【赤字のこころ】

2020年11月21日

【赤字のこころ】

午後の散歩で田端文士村記念館に行き、企画展『文士たちのアオハル~芥川龍之介と田端の雑誌~』の展示を見てきた。

児童雑誌『赤い鳥』を創刊した鈴木三重吉は、誰の原稿にもどんどん手を入れる人だったそうで、赤字の入った芥川龍之介『蜘蛛の糸』の原稿展示がとくに面白かった。

子どものころ、『杜子春』とともに読んで感動した『蜘蛛の糸』はまさに三重吉の赤字が入ったほうの文章だったように思え、その「かなづかい」と「丁寧体」が、おだやかで聖なる諦観に満ちた世界を創り出し、子どもだった自分のこころに忘れえぬ記憶を残したのだった。新美南吉も小川未明も、話の内容より、そういうやさしい語り口が聞きたくて好きだったのだ。

kindle 版や青空文庫で読める『蜘蛛の糸』は三重吉の赤字が入らない原稿ママのほうらしく、自分が幼いころに読んだものとは肌ざわりが違う。ネット検索したら『くもの糸・杜子春』赤い鳥名作童話 2 という単行本があり、自分が読んだのはこっちの方だったのではないかと思うので確かめたくて注文した。

文士村記念館の展示は撮影禁止なのでメモを取りながらガラスに顔を近づけて見てきたけれど、三重吉の入れた「赤字のこころ」が、どうやら自分はひどく好きなのだ。

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