祈りを、うたにこめて

祈りうた(命の喜  二〇二二・クリスマス)

二〇二二・クリスマス


産声をシカトしているクリスマス


棄てらるる聖菓見つめる飢餓の子等


停電の床に寝かせて子をあやし


   忘年会後の電車で眠りこけ
   終着駅まで乗り過ごした酔客

   厳寒のクリスマスイブ
   売れ残るケーキどっさり 翌日ゴミ箱

    戦は止まない 大雪の中でも停電の夜にも
   産声が難民キャンプの泥の床にか細く上がる

   まっくらな地球 
   満天に不幸きらめく降誕祭(西東 三鬼)


 父のかなしみ母のかなしみ聖誕祭


母の乳に馬糞嗅ぎたるクリスマス


   天にはわが子を地上へ送った父なる神の
   真っ青なさみしさ

   地には神の子をヒトとして迎えねばならない
   若夫婦のかなしさ

   宿から門前払いを喰った若夫婦
   家畜小屋で産み落とした神の子

   にもかかわらず 児は輝き
   にもかかわらず 児は手足をばたつかせ


降誕祭いつわりなきのひとと逢い


●ご訪問ありがとうございます。
 雪で真っ白の日本列島、血まみれの世界。その谷間に病んだ人、傷ついた
人、立ち上がろうと自分を鼓舞している人の澄んだ涙が流れています。
 私は自分に言い聞かせます。―世界の夜はどんなにか深い、「にもかかわ
らず」、真の光は照らし続けているのだと。気づきさえすれば、灯は自分の胸
に輝いているのだと。

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