、国家行政組織法を参照)。

 日本、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ大陸法系諸国においては、制定法主義を採るし、判例法主義の英米法系諸国においても、成文法が判例法に優越する。

 成文法の長所としては、次の点をあげることができる。

 ・法の存在形式として明確であり、安定している。社会が発展し、複雑化すればするほど、この長所が要請されてくる。

 ・成文法は、慣習法などに比べて普遍性が高い。慣習法の場合、人的適用範囲や場所的適用範囲については普遍的でない場合がありうる。

 ・「計画的に制定され、内容も体系的・論理的に整除されて」いることをあげる例もある《佐藤・鈴木・田中・前田[田中]・前掲書205頁》。そのような傾向を有することは肯定できるが、必ずしもその通りであるとは限らない(政治的な駆け引きの産物たりうるからである)。

 他方、成文法の短所として、次の点を上げることができる。

 ・規定の仕方が抽象的である。法の存在形式としては確かに明確であるが、具体的内容が不確定であったり煩雑であったりする。もっとも、慣習法や判例法では、そもそもさらに抽象的であったり具体的な内容が不確定ということもありうる。

 ・改正が容易ではない。そのため、社会の変動・発展に即応するだけの弾力性に欠ける。

 [2]不文法

 簡単に言えば、成文法でないものを不文法という。もう少し丁寧に記すならば、国家機関が制定・公布・施行したものではない法のことである。文書の形で存在しないことが多いので、不文法という訳である。

 不文法とされる法には、次に掲げるものがある。

 ①慣習法

 事実たる慣習(例えば祝儀)があり、これが社会成員が自らの行動を正当化するための理由あるいは他人の行動に対する要求とか非難などの理由として用い、相互の行動・関係を規制しあうようになり、かつ、国家がこの慣習を法として認めることが、慣習法成立(あるいは確認)のための要件となる。

 法の適用に関する通則法第3条は「法律と同一の効力を有する慣習」という見出しの下に「公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する。」と定める。ここから明らかであるように、事実たる慣習が国の法令に反したり、公序良俗(民法第90条を参照)に反する場合には、慣習法としての効力は認められない。例えば、村八分は刑法第222条に違反し、脅迫罪が成立する(大判大正13年11月26日刑集3巻831頁)。

 他方、民法第236条(相隣関係。同第234条・第235条を参照)、同第263条・第294条(入会権)は、慣習法による補充を認めており、民法に規定がない農業水利権や温泉権や譲渡担保も、慣習法として成文法と同等の法源として認められる。また、商法第1条第2項は「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)の定めるところによる。」と規定する。

 ②判例法

 或る事件に対して、一定の内容の判決が出された場合、その判決で示された一般的基準が先例として規範化され、その後の同種の事件においても同内容の判決が下されるようになる。これが繰り返されることにより、先例としての機能がさらに明確になる。これが判例法(裁判官法ともいう)である。

 英米法系の国は、判例法主義を採るため、判例は非常に重要である。しかし、日本などの大陸法系諸国においても判例の意義は小さくない。

 日本においては、裁判所法第4条により、判例の先例としての拘束力が制度的に保障されてはいない(「その事件について下級審の裁判所を拘束する」程度にすぎない)。しかし、同第10条第3号は「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき」には最高裁判所大法廷において裁判を行う旨を定めている。また、刑事訴訟法第405条第2号は、高等裁判所の下した判決が最高裁判所の判例に違背する場合を上告理由として認めている〔同第3号も参照。同じ趣旨の規定として、民事訴訟法第312条および民事訴訟規則第190条以下(とくに第192条)がある〕。判例法が存在することにより、成文法の具体的な内容が明らかになったり、慣習法の存在が確認されるという利点もあるし、法的安定性などの確保、さらには訴訟経済の点においても意義がある。

 判例となりうる判決は、主に最高裁判所、大審院、高等裁判所(最終審の場合)が下したものである(但し、これらに限られない)。

 英米法では、ratio decidendi(判決理由の中で、具体的事件の解決に必要かつ十分な範囲での法的争点についての判断)とobiter dictum(事件の解決には直接的に関係しない裁判官の説示部分)とを分け、 ratio decidendiにのみ先例的拘束力を認める。しかし、日本においては、このような区分はなされていない。

 ◎応用問題1:通達(国家行政組織法第14条第2項)は慣習法たりうるか?

 通達とは、上級行政機関が法律の解釈などに関して下級行政機関に対して行うものである。行政命令の一種とも考えられ《新井隆一編『行政法』(青林書院、1992年)22頁[首藤重幸執筆]。実質的には行政規則として捉えられている。》、行政規則の一種である。これは、行政機関内部において拘束力をもち、この通達に従って国民に対する処分がなされたとしても(あるいは偶々通達に違反する処分がなされたとしても)国民は通達そのものを訴訟の対象にすることができないと解されてきた。

 しかし、所得税法基本通達などのように、通達が公開され、通達に基づく事務処理が繰り返されるなど、実質的に国民に対して拘束力を持つものもあり、そのことから、通達に基づく事務処理が定例化する可能性を多大に帯びている。しかし、通達は形式上、国民に対する拘束力を持たないとされているから、随時変更される可能性もあり、慣習法たりうるか否かの判断は微妙なものになる。この点は、パチンコ遊技機が物品税の非課税扱いを約10年間受けてきたが、国税局長の通達により課税対象とされた、という事件が争われた最判昭和33年3月28日民集12巻4号624頁において問題となったが、判決においては答が出されていない。

 ③条理

 社会生活において相当多数の人が一般的に承認する道理を、条理という。

 刑事裁判では、罪刑法定主義の要請により、条理を援用してはならないが、民事裁判の場合、成文法にも慣習法にも判例法の中にも適切な裁判規準がない場合には、条理に従うものとされる。

 但し、条理は、裁判官が具体的な事件に即して適切な裁判規準を形成するための手がかりであり、または心構えである。その意味において、慣習法のように、一般的規準として存在するものではない。そのため、条理の法源性を否定する見解もある。

 ④学説

 これを法源に含めるか否かについては問題がある(肯定するならば、これも不文法の一種である)。古代ローマにおける著名な法学者の学説は、帝政期において法源として機能した。また、東ローマ帝国初期においても、こうした法学者たちの学説がユスティニアヌス法典に大きな影響を及ぼした。また、19世紀のドイツにおいては、形式上はローマ法が現行法とされていたこともあり、サヴィニー、ヴィントシャイトなどのパンデクテン法学者の学説が法源とされていた。

 しかし、現在では、学説が直接的に法として裁判官(場合によっては行政官)を拘束するのではない。もっとも、或る条文の解釈について参考となることはある。また、立法においても、学説の影響があるという場合も否定できない。現に、日本民法の基となったドイツ民法においては、パンデクテン学者、とくにヴィントシャイトの影響が強く見られる。

 ⑤自治法規・協約規範

 これらについては、不文法とする説《山田晟『法学』〔新版〕(東京大学出版会、1964年)52頁》と成文法として捉える説《佐藤・鈴木・田中・前田[田中]・前掲書207頁》とがある。また、これを法源と捉えるか否かについても問題が残る。

 (2) 法の種別

 ①成文法と不文法:上記の通りである。

 ②強行法と任意法

 法は強制規範である。しかし、当事者の意思によって法の定める内容と異なる内容(効果)を生じさせることを法自体が認める場合がある。これが任意法である(例として、民法第902条および第900条・第901条を参照)。よく、私的な利益に関係する法は任意法であることが多いと言われるが、直ちにこのようには言えない(例として、民法第175条を参照)。

 ③一般法と特別法

 一般の国民を対象とし、または一般の事柄を対象とする法があり、特定の国民を対象とし、または特定の事柄を対象とする法がある。より一般的な人的対象または物的対象を有する法が一般法、より特別な人的対象または物的対象を有する法が特別法である。両者の関係は「特別法は一般法を破る」(但し、両者が同位でなければならない)。例えば、民法は民事関係(私的取引関係)に関する一般法であるが、これに対する特別法として、借地法、借家法、商法などがある。

 ④組織法(機構法)と行為法(作用法)

 法律制度の枠組自体を規律する法が組織法(機構法)である(例、国家行政組織法、裁判所法。憲法も、国家の基本組織を定めるという意味においてこれに含まれる)。これに対し、社会において行われる個々の行為を規律する法が行為法(作用法)である。なお、行政法においては、これに救済法を加えることがある(国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法など)。

 ⑤実体法と手続法:事柄の実体に関する法が実体法である(例、民法、商法、刑法)。事柄を進める法が手続法である(例、刑事訴訟法、民事訴訟法。行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法も含まれるだろう)。

 ⑥公法と私法

 これはローマ法に始まり、大陸法系諸国においてみられる分類であるが、何を基準にするかによって見解が分かれる(両者の区別は相対的である)。

 〈1〉公益・私益を区別の基準とする説(利益説):これだけでは区別できない。

 〈2〉(国家と私人との)権力関係を規定する法が公法であり、(私人間の)対等な関係を規定する法が私法であるとする説(権力説):これは、ドイツ行政法学に見られる考え方である。この考え方でいくならば、憲法および行政法が公法である。刑法などは刑事法という別のカテゴリーに入ることになる。

 〈3〉少なくとも一方の当事者が国または(地方)公共団体である法律関係を規律する法が公法であり、私人間の法的関係を規律する法が私法であるとする説(主体説):これは、説明としてはわかりやすいが、国または(地方)公共団体が私人間の法的関係と同じ性質の法的関係を私人と結ぶときには私法であるとしなければならないし、区別の規準がかえってあいまいになるおそれがある。なお、この説でいくと、憲法・行政法・刑事法・民事訴訟法・国際公法(など)が公法、民法・商法・国際私法などが私法となる。労働法・経済法などは社会法と呼ばれることもある。

 (3)法の階層―成文法を中心として―

 国内法においては、法は階層をなして存在する。

 〈1〉憲法

 憲法とは、国家の存在を基礎づける基本法をいう。最上位の法であり、最高の法である。なお、法律学において、国家とは、一定の地域(領土)を基礎として、その地域に定住する人間が、強制力をもつ統治権の下に、法的に組織されるようになった社会のことであると解されるのが一般である。

 形式的意味での憲法:憲法典という特別の形式において存在する憲法のこと。

 実質的意味での憲法:国家の構造・組織および作用の基本に関する規範一般のこと。形式的意味での憲法と重なることが普通であるが、大日本帝国憲法下の皇室典範のように、形式的には憲法でないという場合もある。また、実質的意味での憲法は、憲法典が存在しなくとも必ず存在する(英国など)。

 上記に示した憲法の性質から、憲法の授権規範的性質、および最高法規としての性質が導かれる。

 授権規範的性質を持つ憲法 憲法は国内法における最終的授権規範である。すなわち、憲法は、その権威(または権限の行使)を法律や国家機関に委ねるという性質を持つ。この時、憲法が国民の権利・自由の保障という事柄を主な構成要素とするならば、授権はその範囲において行われるし、授権された法律や国家機関などは、その範囲を超えてはならないということになる。

 最高法規としての性質を持つ憲法 国家の存在を基礎づける基本法であるから、憲法が全ての法の中で最高法規としての性質を有するものであることは、当然のことと考えられる。しかし、最高法規としての性質を真に有するためには、憲法が通常の立法手続によって改廃される(軟性憲法)のでは不十分である。そこで、憲法の改廃(改正)については、通常の立法手続よりも厳格な手続が要求されることにより、憲法の最高法規としての性質が明確になる。そして、憲法に矛盾する全ての法規範は、一切その効力を認められないとされて、最高法規としての性質は完全になる(日本国憲法第98条第1項を参照すること)。

 〔「法規」という概念は多義的である。最広義においては、法規範一般を指す。広義においては、成分の法令を指す。狭義においては、①抽象的意味を持つ法規範を指す(この点で、裁判判決や行政行為とは異なる)、②一般人民の権利・義務に関係する法規範を指す(Rechtssatz)。〕

 ここで、憲法の保障として、憲法の最高性を担保する方法を掲げておく。

 ・憲法の最高法規性の宣言

 ・憲法尊重義務(公務員に対する)

 ・権力分立制

 ・硬性憲法

 ・違憲立法審査権

 ・抵抗権 国家権力の重大な不法に対する、国民の側からの、自らの権利・自由を守り人間の尊厳を確保するための、実定法上の義務を拒否する抵抗行為(および、それをとる権利)で、他に合法的な救済手段が不可能となったときに採られるものである。憲法典に明文化されていないのが普通である。

 ・国家緊急権:非常事態において国家の存立を維持するため、国家権力が、立憲主義的な憲法秩序を一時的に停止して非常措置を取る権限のこと。但し、これは、憲法を保障する場合と憲法を破壊する場合との両方がありうる。日本国憲法に国家緊急権の規定はない(例として、大日本帝国憲法第8条・第14条・第31条など、ヴァイマール憲法第48条)。

 〈2〉法律

 形式的意味の法律とは、立法機関(日本においては衆議院と参議院との双方からなる国会)の議決を経て成立した法のことであり(憲法第59条・第41条を参照)、成文法である。

 実質的意味の法律とは、「法規」(Rechtssatz.特定の内容を有する法規範の定立)のことであるが、「国民の権利を直接に制限し、義務を課する法規範」という意味と「およそ一般的・抽象的な法規範」という意味とがある。後者のほうが広くなり、妥当である。なお、憲法第41条の「立法」とは「法規」の定立のことである。

 〈3〉命令

 内閣が発する政令(憲法第73条第6号、内閣法第11条)、各国務大臣が発する省令(総理府令を含む。国家行政組織法第12条)がある。狭義の法律とは異なり、法律の委任がなければ、国民に義務を課したり権利を制限する規定を設けることはできない(前期の各条項を参照)。憲法および法律を施行するためのものである。

 〈4〉規則

 〈5〉地方公共団体の条例

 憲法第94条により、地方公共団体の議会は、法律に抵触しない限りにおいて条例を定めることができる。条例は、地方公共団体の議会の議決を経て制定される(地方自治法第14条第1項では、国の「法令に違反しない限りにおいて」となっている。この他、同第16条および第96条を参照)。条例の場合には、違反した者に対する制裁を規定することができる(同第14条第5項)。

 〔条例において制裁を規定することについては、一応は憲法第31条との関連が問題となる。しかし、条例は地方公共団体住民の代表機関である議会の議決によって制定されるのであるから、条例において罰則を設けることも許される(最大判昭和37年5月30日刑集16巻5号577頁を参照)。同じ理由により、条例において財産権に対する規制を加えることも、財産権(の内容)が一地方の利害を超えるとか全国的な取引の対象になりうるというのでなければ、許される(一応は憲法第29条第2項との関連が問題となるが)。〕 

 なお、法律と条例との関係については、いわゆる法律先占論がかつては有力であったが、現在では、法律よりも厳しい規制基準を設けることを法律がとくに禁止していないのであれば適法である(法律に定められた基準が最低基準である場合)とか、法律と条例とが別の目的を(対象は同じであるとしても)規制の目的とする場合には許される、という解釈が一般的になりつつある。

 〈6〉地方公共団体の長が定める規則

 地方自治法第15条により、その権限に属する事務に関して定めることができ、罰則として5万円以下の過料を定めることができる。

 ◎法の序列は、憲法>法律>命令>条例>規則(地方公共団体の長による)となる。

 (4)法における原則

 「上位法は下位法に優越する」

 「後法は前法を破る」(但し、同等の効力を持つ成文法相互間に限る

 「特別法は一般法を破る」(但し、同等の効力を持つ成文法相互間に限る

 (5)国内法と国際法―両者の関係をどう理解するか?―

 現在の国家においては、権力が国家に集中し統制される―これは、独裁国家に見られるような権力の集中を意味しない。三権分立をとる国家も、権力が国家に集中するという点においては変わりがないし、そうでなければ三権分立そのものを語り得ない―のが一般的である。しかし、国際社会は、その国家が複数存在する社会であるから、国内社会と違う局面が見られる。国際法においても、強行法規(jus cogens)は存在する(ウィーン条約法条約第53条も存在を認める)。そして、国際司法裁判所の存在もある。しかし、法の実効性ということでは、国際法には国内法ほどの強行規定性はないとも言いうる。

 国際法と国内法との関連については、次のような見解が存在する。

 国内法優位一元説:この説によると、国際法の妥当する根拠と範囲は国内法の授権に帰することになるが、国家の意思が変化しても国際法(条約)はその国家を拘束するという事実を説明できない。

 二元説:国際法と国内法とは、規律領域を異にし、それぞれ独立した法体系を成しているとする説。

 国際法優位の一元説:この説の理由付けは論者によって異なる。例えば、「合意は守られるべし」(pacta sunt servanda)を法の基本命題とする説、国内法の効力範囲は国際法の定めによるものであるとする説などである。

 国内法に基づく行為が国際法の基準に適合しない場合には、その行為の国際法的効力が否定されることがある。また、国内法(例、憲法)を援用して国際法上の義務を逃れることはできない(ウィーン条約法条約第27条)。

 日本においては、国際慣習法は法律に優先する国内法としての効力を有すると解される(憲法第98条第2項。このことが明文によって示される例として、ドイツ連邦共和国基本法第25条がある。なお、イギリスは、慣習国際法より国内成文法に優位を与えている)。また、条約についても、一般的に国内法に受け入れ、法律に優先する効力を認めるものと解される(この点についても国により異なる)。

 最後に、憲法と条約との関係について述べておく。国内法としての効力においては憲法優位説が通説と思われる。条約の国会承認手続よりも憲法改正手続のほうが厳格である(条約承認手続は法律制定手続よりも簡易である。憲法第61条を参照)。そのため、憲法に反する内容の条約が締結された場合には国民主権原則および硬性憲法の建前に反することなどが理由である。しかし、これはあくまでも国内における効力の問題であり、国際的効力の問題ではない。


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