◉わたしとうつわ

2018年3月14日
僕の寄り道――◉わたしとうつわ

『三四郎』『それから』『門』と漱石の前期三部作を抜けて路地の角を曲がり、『彼岸過迄』『行人』『 こころ』へと明け方の散歩中である。自他未生以前本来の読書、未明の「わたし」が明らかでない、ぼんやりしたこころを利用して読むものとして、このところ漱石が書いたものがいちばん気持ちを晴れやかにする。幼い頃から低徊好きなので、もともと禅問答のような文学と相性が良かったのだろう。

『門』に蒙古刀の話が出てきて興味をひかれた。蒙古人はその蒙古刀を鞘から抜いて肉を切り取り、鞘に仕込まれた箸でつまんで食べるのだという。日本以外では中国、北朝鮮、韓国、台湾、ベトナム人が箸を使うが、蒙古で肉食の刃物と箸が一体化しているのをとても面白く思った。

宮脇淳子氏に会ったら聴いてみようと思いつつ、ネット検索したら中国の百度百科に解説があった。

蒙古刀是蒙古族牧民的生活用具。吃肉、宰牛羊用它,有时也当作生产工具。经常戴在身上,既是牧民不可缺少的日用品,又是一种装饰品。刀身一般以优质钢打制而成,长十几厘米至数十厘米不等。钢火好,刃锋利。

読める漢字を頼りになにを言っているかだいたいわかるのが面白い。公に書ける蒙古刀とは概略こういうものだろう。

社会主義国化強制により箸の文化は捨てさせられ、現代モンゴルではスプーンとフォークを使うというが、昔はこの箸付きナイフを常時身に帯び、自分用の椀まで持ち歩いていたという。なんと蒙古は銘銘器、マイお箸マイお茶碗の文化だったのだなと興味深く思う。宮脇氏は蒙古刀を持っているだろうか。(2018/03/14)


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