【路線バスのちいさな旅】

【路線バスのちいさな旅】

今は遙か昔。渋谷の安居酒屋で飲んでいたら友人が
「田中小実昌が飲みに来ている」
と顎をしゃくって小声で言うので、さりげなくそちらを見たらテレビでおなじみの帽子をかぶって、テレビと同じ飄々とした仕草で、楽しそうにひとりで飲んでいた。


都バスの車窓から。最後部左側の席が好きで、街路樹がちょうど目線の辺りに来る。
DATA:RICOH Caplio R3 

パソコンに外付けしたハードディスクの調子が悪く、昨日はとうとう白煙と異臭を吹き出したので消火し、中のウエスタンデジタル製のハードディスクを救出し、朝一番で秋葉原にハードディスクケースを買いに出た。


都バスの車窓から。本郷通りに面した東京大学の校舎内。田中小実昌は東京大学文学部哲学科に入学したが授業に出ずに除籍されている。
DATA:RICOH Caplio R3

本郷通り上富士交差点近くのバス停で都営バス「茶51」系統のバスに乗る。

始発の駒込駅南口を出発し、上富士前→駒込富士前→吉祥寺前→向丘二丁目→向丘一丁目→本郷追分→東大農学部前→東大正門前→東大赤門前→本郷三丁目駅前→本郷二丁目→湯島一丁目→神田明神前→外神田二丁目を経て御茶ノ水駅前までの路線バスだが、秋葉原電気街には神田明神前か外神田二丁目で降りると近い(2006年当時の路線)。

都営バスは一路線全区間どこで乗ってどこで降りようと料金先払いで 200 円均一運賃なのだけれど、清水に帰省して静鉄ジャストラインのバスに乗ると乗車した区間に応じて料金が上がっていくのでとても緊張する。都営バスの均一料金先払いの気安さに比べ、ぴったりの小銭がなかった時のことが心配でなんとなくバスの旅が楽しくない。最近はそれが嫌なのでパサールカードというプリペイドカードを買うことにしている。


都バスの車窓から。東京大学あたりからは街路樹はイチョウになる。
DATA:RICOH Caplio R3

田中小実昌は生前、都営バスの旅が好きでテレビに何度も出ておられたが、お弁当を持って家を出て、運転手の真後ろの席に乗り、始発点から終点まで200円の旅(当時はもう少し安かったかも)を楽しまれるわけで、年をとったらお金のかからない良い趣味だなぁと感心したものだった。
 
彼がテレビに出て路線バスの旅を楽しんでいたのはいつ頃だったのだろうと調べてみたら、2000年に亡くなられているので少なくとも6年以上前のことになる。時の経つのは早い。


都バスの車窓から。日の丸交通のリムジンタクシー。
DATA:RICOH Caplio R3

路線バスのちいさな旅は日々の憂さ晴らしにいいのだけれど、田中小実昌は
「健康のためなら死んでもいい」
という含蓄のある名言を残された方なので、素直に心から楽しい旅をしていたのだろう。

( 2009 年 3 月に閉鎖した電脳六義園通信所 2006 年 4 月 13 日、16 年前の日記に加筆のうえ再掲載。)

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