電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
◉耄碌爺
2018年1月5日
僕の寄り道――◉耄碌爺
子どもの頃に読んだ他愛のない滑稽話の中で忘れられないものがいくつかある。そのうちのひとつ。
爺「いま何時?」
孫「もう6時」
爺「なにっ耄碌爺(もうろくじじい)だと!」*
昔の人は今の人よりずっと若くして老けていた。祖父は1894(明治27)年生まれ、祖母は1900(明治33)年生まれだったが、物心ついたとき既に「おじいさんおばあさん」に見えた。だがその時の祖父母はいまの自分たち夫婦よりずっと若い。
瓦職人だった祖父
孫たちをかまいながらする晩酌が何より好きだった祖父は、妻や子どもたちには鬼のように恐い父親だった。家族が食べる質素な夕食でも、絶対君主の祖父にだけは毎晩マグロの刺身がついた。
マグロの刺身でちびちび酒を飲みながら、酔いがまわってくると祖父は
「小遣いをやるから肩を叩け」
とろれつの回らない声で孫たちに言う。肩たたきされながら気持ちよくてうとうとしているので、わざと手を滑らせて頭を叩き
「こらっ!」
と怒るので
「わーいもうろくじじー」
と囃しながら逃げた。振り返ると祖父はふらふら頭を揺すって、竹中直人のように怒りながら笑っていた。
毎晩の晩酌が楽しみなのは自分も祖父とかわらない。昨夜も「秘密のケンミンショー」拡大版を観ながら飲むうちに、最後まで起きていられず途中で寝たらしいが、何時まで起きていたのか記憶にない。孫がいたら自分が寝た時刻を聞き
「わーいもうろくじじー」
と囃されるところである。
* 【耄碌(もうろく)】年をとって頭脳や身体のはたらきがおとろえること。
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