【サンコノマツ】

【サンコノマツ】
 
 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2007年 5 月 30 日の日記再掲

東京都豊島区駒込。ふらりと買い物に出たついでに散歩する染井霊園内に不思議な木がある。

かなり大きくて目立つ木であり、太い幹はプラタナスにとてもよく似ている。幹だけ見ると広葉樹のプラタナスなのだけれど、葉っぱを見ると針葉樹の松というプラタナスに松を接ぎ木したような奇っ怪で不思議な樹木であり、これはサンコノマツもしくはシロマツもしくはハクショウと呼ばれるらしい。

■豊島区駒込、染井霊園に1本生えているサンコノマツ。
RICOH GR Digital

中国原産のこの木はなかなか珍しい樹木のようで、動物のパンダのように中国の国際外交において戦略的な贈り物にも使われるらしい。

プラタナスのような幹で思い出すのが、日本に最初に持ち込まれたと言われるプラタナス並木のある郷里静岡県清水興津の独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構カンキツ研究部、通称興津の柑橘試験場であり、かつてそこにもこの珍しい木があった。

■どう見ても幹はプラタナス。
NIKON COOLPIX S10

カンキツ研究部(興津)のサイトに「興津の名木」と題されたページがあり、そこには敷地内にある名木を紹介したページがある。

歴史ある,当カンキツ研究部(興津)には,いくつかの名木と呼ぶにふさわしい樹木があります。
その名木の数々をご紹介します。
サンコノマツ(シロマツ,ハクショウ)
Pinus bungeana Zuccex Endl.
中国名:白皮松,蛇皮松,虎皮松
英 名:lace-bark pine
仏 名:pin Napole'n
原 産:中国北西部 原産地では2~30mの高木
特 徴:樹皮が鱗片状に脱落し、幹が黄褐緑、老木は白色となり美しい葉は3葉である。球果は長さ5~7.5cmで円錐状卵形。この樹は未だ結実していない。
 サンコノマツは漢字にすれば、「三鈷の松」でその意味は金鋼杵(こんごうしょ)の1種のことである。三鈷の先は3つに分かれていて、密教の修法に用 いる器具である。それにこの松の葉3葉の出始めの形が似ているからである。金鋼杵は古代インドの武器で後に密教で煩悩を打ち砕くための菩薩心を表すために手を持つようになった。
 先端が1本のものを独鈷、3本を三鈷、5本を五鈷という。ハクショウ、白皮松などはこの老樹の樹皮が美しいことから名付けられており、その樹肌、樹姿の美しさから、中国は宮殿の庭に植えられており、高位高官の庭にそのシンボル的な樹として珍重された。朝鮮にも渡り、やはり高級庭園木として貴重品扱いされている。マツノザイセンチュウ(マツクイムシ)に抵抗性があり、こ れとの雑種が検討されていると聞くが、この松は成長が遅いため問題もある。 
 この2本のサンコノマツは戦前に北京へ園芸関係の調査団が訪問した時(団長 梶浦実)同道した田中諭一郎博士が種子を持ち帰り育成したもので樹齢50年程度である。本町には旧水口屋に植えられており、他に数本が県内にあるが、当場の樹は古木に属すると考えられる。(かつて独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構カンキツ研究部のサイトにあった記述より)

ということで興津のカンキツ研究部にはかつて2本のサンコノマツがあったことがわかる。なぜ「かつて・あった」と過去形で書くかというと興津のカンキツ研究部のサイトに今もある「興津の名木」ページからはなぜかサンコノマツの紹介が忽然と消えてしまった(古いページはリンク切れとなって2007年5月30日現在ネット上に存在している)からである。

■遠ざかって幹を見たり、近寄って細部を見なければごく普通の松である。
NIKON COOLPIX S10

不幸にも枯れたりして失われたとか、貴重なのでどこかへ大切に移されたとか、戦略的にどこかへ寄贈されたとか、紹介するのがまずい理由が生じたとか、マツノザイセンチュウ(マツクイムシ)に抵抗性を持つ雑種の開発にいよいよ着手するため他の研究部に移されたとか、実はサンコノマツと思いこんでいた木が結実しないので調べたらサンコノマツではなかったとか、単にサイト更新の際に入れ忘れているとか……楽しいものから楽しくないものまでさまざまな理由が考えられるわけで、メールを書いて問い合わせるほどのことでもないので、いつの日かカンキツ研究部の一般公開にでかけたら理由を確かめて見たい小さな楽しみのひとつになっている。

追記:カンキツ研究部の白皮松は一昨年突然枯れて伐採されたと教えていただいた。昨年の秋に訪問して切り株となった白皮松の年輪を数えたら100年に近く、試験場創設初期のものであったことがわかったという。

 

■白松(サンコノマツ)についてのその後

→ 白松とツァラトゥストラはかく語りき
→ 【三木成夫と西成甫で「アッと驚く為五郎」】



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