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「満城の紅綠誰が為にか肥ゆ」

2016-07-14 15:38:38 | 参考資料-室町

陛下の生前退位の説を巡って様々なことが語られるんだろうけど、私は、陛下は2015年の1月の年初のお話を考えてみても、現在の政権あるいは現在の日本の政治エスタブリッシュメントに対して、考えなおしていただきたいというお考えを強くお持ちであると認識している。まず基本はそれ

すなわち、これですね。

本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。

http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h27.html

 

 この前段には原発事故の被災者の人たちへの言及もある。

これに対して過去1.5年何が起きたかといえば、それを裏切るような形だった、と。だからといって陛下に何ができるものでもないという考えも成り立つけど、でも、諫めるのも我が務めと思われているかもしれないよ、と私は思う。

 

で、このようにして、現在の政権に対して示唆を投げかける天皇といえば、室町時代の後花園天皇を思い出さないわけにはいかない。いかないって、まぁ私の好みですが(笑)。

wikiにもあった。感心感心。


寛正2年(1461年)春、長禄・寛正の飢饉の最中に奢侈に明け暮れる将軍足利義政に対して、漢詩を以って諷諫したというエピソードは著名である(『長禄寛正記』)。

でも、諷刺というより、お諫めになったって感じでしょうね。

で、どういうものかというとこういう漢詩。(漢文そのものを解説されているサイトからお借りしました。こちら

殘民爭採首陽薇
處處閉廬鎖竹扉
詩興吟酸春二月
満城紅綠爲誰肥

 

解説されているものはとても詳しく難しいので、私が大胆にも平たい日本語にするとこんな感じ。

貧しい人々が相争ってワラビを採っている
至るところで飯櫃(めしびつ)に蓋をし、竹の門を閉ざしている
詩を作ろうにも傷み悲しいだけだ
街を覆うように咲く草花(紅や緑)は、一体誰のために咲いているんだろう

 

で、要するに、民は飢餓で苦しんでそこらの草を争って採っているような状態だというのに、足利義政は効果的なことは何もできないどころか贅沢な遊びにうつつを抜かしている。なんということだ、と、天皇がお嘆きになったということ。

満城の紅綠誰が為にか肥ゆ

という最後がいいですよね。空しいとか、世の中ってこんなものだという収め方をせず、義憤を吐露してらっしゃる。
 

■ 「花の乱」

この話は室町好きの人しか知らないんじゃないかという感じもするけど、しかし、実は90年代には公共の電波にしっかり乗ったことがある。

大河ドラマ「花の乱」の中で、三田佳子の朗読で読み下し分がしっかり読まれている。凛として非常に良かったです。そのうちDVDからクリップしてみようかな。

 

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■ 高松宮日記

それはそれとして、こういうことを書くと、民のかまどを心配する仁徳天皇の話になって、それって思いっきり現在の日本会議系の人々が描く「天皇像」のようじゃないか、ってことになるので、おそらくリベラル系統の人たちには拒否感をもたれる方もおありかもしれない。

しかし多分、日本会議系または現在のへんな右派の人たちは、室町時代については後醍醐天皇以外語りたくないと思うので、多分取り上げてくれないでしょう。あはは。

で、室町時代の天皇のエピソードとして印象に残るのは、もう一つある。

それは、1996年のNHKスペシャルで放映された「高松宮日記」の中で、高松宮妃殿下が、高松宮様は、皇族が京都にいた時分には、塀も垣根もないことさえあったんだ、それでいいんだ、みたいなことを幾度となくおっしゃっていたと回想されているところ。

ああ、それは室町時代の天皇のことをお考えになっていたのだろうと思った。室町時代の天皇は概ね、権威、権力共にボトムラインに近かったと考えられている状態なんだけど、高松宮様は、そういう時代も込で、人々と共にあるのが私たちです、みたいなことを戦争を止める過程でお考えだったということなのだろうと拝察します。要するに、天皇を神のポジションに置くような仕様に対して批判的だったということなんだろうな、と。

そして、終戦をどう迎えたものか考えていた高松宮さまと近衛文麿は、昭和天皇にご退位いただき、仁和寺に入っていただくのが一番いいと考えていたというエピソードも好き。

これって、一見すると、なんなのその時代錯誤は、という感じだけど、でも朝廷の伝統的には正しい発想だろうなと思った。これはやっぱり藤原氏でなければ出ない発想なんじゃないのか、という気もする。
 

秘録高松宮日記の昭和史[ビデオ]
中央公論新社
中央公論新社

 

■ いろいろあって日本の歴史

特にまとめではないんだけど、でもこうやって考えてみるとこの20年ぐらいの日本の報道、歴史の教え方というのは、その前の20年よりずっと幅が狭くなっていたと思う。

今谷明 とgoogleしたら選択ワードに「左翼」とか出てしまう世の中なんだなと、それも面白いけど、でもこういうバカさ加減を放置するのがいいとは私は思えないですね。

いろんな人がいて、いろんな考えがあって、その中には愚かなことも、野蛮なこともあったがその上に自分がいると考えるよりも、選択的に話を作ってしまっているような傾向が強くなってきたように思う。左右関係なく。

まぁいろいろあって日本の歴史という具合に思い起こすよすがとして、「満城の紅綠誰が為にか肥ゆ」という、義憤を思い出してみるのもいいんじゃないっすかね。
 


 

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武家と天皇―王権をめぐる相剋 (岩波新書)
今谷 明
岩波書店

 


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2 コメント

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『ブレーキ不良』 (ローレライ)
2016-07-15 08:10:33
天皇も哲学も宗教も行政の暴走のブレーキにならない『ブレーキ不良』が日本が『欠陥車』である由縁。
確かに (ブログ主)
2016-07-15 15:24:35
別の言い方をすれば、仕組みじゃなくて民ってか庶民の側に力が全然ないという驚くべき体制だったな、ってところでしょうかね。

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