地震リスク delphis manta blue

身近な地震リスク 減災を目指して

<復興を願い 2011.3.11東日本大震災>
<未曾有の巨大災害 記録>

国民の地震災害補償は・・・

2011-10-22 | 地震リスク

東日本大震災では2兆円を超える地震災害保険・共済金が支払われ、被災者の生活再建に役立ったといわれるが、一方でその保険・共済の制度の健全性・安全性・確実性を考えた場合には制度運営に課題が多く、迫りくる首都直下地震、南海トラフ巨大地震等の前に確固たるものに抜本的な制度改善をする必要がある。

前回、地震保険の国営化を提言したが、一方で民間のみで地震災害補償をしている「むてき」建物更生共済の存在を考えておく必要がある。地震保険は民間保険会社と国が共同で運営しており、万一、民間保険会社が破たんしても関係なく契約者保護機構が100%補償し、5兆5千億円までは国が政府再保険で確実に保険金を支払う仕組みだ。

一方、建物更生共済は運営主体がJA共済であり、国への再保険はなく、海外などの再保険会社への責任転嫁、CATボンドなどの資本市場を裏付けとして共済金が確実に支払われている。しかし、海外への再保険は今回の東日本大震災をはじめとする世界的な自然災害により、再保険料の高騰や引受キャパシティーに制限が加わり不安定となっており、今後共済掛金の値上げなどの恐れがある。

建物更生共済の契約件数は現在約1,100万件あるが、2007年発行の共済総合研究によると農家戸数は全国約200万件しかなく、員外の契約者がいるにしても、農家戸数の5倍の契約件数が示すように1戸あたり複数口の契約となっているのではないだろうか。すなわち建物更生共済が成り立っているのは巨大地震が発生しても首都圏などの大都市圏には契約が少なく、最大の共済支払額は限られた金額となっており、その上で、きめ細かい被害調査や共済金支払区分が可能な制度運営で成り立っているからではないだろうか。

我々国民の関心は地震災害時に失った家や生活道具の財産を元通りにする生活再建に必要な資金が賄えるのかである。地震保険・共済ともに全壊・大規模半壊だけでなく一部の損害まで補償している。しかも支払われる保険・共済金の上限は価格の50%までだ。先日の日本経済新聞の記事に東日本大震災で地震保険保険金の約70%が一部の損害に支払われたとされる。

本来救うべきは一部損害の被災者ではなく、全壊・大規模半壊により家を失った被災者に100%補償することではないだろうか。全壊・大規模半壊の被災者を対象とした被災者生活再建支援制度と一体となった国営地震保険を創設し、最低限の国民への補償を充実した上で、さらに国民ひとりひとりの生活水準に応じた保険・共済金額、一部の損壊までの補償の要求は民間による自由な商品設計の保険・共済に任せるべきではないだろうか。

<農協共済総合研究所 共済総合研究>

http://www.nkri.or.jp/PDF/archives/sogo_51_suzuki.pdf

http://www.nkri.or.jp/PDF/2011/sogo_63_watabe.pdf


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