大事なことは、例えば生まれて初めて買ったレコードだとか、何か青春時代の思い出の刻印があるノスタルジアとは全く関係ないという点が1つ。もちろんそういうレコードもある、しかし中学高校時代なんてお小遣いが限られていたから大したコレクションではない。社会人になって自由になるお金が増えてきた頃に第二の音楽人生が始まった、その頃が個人的黄金時代だったと言うこと。
そういう極めて個人的な体験からディグしてきたCDなので、音楽評論家が時代の名盤として推している作品はほとんどないし、その後の音楽シーンを規定してしまうほどの影響力を持ったアンセムもない。むしろ時代のエアポケットに沈んでしまったかのような作品にこそ、再聴してみてものすごく面白さを感じる。
更に悲しいことに、この時代のパーソナルチャートが見事に残っていないこと。学生時代までは紙媒体に記録していて、幸いそれらがほこりまみれながらも保存されていたので書き写した。また1995年以降は個人ホームページを立ち上げアクティブに更新してきたので、その記録が参照できる。空白時代はつまり、ディジタルに記録はしていたものの、バックアップメディアが紛失したり(当時はインターネットが商用化されておらず、個人情報漏れは大したリスクではなかった)、そもそもフォーマットが古くて読み取りができない(QICテープなんて今ドライバないでしょ)ためと思われる。理由はともかく、この時代の音楽体験の記録が残っていないため、再度レビューをつける価値があると考えたのである。
そんな訳で、僕のフェバリットを並べてみても、「~世代」的なレッテル付けは全く不可能なコレクションとなっている。当時の音楽シーンが特別面白かった訳ではない。というか、音楽シーンに特別な時代があったなんて言説には興味はない。そうではなく、音楽へのコミットの仕方がこの時代だけのものがあったせいだと思う。
ネット時代の前と後ろのはざまの時期。ネット前はもちろんメジャーの情報しか得られなかった。ネット後は情報が多すぎて焦点が絞れず口コミが頼りになった。その間に、情報が多すぎず、自分の耳(実際には聞く前に買っている。ボップのコメントとジャケ買い勝負)をあてにしてCDを買うことができた「黄金時代」が1990年代前半だったのだと思う。最近レビューしたディスクのほとんどは、今や六本木ヒルズになってしまった場所にあった六本木WAVEで購入している。僕にとっては年齢的初期衝動の時代=中学・高校時代より、音楽を完全に自分のセンスだけで選べたこの時代が一番面白かった。
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