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WWIIの記憶問題:東アジアに及んでる&局地的現象

2020-05-12 03:44:32 | WW1&2

5月9日のビクトリーデーに際して、米英政府がナチに勝ったのは俺ら宣言をしたことからあちこちで憤激と驚きが見られる今日この頃ですが、これは、前にも述べた通り、実のところ、米英政府が戦後一貫して取ってきた作戦。

要するに、ノルマンディー作戦こそハイライトという建付け。これは嘘。スターリングラードでドイツの勝ちはもう見えなかった。そこから云々というのは別途いろいろ書いたのでここではパスするとして、

じゃあ今般の英米の漫画みたいな話は何なのかというと、新しくNATOに組み入れた中・東欧諸国への応援と、それを通したNATO体制護持に資するトークという側面はあるでしょう。

NATOは1インチも東に動かさないといってゴルバチョフを納得させていわゆる「冷戦」が終ったのに、後から東方拡大して今ではロシアの周辺に広がってしまったのは周知の通り。軍事同盟をショッピングモールの会員権のように入りたい人を入れましたとか言うのは間違ってると米リアリストの一部が再々怒っている事態ではある。

NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた

クリントン政権の時から、バルト3国、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアなどが加わり、NATOはこれによって黒海にもバルト海にも進出し、ヒトラーがやりたかったことを達成したようなもの。

これらの国は、大ざっぱにいえばソ連に侵略されていたのでアメリカさんに解放してもらって現在ソ連を敵としているというのが、まぁなんてか基本ポジション。だから、ソ連は常に悪者でなければならない。

このうち、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアは1941年にソ連を攻撃した国。ポーランドはベルサイユ条約で出来た英米の戦略拠点みたいなものなのでちょっと事情は違うが、ドイツ人にあんなに殺されて、足蹴にされて、それでもロシアを恨む国。それがお仕事。

 

で、じゃあ、何も新しくないのかというとそうではなくて、5年前の戦後70周年のところから新しい傾向が見えている。

それは、この英米というかUS/EU/NATOとでもいうべき集合体の歴史修正主義は止めるべきであるとするキャンプに中国が入ったこと。北朝鮮は明言はしてないけど事実上入ってる感じ。

 

今回も、習近平氏がWWII戦勝記念を祝してプーチンと話していた。

Xi Jinping hails friendship with Russia on WWII victory anniversary
Updated 22:41, 08-May-2020 

https://news.cgtn.com/news/2020-05-08/Xi-Jinping-hails-friendship-with-Russia-on-WWII-victory-anniversary-QkDu1S4gRa/index.html

 

そして、2015年と同様、

ロシアと中国はファシストと戦って勝ったという立場を強調してる。

去年、習近平は、中露国交70周年を記念した場で、中露関係は再び歴史的なモメントを迎えた、って言ったわけですので、なおさら、この趣旨は貫徹しているものと思う。

再び歴史的なモメントを迎えた中露 by 習

 

そこで、習さんとプーチンさんの会談では、現在ロシアが戦ってる第二次世界大戦の結果の保全に中国も協力しますよ、という言葉もあった模様。

China ready to safeguard results of WWII together with Russia, says Chinese leader 

https://tass.com/world/1154487

"China is ready to follow together with Russia and firmly safeguard the results of the victory in World War II and protect international justice, 

 

北朝鮮も、5月9日にもロシアに祝意を寄せていた。

で、興味深いのは、NHKが北朝鮮が祝電を打ったことを書いていた。

北朝鮮 キム委員長 プーチン大統領に祝電 友好強調
2020年5月9日 11時44分

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200509/k10012423331000.html

 

日本にとっては2週間前のこの話から入る方がよほど適切な筋道だと思うけどね。

北朝鮮:朝鮮の解放のために戦ったソ連を語る

 

で、これらをあわせて見てみるに、多分、9月2日の日本の降伏の日にあわせて、プーチンが中国に行くなりして第二次世界大戦の終結を祝う催しをしたりするのではなかろうか?

なにせ、東アジアには第二次世界大戦の結果を受け止められない国が存在するわけですし。

第2次大戦の結果を認められない唯一の国

(5月9日のパレードはコロナで中止になったけど、コロナ騒ぎが治まったらやる予定にしてる。最短では1945年に本当に祝賀パレードをした6月終わりではないのかと噂されている)

 

従来、欧州戦線の方だけが不釣り合いに大きく描かれている傾向があって、極東の方のV-Jデーは、もっぱら米英と日本の話みたいな感じで終わってたけど、日本の敗戦はソ連、中国を含む連合国に対する敗戦なので、こういう描き方は言うまでもなく間違っている。

言うまでもなく、片面講和とかいう、それは講和なのだろうか?という事態を放置したツケですね。

ということなので、戦後70周年を記念する年に、アメリカとの関係だけ見て、戦った相手とも仲良くなってる日本ちゃん!みたいな雰囲気で終わったことのツケも払う始末、といったところが現状なんだけど、でも、期待しても何もでないでしょう。日本は無視するか、むしろだしぬけにポーランド説(第二次世界大戦はスターリンとヒトラーが起こした)をぶち上げてキャンペーンを張るぐらいのことをしても驚かない。

渾身の冷戦護持派大勝利であるらしい日本

 

■ 局地的病

しかし、第二次世界大戦におけるソ連の役割について、ロシアが孤立してる、ロシアは欧州の解放をしてない、みたいな記事が現在多数あるわけだけど、よく考えると、中国、北朝鮮はソ連は大きな役割を果たしてファシストと戦ったという立場を取るのが自然だし(冷戦期の政治事情はともかく)、インドが、この戦いでロシア/ソ連がとてつもない犠牲を払ってナチスが倒れましたという点に疑問を持ってるとも聞かない。

NATOだからといってトルコがバンデラ主義者史観にはまってるとも聞いたことがない。むしろエルドアンは、ナチズムは終わったのかと思ったら生きていたんだなと揶揄した発言をして物議をかもした。

トルコ大統領「西側ではナチズムが生きている」

 

当時ソ連と仲が良くなかなったイランは、ホロコーストは無かった論を展開してたことで名高いので(福音派の伏兵なのかといった趣だった)、ここは若干怪しいけど、だからといってソ連が苦労してたことを否定するところまではいかないだろうと思う。

ヨーロッパもEUとしては馬鹿な話に付き合うしかないとしても、ドイツ、オーストリア、フランス、フランスあたりの当局者や知識人がソ連の役割を否定してるとも聞かないし(たとえ一般人の認識がアメリカ優位だとしても)、第二次世界大戦を起こしたのはヒトラーとスターリンです、というポーランドが触れ回って現在問題になってる説に納得しているとも聞かない。

ドイツ外務省は今年、ポーランドを攻撃したのはナチ政権です、と言い切ってるとどこかで読んだ。そりゃそうでしょう。ポーランドの説を取るのは、あまりにもリスキー。

オーストリアは、併合されてドイツと共にソ連を攻めた側だから敗戦国になる可能性があったのに、英米+ソ連がオーストリアをドイツから独立させることを1943年に決定したという非常に特殊な事情で中立国となっているので、ソ連を悪し様に言う立場にはない。

 

ということで、よく考えると、第二次世界大戦の結果についてソ連を否定的に描こうとするという傾向は、欧州の中・東欧勢と日本あたりと、それを統括する英米の一部にだけ局地的に強く表れている現象に過ぎないのではあるまいか?

アメリカの一部の最大手は福音派で、福音派はとにかく、スターリンは全体主義/共産主義、我々はこの脅威と戦わないければならない、というのがある種のテーマだから理性で訴えても無駄。もうどうしようもない。悪魔と戦ってる気でいるから。

あと、リベラルの側では、ソ連は全体主義、我々は個人の自由を守る立場から云々というのもあるね。これは一体どこから来たのだろう? リベラルの人たちは福音派と同じことを言ってるって知ってるんだろうか?

いずれにしても、たとえ1990年にソ連は全体主義なので倒すべきと思ったとしても、それをもって1945年にナチスを倒したソ連の功績が消えるわけではない。


 


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なぜヒトラー・スターリン同罪論について (特命希望)
2020-05-15 00:22:25
こんばんは。ポーランドのタカ派が主張するヒトラー・スターリン同罪論が西側で広まってしまった現状についてですが、僕はやはりカチンの森事件に対する視点が原因だと思います。
確か、民族主義者を恐れたスターリンがベリヤにこっそり命令を出して処刑させたというのが西側での冷戦後の見方で、ポーランドは大国に挟まれた哀れな被害者だという「物語」が信じられてきましたよね。
でもポーランドでの他スラブ人やユダヤ人に対する根強い差別や、ナチス以前からあったポーランド・ファシズム政府のユダヤ人迫害政策などをTAKUMIさんから知らされた今では、どこまで信用していいのかわからなくなりました。
TAKUMIさんはこの事件について、どのような介錯をしてらっしゃるでしょうか。ポーランド軍人がファシストに内通しているとかの不幸な誤解による処刑で意図的なでっち上げではなかったか、もしくはソ連以外の何者かによる犯行だったとお考えでしょうか?
わかりません (ブログ主)
2020-05-15 15:12:01
特命希望さん、

カチンの森の話は、ソ連の戦争犯罪を象徴するものとして冷戦終盤から話題となり、ワイダなどを通して日本にも売り込まれました。

在米ポーランド&ウクライナ人たちはこの問題を言い募って、ソ連がいかに酷いかをよくいっていたものですが最近あまり書き込みもみられなくなりました。

それはこの地平で死んだ人の多さがあまりにも多いのに、なぜポーランドの事件だけが取り上げられるのかに疑問を持つ人たちが増えたからでしょう。

カチンの森の犯人が誰なのか私はわかりません。手口はアインザッツそのものだなとはしばしば思いますが。

しかし、わかるのは西側にとってポーランド将校の命はソビエト市民の命より100万倍ぐらい重要なんだなということぐらいです。

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