デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

快男児 日本エンタメの黎明期を支えた男

2021-01-20 04:56:18 | 買った本・読んだ本
書名 「日本エンタメの黎明期を支えた男」
著者 高橋銀次郎 出版社 日経BP 出版年 2020

アメリカで日本の軽業を持ち込んで成功した実在の興行師大浦新太郎をモデルにした立身出世物に仕立てた小説。ほとんど歴史の中ではかえりみられることがない、サーカスの興行師をとりあげてくれたことについては、サーカスをこよなく愛するものとしては、うれしい限り、読むのがとても楽しみだった。しかし読んで正直がっかり。下級武士あがりの男が、商才にめざめ、ランプを見て、その源となる石油を売ろうと思い、石油商となり、そのあとはハワイで日本の陶器が売れるという記事を読み、石油販売で儲けた金で陶器を買って、単身ハワイに乗り込み、いずれも成功、そのあと興行師となって、アメリカに日本の軽業をもってさまざまな失敗を繰り返しながら、大成功、引退したあとは松竹をつくった大谷兄弟に投資、新京極に劇場をつくるのを応援するというサクセスストーリーに仕立てているが、あまりにも平板で、主人公に感情移入できない。
著者はどこに魅力を感じて、彼をモデルにして小説を書こうと思ったのかがさっぱり伝わってこない。
いちばん足らなかったことは、彼がそれまで石油にしろ、陶器販売にしろものを取り扱ったのが、なぜ軽業だったかということをきっちり書けなかったことではないだろうか。だから日本の軽業の良さを世界に人に見せたいんだといくら力まれても、空疎にしか聞こえてこない。金になると思ったからでいいのであって、どうやってそれで稼ぐかということでいろいろやってみたことを書き込めば、少しは面白いものになったのではないかと思う。
ひとつ読んで思ったのは、明治時代のサーカスの興行師奥田弁次郎、そして両国一座や濱村一座、さらには岡部一座などの興行師として欧米で活躍した濱村保門、いずれも関西の出身であることである。濱村は帰国してから、関西の人だったら誰でも知っているハマムラという中華屋を経営して大成功を収めている、何故中華屋を始めたか、それは海外を渡り歩いたときに、どこにも中華料理屋があったことからだという、その理由はとても説得力がある。
奥田については小説や映画にもなっているが、濱村などを小説とか映画にしたら面白いかもしれない。

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