【焼きそばと剣法】

【焼きそばと剣法】
 
 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2007年 6 月 24 日の日記再掲

静岡県清水旭町。昭和の時代、そこには丹下健三設計による清水市役所があり、その並びに燃料の神戸商店、杉本質店、松永スーパーなどがあり、焼肉の錦江苑と松坂食堂に挟まれた隙間に新天地という袋小路があって、その奥で母が小さな飲み屋を営んでいた。その松坂食堂のお母さんにはいろいろと世話になり、今でも白い上っ張りを着て岡持ちを下げ小さな身体を傾けて市役所まで出前をする姿を思い出すが、いかにも清水のお母さんらしい人その人も亡くなられて久しい。そしてそれらの店があった場所は現在の清水区役所になっている。

母親が営んでいた飲屋の看板には「家庭料理」の文字があって、酒のつまみに「やきそば」があるようなあか抜けなさを売り物にした店だった。女一人で切り回すその飲み屋では、人が良くて気取りのない清水の常連客が入れかわり立ちかわりカウンターの中に入って、忙しい母の手伝いをしながら酒を飲んでいた。

仕事を終えて飲みに来ていた松坂食堂のお母さんが忙しそうな母を見て
「何か手伝おうか」
と言い、母が
「それじゃあむこうのお客さんに頼まれた焼きそばを作って」
と言い、松坂食堂のお母さんが焼きそばを炒める際、金属へらで麺をザクッと切るのに驚いて、
「あんたなにしてるの?」
と聞いたら
「あら知らないっけ? 清水では焼きそばは切って炒めるだよ」
と教えられて驚いたという。

母が他界する直前にその話を聞き、面白かったのでこの日記に書いたことがある。あの店この店と一緒に食べ歩いてみたけれど確かに清水の昔ながらの焼きそばはある程度の長さに麺が切られていることが多く、母は
「ほらね」
と笑っていた。

■静岡県清水桜ヶ丘町。焼きそばの『みやじま』店頭。
Canon PowerShot TX1

静岡県清水桜ヶ丘町。桜ヶ丘五差路記念塔の所から堂林方面へ向かう道の入口に白い暖簾に「焼きそば」と染め抜いて掲げた小さな店があり、剣道場に向かう少年の稽古着のように清々しくて「(いいなぁ、入ってみたいなぁ)」と長いこと思っていた。

■店内にて。
FUJIFILM FinePix Z1

6月22日、大汗をかきながら実家物置(ネズミの巣)の片付けをしていたら昼時になり、自転車にまたがって念願の店を訪ねてみた。

店内に入ったら壁に芸能人とスポーツ選手のサイン色紙がたくさん貼られていてなかなかの人気店らしい。長嶋茂雄のポスターや写真が貼られていて野球好きの店なのがわかる。清水市立商業高校が昭和 61 年夏の野球選手権大会に静岡県代表として出場した際、選手全員で寄せ書きして寄贈した色紙もあって微笑ましい。

白髪のお母さんが金属へらを両手に持ってカチャカチャと鉄板の上で焼きそばを作っており、電話注文しておいて取りに来る客も多いらしい。注文を受けるたびに炒めているのでまだまだ時間がかかると思い、読みかけていた藤沢周平『隠し剣秋風抄』を読みながら冷たいお茶を飲んで待つ。

■『みやじま』の一番安い普通の丹念に炒められた焼きそば。
FUJIFILM FinePix Z1

出てきた焼きそばはやはり短く切られており、そういうやきそばは「やき」の文字の通りしっかり鉄板上で焼き付けられて無駄な水分が抜けて香ばしくて美味しい。「(長いままの麺をそのまま炒めて、蒸気が抜けないままべっちゃりするのを油を多くしてごまかし、しかも大量に炒めて鉄板上で保温して、麺の奥まで油がしみこんでしまった焼きそばはやっぱり「焼きそば」とは言えないな)」とつくづく思う。

店を閉じられた名店、浜田町の『水越』でお父さんが炒めてくれた焼きそばもまた短く切られており、鉄板の上で金属へらをカチャカチャさせる動作は小さくまとまって手早く、剣術で言えば小太刀を使った流派のようであり、「(そうだよな、焼きそばなんて小太刀で手早く、客にすっと身を寄せるように注文を受けてから作るものなんだよな)」と思ったものだった。

久しぶりにおいしい焼きそばらしい焼きそばを食べ、お母さんと二人きりだったので
「この店いつ頃からやってるんですか?」
と聞いたら
「あんた何年生まれ?」
と逆に尋ねられ、なんと昭和三十年の開店だという。
「おかしいなぁ、この店の前を三年間通学路にしていたのに気づかなかったなぁ」
と言ったら、
「まーだ道がおぞくて車がたーんと通らない頃は、店の前へと縁台を出して氷水を食べて貰ってたこともあるだよ。どうして気づかないっけだかねぇ」
と笑われた。帰省するたびにお昼ご飯で訪ねてみたい気持ちの良い店を、あらためて見つけて嬉しい。

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▼学生街の名画座と名曲喫茶

東京六大学の私立大文学部二校を人生の滑り止めに受験し、
一校は合格したけれどその年(毎年かも)の早稲田の入試問題は非常に高度で
びっくりしつつ「(こりゃだめだ)」と答案を書きながら思い、
それ以来、同い年の早稲田出身者にはそれだけで一目置いている。



さんざんな受験を終え
もう早稲田に来ることもないかと思って
大隈重信の銅像を見て帰った記憶がある。

三十数年ぶりに再訪し、今度こそもう早稲田に来ることもないかと思ったので
また大隈重信の銅像を見に行った。なんでだ。

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▼ジューサーミキサー

ジューサーバーがある駅ビルの前にあるこのデパートの地下では『新宿高野』が
水や氷や砂糖を使わない100%ジュースを飲ませるらしい。



昭和三十年代以来、デパートの地下が「depachika」などと呼ばれる以前から
果実店は電動ジューサーではなく電動ミキサーを並べて生ジュースを飲ませていたのだった。

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【味燦燦】

【味燦燦】

美濃輪稲荷赤鳥居前の魚屋店頭にて。

ハマグリはなんと言っても潮汁がいちばん好きだ。

(1) 殻の汚れをよく洗い落とす。ごりごり。
(2) 青じそを千切りまたは細ネギを小口切りにする。さくさく。
(3) 鍋に水とハマグリを入れて火にかける。ことこと。
(4) ハマグリの口が開いたら酒と塩少々を加え、アクを取り、青じそをまたは細ネギを加え、ひと煮立ちさせる。ぐつぐつ。

撮影日: 07.6.16 4:46:59 PM
FUJIFILM FinePix Z2

どうも(4) の塩少々が微妙で、ちょっと多すぎるだけで
味をぶちこわしてしまうので僕はハマグリから出る塩分だけで潮汁を作る。
潮汁は塩辛いより味がないくらいの方がハマグリの味がわかって美味しいと思う。ふむふむ。

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【デンキ屋の時代】

【デンキ屋の時代】

昭和32年生まれのナショナル坊や。

電化の時代の道案内を終えた今もまだ若いままだ。

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【清水町のアメリカデイゴ】

【清水町のアメリカデイゴ】

静岡県清水清水町(清水町)、巴川にかかる港橋を渡っていたら、たもとにある旧家の庭でアメリカデイゴが豆に似た真っ赤な花をつけていた。
海外から来た赤い豆の意で 「海紅豆」 (かいこうず)という別名がある。

撮影日: 07.6.16 4:38:05 PM
FUJIFILM FinePix Z2

どれくらいの速さで成長するのか知らないけれど、かなり太い幹になるまで育っており、南アメリカ原産で江戸時代末期に渡来した
アルゼンチンとウルグアイの国花であるアメリカデイゴが当時の港の端にあるのが興味深い。

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▼斜め街歩き

東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目。

斜め街歩きのきっかけになった明治通り沿いの和菓子屋。



「(ああ、素敵だな)」と思うのだけれどうまく言葉にできない。

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▼遺跡と大学野球

東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目。

こんな場所にある工事現場で遺跡の調査が行われていた。
とはいえずいぶん浅いし、新宿駅と新宿御苑の間あたりだし、
どんなに古くても江戸時代の建物の遺構程度ではないだろうか。


    撮影日: 07.6.15 1:55:23 PM
    FUJIFILM FinePix Z2

江戸時代ここには何があったのだろうかと帰宅してから
『東京時代MAP』を開いてみたが
千駄ヶ谷は慶応大学病院あたりより西は圏外だし
そのあたりは既に屋敷もまばらである。


    撮影日: 07.6.15 1:55:26 PM
    FUJIFILM FinePix Z2

ある程度歴史的価値のある調査だと説明板があるのだけれどそれもない。

それにしても今日は真夏のように暑かった。
桜飯さんが東京にいるとのことなので携帯に電話したら
「暇なので神宮球場に来て第56回全日本大学野球選手権大会、関西国際大 対 早稲田大
の試合を観戦中」
とのことで、新潟県人は大学野球を、静岡県人は遺跡発掘現場を炎天下で見ている。

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▼雲の重さ

『NTT DoCoMo代々木ビル』別名「ドコモタワー」通称「通信ノードビル」と
JR代々木駅近くにある古いレンガ積みのガード。


    撮影日: 07.6.14 3:01:51 PM
    FUJIFILM FinePix Z1

梅雨空に巨大な貯水池が浮いている。

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▼馬鹿牛

馬鹿牛と書いてなんと読むのだろう。
「バロックぎゅう」とか「うまかうし」とか読ませるんじゃないかなと思ったが……



「ばかぎゅう」と読むらしい。
メニューに馬肉・鹿肉・牛肉があるからだとか。

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【スガキヤのカラトリー】

【スガキヤのカラトリー】



「ジャスコ、アピタ、清水エスパルス・ドリーム・プラザなどに出店している
スガキヤは昔から、こんなカトラリーを提供しています。
これもユニークだと思います。
ここのラーメンもユニークな味で、割と安価で、時々食べに行きます。」(鳥)



スガキヤは高田馬場店も閉店してしまったそうで
関東では食べられないのですよね。
清水の友人にはスガキヤ好きが多いので
一度行ってみたいと思うのですが果たせていません。
ユニークなフォーク付スプーン、初めて見ました。検索してみたら
「創業者の故菅木周一氏が大量に捨てられた割り箸を見て、資源と経費の削減から思いついた」
とありました。エバニューがアウトドア用に販売しているようです。

鳥さん、ありがとうございます。
写真トリミングしてアップにさせてもらいましたが悪しからず。

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▼金王神社と魚玉とシークレットライブ

この扉を開けて階段を下りたところに
渋谷ステュディオはある。


    撮影日: 07.6.13 6:39:44 PM
    FUJIFILM FinePix Z1

演奏終了後、楽譜を見せてもらって唖然とした。
超絶演奏の楽譜もまた超絶である。

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【御百度ハンドル】

【御百度ハンドル】

静岡県清水袖師町。

御百度を踏む…ではなくてこのハンドルを百度回転させると、あるものが角度にして 100 度回転するという。


やってみたら確かに一度回すと 1 度回転しているように見え、そう書いてあるのだからそうなるに決まっているものの、ちゃんとそうなるのが面白くて百度ほど回して 100 度くらい回転させてきた。

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【童心と象】

【童心と象】

静岡県清水本町にて。

童心にかえって児童遊具のアイデアを出し、
「あのさー、ゾウさんのお鼻がお滑りだったら楽しくなーいー?」
などと声音まで幼稚に変えて提案したりし、実際に作ってみたら、ゾウを三枚に下ろしたよう、もしくは背開きにしたゾウの開きに見えて
不気味に思ったりするのではないだろうか。


でも子どもはかえってそういうグロテスクさを好むかも知れないし、もしくはグロテスクであることすら思いつかないかも知れない。
だから大人には三枚に下ろしたゾウや背開きにしたゾウの開きにのように見えるものが、児童遊具であってもかまわないではないかということになったのかもしれなくて、こういうものを製品化するのは童心とは別の無邪気さなのだろう。

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【水神社奉納花火大会】

【水神社奉納花火大会】

今年も清水恒例お水神さんの祭典の季節が巡ってきた。
もう清水の夏が始まってしまう。

わーきゃあないだよなぁ。

撮影日: 07.6.3 6:48:37 AM
RICOH GR Digital

静岡県清水上町に張り出されたポスター。

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