◉八回目の正月

2018年1月1日
僕の寄り道――八回目の正月

義母が特養ホームで暮らすようになって迎える正月も八回目になった。八年も経つと年寄りもさらに年をとる。年寄りがみんな元気に年をとると、入所者の平均年齢が上がって施設もまた年をとる。

八年前は入所者もみな八歳若かった。施設内は体操や遊びリテーションなどで、入所者と介護職員の元気な声が満ち溢れていた。元日は施設裏手にある通用口を開き、お年寄りたちが隣接する神社まで出かけて行ったものだった。

次第に入所者が年をとって外出が困難になると、施設内一階ホールに神社をつくり、入所者全員と介護職員、そして家族が集まって初詣をし、一緒に温かいうどんとおせち料理を食べて新年を祝ったものだった。今年はそろそろ年寄りの施設内移動も困難になり、各階に小さな神社を作り、各フロアごとの小さな新年会になった。

駅前から老人ホーム行きの乗合バスに乗ったら随分混んでいる。さすがに元旦は親に面会する家族も多いのだなと眺めていたら、みんな手前の団地で降りてしまい、結局終着バス停に着いたとき客は二人だけになっていた。

かつて老人ホームの元旦といえば面会の家族で大混雑し、たいそう賑やかな新年会で大家族になったような温もりを感じたものだったが、今年義母のフロアで一緒におせちを食べ、新年をともに祝った家族はほかにおられなかった。

親が長生きして百歳も珍しくなくなると、年寄り本人はもちろんのこと、施設自体も年をとるし、入所者の家族もまた年をとり、老親への面会どころではない七十過ぎた子どもたちも多いのだろう。夫婦揃って面会に通えることに感謝し、家族に振舞われる可愛いおせちと缶ビール(ノンアル)をいただいてきた。


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