【 2.5mm の謎】

【 2.5mm の謎】

母の病気治療のため病院に付き添うようになってからポケットティシュと紙の手帳は欠かさずに持つのだけれど、カバンの中にどうしてもノートパソコンを持っていたくて、その理想型と思っているのがビクターがかつて販売していた InterLink MP-C102 という小さな電子のノートだ。

7.2 インチ VGA( 640×480 )でカラー液晶表示のパソコンでありながら、市販の単三乾電池 4 本で動いてしまうのである。ということは機械的に壊してしまわなければ、少なくとも自分が生きているあいだくらいは専用電池入手に苦労をする心配がないのである。
 
とはいうものの InterLink MP-C102 にも専用充電池というものが付属していて、AC 電源につないでおくと充電されるので、とっさの外出時に電池の詰め替えをしなくて済むのは便利だ。

専用充電池というのは単三ニッケル水素電池を縦につないで樹脂被膜で覆ってしっかり固定したものなのだけれど、試しに市販の単三ニッケル水素電池を 4 本突っ込んでみても充電してくれない。

これは当然のことで、そういう仕組みになっていないと充電不可の電池などにまで充電しようとしてしまう可能性もあり、爆発などの危険もある。そういう事態を避けるために、この電池は充電可能なニッケル水素電池ですよ、と何らかの仕掛けで電池から本体に情報が伝えられているはずなのだけれど、その仕組みがわからない。

僕が知っているいくつかの例では、電池の側面に通電する部分を作っておき、本体の接点がそこに触れることによって充電可能な専用電池であると認識させる方法、断面が円である乾電池の一部に断面が正方形になるような部品を取り付け、その部分があることで充電可能な専用電池であると認識させたりするのだけれど、この日本ビクターの専用充電池の仕掛けはそのどちらでもない。

どうしてもわからないので、市販のニッケル水素電池の本体充電はあきらめていたのだけれど、ネット上で成功した人がいることを知り、自分でもう一度やってみる気になった。ちょうど寿命が来て充電不能になった専用充電池があったので分解してみると、何の変哲もない単三ニッケル水素電池を 4 本直列につないだだけである。

ただひとつ、電池の +極側に厚さ 2.5mm のキャップがあり、まさかと思いつつ市販のニッケル水素電池を 4 本、電池室に突っ込んで最後の +極にそのキャップをつけて蓋を閉じると、なんと!赤いランプがついて充電が始まるのである。

この厚さ 2.5mm のキャップに巧妙な仕掛けが!と思いたいところだけれど、単なる厚さ 2.5mm の蓋である。それでもそれをかぶせると充電が始まるので結果オーライなのだけれど、う~んと腕組みし、首をひねったまま外出してしまうのが文系人間の理科的知能の限界である。

数時間の外出を終えて帰宅するまでの間にああでもないこうでもない、と愚考を重ね、もしや……と思って InterLink MP-C102 に市販のニッケル水素電池 4 本を突っ込んでそっと指で押してみると、ちょっと押し込んだあたりで微妙な抵抗とクリック感があり、どうもスイッチのようなものが -極側に用意されていて押されているらしい。懐中電灯で電池室の奥を照らして覗いてみるけれどどうしても見えない。たぶん 2.5mm 分だけ余分に電池が押し込まれると充電回路が働くのだと思う。

ともかく、この 2.5mm の厚さのあるなしで一般電池と専用充電池の区別をさせるという非常にデリケートな仕組みになっているようなのであり、デリケートではあるものの厚さ 2.5mm のキャップさえ用意しておけば市販ニッケル水素電池を本体に挿したまま充電可能であることがわかった。けれど、不良電池を混ぜたり、極性を逆に突っ込んだり、アルカリ電池に充電したりと、何をしでかすかわからない使い手の頭の程度もまたデリケートなので、メーカーとしてはやって欲しくないだろうし、くれぐれも自己責任でという範疇の話である。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2004 年 5 月 22 日、18 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)

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