ヨマナイドクショ

あらすじが最後まで書かれていれば・・・読んだ気になれるのに

天使と悪魔(上)

2007-06-10 | 「本」完全あらすじレビュー
『天使と悪魔(上)』 文庫版
ダン・ブランウン著
角川文庫

主人公は、同じ著者の小説『ダ・ヴィンチ・コード』でも大活躍したロバート・ラング
ドン教授。こちらが1作目で、『ダ・ヴィンチ・コード』は2作目です。『ダ・ヴィンチ・コード』の中にもこの作品での主人公の活躍ぶりが少し触れられています。


ハーヴァード大学の図象学者ロバート・ラングドンはある日、スイスの科学研究所“セルン”の所長マクシミリアン・コーラーから「イルミナティ」という紋章についての意見を求められます。その紋章は全裸の男性の死体に焼印となって押されていたのです。
このイルミナティは、17世紀に結成されたとされる秘密結社で現在は存在しないとされています。
電動車椅子に乗り、どんよりと曇った瞳で非情な印象の所長コーラーに呼び出されたラングドンがスイスのセルン研究所へ行きます。殺害された死体を目の当たりします。殺された男ヴェトラは研究所でも特に優秀な科学者で、司祭の資格も持っており、神の存在を証明するために科学を研究してきた人物でした。間もなくしてヴェトラの養女ヴィットリアがやってきます。ヴィットリアもまたこの研究所の研究員で海洋物理学者です。
ヴェトラ親子が研究していたのは、反物質。コーラー所長にも秘密裏に行われていた実験の結果、反物質の精製に成功しており、殺人はそのやさきの事件でした。ヴィットリアに案内されて地下深いラボに行くコーラーとラングドン。そこには持ち出すことは不可能なはずの反物質がなくなっていました。この反物質、装置から外したら6時間以内にもどさなければ、大爆発を起こす兵器と化すことをヴィットリアから説明されます。反物質はイルミナティと名乗る結社の手によって、バチカンへ運び出されていました。

このままでは、バチカンが真夜中0時に反物質の爆発で消滅してしまう。「イルミナティ」を読み解くため、そして反物質を取り戻すため、ラングドンとヴィットリアはローマに向かいます。
その頃ローマ・バチカンでは、15日前にローマ法王(教皇)が亡くなり、新しい教皇を選ぶためのコンクラーベという儀式が行われようとしていました。各国
の枢機卿がバチカンに集合。中でも教皇候補は4人。バチカンを守るスイス衛兵隊隊長オリヴェッティは、ヴァチカン市国内外に設置している無数の監視カメラの一つに見たことのない暗がりの場所を映し出されていること、そして4人の教皇候補の姿が消えたことに四苦八苦していました。

次の教皇が決まるまでの間バチカンの最高責任者となるのが、亡くなった前教皇のカメルレンゴ(=教皇侍従)のカルロ・ヴェントレスカ。カメルレンゴとしては異例の、若いヴェントレスカは思慮深くまた若いたくましさも兼ね備えた人物。
オリベッティが阻止しようとしましたが、ラングドンたち2人は、カメルレンゴに直訴します。
カメルレンゴの元に、イルミナティのハサシン(=暗殺者)と名乗る男から脅迫電話が。

4人の教皇候補者を一時間ごとに一人ずつイルミナティの啓示の道となる場所でそれぞれ殺害し、どこかに仕掛けた反物質が最後にはバチカンを破壊する・・・。目的はキリスト教への復讐か?
カメルレンゴの決断で、ラングドンとヴィットリアは、イルミナティの創設者とされるガリレオの記した古書を手がかりに、4人の教皇候補者が殺されるであろう場所、啓示の道の道標を探し出します。

その頃、コンクラーベの進行役を与ったモルターティ枢機卿は教皇候補者4人全員が会場のシスティーナ礼拝堂に姿を現さないことをひどく憂慮していました。
コンクラーベが始まれば、礼拝堂の入り口は堅く閉ざされ、外界との接触は全くできなくなり、4人の枢機卿が戻ってきても入る事が許されません。
また、モルターティ枢機卿は亡くなった前教皇とは旧知の仲でした。前教皇に思いを馳せ、奇跡の子と言われたヴェントレスカにも労いの気持ちでいました。

ヴェントレスカは、父の顔を知らず母親と共に敬虔なカトリック教徒として育ちました。幼い頃から母親に「神が素晴らしい計画をお持ちですよ」と言われ、毎週の礼拝を熱心に通っていました。
あるとき旅先で立ち寄った教会で爆弾テロがあり、教会にいた数十人が1人を残して全員亡くなるという事件が起りました。その残った1人がまだ子どものヴェントレスカでした。重傷を負いながらも奇跡的に生き残ったその子を、前教皇が引き取り育て、やがてカメルレンゴにひきたてたのでした。

さて、第一の場所は、サンピエトロ大聖堂と突き止めたラングドンとヴィットリアは、オリヴェッティとともに現場に向かいますが、目印となるものがありませ
ん。
もう時間がありません。二人が探していると、観光ガイドからヒントを得ます。
本当の場所はサンピエトロ大聖堂ではなく、サンタ・マリア・デル・ポロロ教会。急ぎ駆けつけましたが、一足遅く、すでに一人目の教皇候補者は殺害されていました。
ラングドンが推理したヒントは、「ベルニーニの彫刻」。
サンタ・マリア・デル・ポポロ教会にあるベルニーニの彫刻「ハバクと天使」の天使が示す方角は・・・。
天使の指し示す方角に次の目印がある。そう睨んで、ラングドンたちは考えます。

一方、コンクラーベの取材のためにイギリスBBCから派遣されていたのが元タブロイド紙の記者グリッグとチニータという肝っ玉の据わった女性カメラマン。
ほんの数十秒の生中継のために派遣されたグリッグは喉から手が出るほどスクープが欲しい。
そんなグリッグの元に、イギリスBBCを通じて匿名の男から教皇候補者がコンクラーベ会場にはおらず、事件が起きるというタレコミ電話を受けます。
電話の指示通り、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会に向かうと、何やら人を運び出している様子や誰かが教会をよじ登っている様子が見えます。
どうやら運び出されているのは殺されたであろう枢機卿。グリッグとチニータは本腰を入れて、このスクープをモノにしようと行動を開始します。

(中)へ続く。