連泊

2015年4月14日
連泊

01
新潮文庫の『司馬遼太郎が考えたこと』は全十五巻もあるので、ときどき読み返してみたい部分を思いついても探すことが難しい。電子書籍がありがたいのは全文検索機能が使えることだが、紙の書籍だとそうはいかない。

02
取材で国内を旅しても目的の土地には泊まらない、泊まると情がうつって客観的に書くことができないという意味のことを司馬遼太郎は書いていた、ような気がする。「ような気がする」が気になるので、本当にそう書いていたのだろうかと確かめてみたいのだけれど探すのが面倒くさい。

03
見知らぬ土地に着いて宿をとり、風呂に入って食事をとり、床について目がさめた翌朝は、確かに昨夜の到着時と気分が違っている。宿の支払いを終えて、土地を引き払うときなど、微かな愛着が残ることすらあるので、泊まると情がうつるということは確かにあるかもしれない。

04
確実にそういう現象を実感するのが連泊というやつで、一夜を過ごした宿とその周辺で終日過ごし、もう一泊する夜には妙に慣れてしまい、客室は自分の部屋、旅館は我が家、土地は故郷のように思えたりするといった、緩んだ馴れが生じている。

05
犬も三日飼えば恩を忘れずというけれど、人はひと晩ふた晩で土地に愛着する。そういう甘ったれた倒錯もまた旅の愉しみと感じるので、連泊を目的のひとつにした旅でもたまにはしてみたい、などとふと思う。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )
« ほらね 初亀 »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。