ドイツが、古くなったトルネードを修理して使ってたけど、もう限界というので新しいのを買おうとし、折からのグローバル押し売り屋(笑)にF35を勧められていたが、買わないと断った模様。
軍事ニュースサイト「Defense News」は、ドイツ国防省はトーネードに代わる機体として米国の第5世代戦闘機F35を調達しないと報じた。
https://jp.sputniknews.com/politics/201902025878860/
代わりに何を選択肢に入れているかというと、ユーロファイター タイフーンか、米F/A-18。
で、この場合、ひょっとして米の核兵器を搭載できないんじゃないかという懸念があるらしい。
Germany's Snub Of Lockheed’s F-35 Unleashes Dramatic Geopolitical Consequences
逆に、ひょっとしてその含みを表明してある種の抗議を行っているのかなと考えないでもないですね、私は。
折からのINF条約からの米の勝手な撤退に対して、欧州方面、就中ドイツは非常に懸念していると思うもの。
この条約を撤退することで、中期的には軍拡が懸念されるが、短期的には、アメは、要するにフリーハンドになることで、より予想不可能な存在になって、それだけロシアにプレッシャーをかけられると考えているんだと思う。
つまり、俺らはヤクザだと。だからいつなんどき何をするかわからん状態にしてるわけ。これって、個人の喧嘩なら勝手にすればいいけど、核兵器だのミサイルだのの配備についてこの態度というのは、もうね、無責任すぎてお話にならない。
中国も正面から反対しているが、それは当然。アメリカ国内でもこの件は事情を知る人であればあるほど懸念している。
この態度というのは、要するにですね、まだ米ソが話し合いのテーブルについていない、1950年代みたいにしようとしていると考えてみれば、その危険さがわかるというものではないかと私は思う。
米は、ソ連相手に300発の原爆落として6000万人殺せば「勝てる」と思った作戦立てた人たちだということはつとに知られているが、その頃はまだミサイルの時代ではないので、爆撃機に原爆詰んでうろうろして、ソ連に圧力をかけていた。24時間、フル稼働でバカみたいにソ連国境をぐるぐるまわって、脅しをかけてたわけ。
その結果、自分で、少なくとも4発の原爆を落っことした。確か、アルスランド沖、スペイン沖、沖縄の海溝のあたり、そして1つは米国内。
頭がおかしいとしかいいようがないことを本当にやっていたのがアメリカ様なわけですよ。そこからミサイルの時代に入って、米ソが話し合う恰好になって多少はマシになった。どうしてかとうと、ホットラインを設置したり、互いに専門家同士が交流してて政治家がバカなことを言ってるその意図は本気なのか否かを確かめあっていたりしたから。
その意味は要するに、自分たちが扱っているものがどれほど危険か分かっている、ということですね。
これを、後世から見て、冷戦は八百長だったみたいに面白おかしく語ってる人が日本でも散見できるけど、それは全くの間違い。実際非常に危険なことをくぐりぬけて、ようやくたどり着いたメカニズムがあったわけですね。
で、現在のアメリカは、一度ロシアが弱くなったので、そこで核戦争を勝てると思い込んだ。そこから戦略を立て直させてない。だから、米ロ間のパイプを次から次から切っていって、ロシアを脅していけば相手は必ずひるむはずだとまだ思ってる。
ところがロシアはパリティー(核戦争における同格)を回復して、これ以上お前に譲ってロシアを失う気はない宣言をしている。
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
ロシアは必ず報復できる能力を持っているし、通常戦力で小さいロシアは、危機を察知して最初に撃つ可能性もある。だから追い込むことは危険だから、バカみたいにミサイル防衛網たらいう攻撃施設をロシア国境に配備するのは止めろと言われ続けて10年。アメリカは止めない。(日本もこの仲間ですからね)
陽動作戦でひっかけあって、本当に核戦争になる確率は高くなってる。
ということなので、INF条約問題はどうにかしないとならないテーマ。しかしトランプ政権でそれが出来る感じはほぼない。わかってそうな人が出てきてないもの。
■ ドイツの状況
ともあれ、ドイツの状況。
ドイツは、ノードストリーム2、つまり2本目のバルト海のパイプラインは今年の11月に完成の見込みと先ごろ発表していた。
Nord Stream 2 gas pipeline to open by November
https://www.dw.com/en/nord-stream-2-gas-pipeline-to-open-by-november/a-47277058
トランプが口ぎたなくドイツをののしりながら止めさせると騒いでいたが、まったく関係なく進んだ。
ただ、この他にLNG施設を増加した。仕方なくアメリカから高い値段の天然ガスを政治的理由で買うことでドイツ政府は妥協したんだと思う。
ただ、LNG施設は別にアメリカ専用ではないから、結局ロシア産のLNGが入ってきて、長期的にはアメリカ産は負けるだろうと想定されている(笑)。
そして、こんな状況のドイツは、実のところ、ロシアをそんなに脅威扱いしていない。それはあのビジネスの大きさから考えてもそりゃそうでしょうといったところ。
1月初めのドイツ Build誌の世論調査で、ドイツにとって脅威はどこですかとの問いに、
1位はロシアだった、しかし、1ポイント差で2位はアメリカだった、というのが大笑いのネタになっていたところ。
Russia tops list of Germany’s biggest fears… but US is only 1 point behind
https://www.rt.com/news/448209-germans-russia-us-biggest-fears/
また、別途拾ったものではこんなのもある。
ドイツにとっての信頼できるパートナー。青がアメリカ、赤がロシア。1番右が2017年2月。
https://twitter.com/ianbremmer/status/827517286831517696/photo/1
これみるとわかるのは、2007年頃には既にかなり近接していて、2008年はグルジアで戦争があってロシア叩きが大騒ぎになってそこからUSAが上昇。
次に2014年がクリミアだが、ロシア支持はさほど変わっていない。つまり20%ぐらいが岩盤らしい。アメリカのは波が大きい。
で、こういう感じのデータはこれだけ見れば、アメは支持されていると言えるけど、しかし、反ロシアのプロパガンダをあれだけやってもこうなのかというのもなかなか興味深い。ドイツの反ロシアプロパガンダは、東欧まで含めて相当にスゴイ。オリンピックのドーピングの話もドイツが発信源。
いずれにしても、ドイツとロシアの間で戦争できる感じはないわけで、NATOというのがどれだけ適当なことをやっているのかがわかる。
つか、70年も続く軍事同盟なんて設計思想に誤りがある。
もうあれだ、この際、S-400とSu-35あたりをドイツが買えばいいんだな。そうすれば、NATOの老人クラブ化を一歩推進できる。じいさんたちの昔がたりのクラブにしちゃいえばいいじゃないか。退職金のところまでは金付けてやることにして。あははは。
こういう話を3年前に言っても誰も本気にしなかっただろうけど、トルコが度重なる米の反対にもかかわらず、断固S-400を購入、導入プランに移っている以上、まったくあり得ないことではなくなってるのが現在というもの。
■ 追記
メルケルが、INF条約の完全撤廃までに180日の条件をアメリカが付けていることを生かして、その間に米露の話し合いの場を作れるよう全力を尽くすと言っている。
米は、悪いのはロシア、違反したのはロシアと叫び続けていることについて尋ねられて、重要なことは対話の窓を開けておくこと、と答えた模様。
Germany to use 6-month withdrawal period to talk if US quits INF Treaty – Merkel
https://www.rt.com/newsline/450347-germany-talks-us-inf/
■ 関連記事
トルコのS-400、あるいは自由と独立
ほんとほんと。東方政策が太陽政策の元祖ではあるでしょう。冷戦後のユーゴがあまりにも酷いから評価されなくなっちゃったけど、あんなことしたかったわけじゃない。
いろんなところでいろんな人たちが苦労してきて、なんとかここまで来たのに、アメが平和を作ってたみたいな幻想から覚めない日本に未来はない。あるのは夢だけ。