雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

こなもん屋馬子

2012-02-23 19:02:18 | 
田中 啓文
実業之日本社
発売日:2011-10-20

田中啓文著"こなもん屋馬子"を読みました。
連作短編集です。
馬子(うまこ)という名前の女性が店主のこなもん、つまり
小麦粉を使った食べ物屋さんの店にやってくるお客さん
との出来事を書いた話です。
馬子は太っていて髪はちりちりです。
時々怒って物を投げつけます。
イルカという少女が店を手伝っています。
店を見つけて客がふらりと立ち寄ります。
材料はスーパーで買うといい、特別な調味料も使いません。
それなのに馬子が作るものはとてもおいしくて客は
毎日のように通ってきて同じものを食べ続けます。
別のお客がやってきます。なんか問題を抱えています。
馬子が解決してやったりアドバイスしてやります。
最初の客もそれに連動して自分の問題を解消していく
という形式の連作短編集です。
しばらく店にいかないことが続き、さあ行こうと
また行ってみると店はどんなに探しても見つかりません。
現実離れした話でもあります。

お客さんにつけたあだ名が題名になっています。
その時の店で出していた食べ物を表しています。

"豚玉のジョー"
ジョーと呼ばれる客がよくいっしょになる女性の二人
づれがいます。
片方の女性がもう一方の女性の個人情報を聞きだそうと
いろんな話題を持ち出します。
うまく聞き出したところで馬子がその裏を暴きます。
ジョーは警察官です。

"たこ焼きのジュン"
ジュンが食べている時よく会うのはラジオのデスク
ジョッキーです。
昔は人気者の歌手でしたが人気がなくなり仕事は
ディスクジョッキーしかなくなりました。
それが不満で店でぐだぐだ愚痴をいっています。
馬子が人間観察のおもしろさを伝えます。
彼女は変わっていきます。
ジュンは彼女と同業者です。

"おうどんのリュウ"
リュウがよくいっしょになるのは相撲取りの昼白虎です。
昼白虎は大関です。彼の行動が批判されています。
力任せの相撲で最近は勝てなくて悩んでいます。
腰を痛めているのを馬子に見抜かれます。
彼女にうどんを作るために小麦粉を練ったものを踏んで
腰を強くするよう勧められます。
リュウは落語家です。本当はうどんが嫌いです。
うどんを食べる場面がある話をやることになりました。
うどんを食べ続けていますがそれでもうどんは好きに
なれません。
馬子にうどんをそばに変えたらとアドバイスされます。

"焼きそばのケン"
ケンが食べていると暗い流しの歌手がギターをかかえて
やってきます。
店に来ていたラップ歌手にざんざんに嫌味を
言われます。
歌手はやれといわれラップを即興で歌います。
実は彼は有名なラッパーでした。
ケンはプロデューサーです。

"マルゲリータのジンペイ"
石焼き芋の屋台を改造して馬子はピザの屋台をしています。
許可がないから営業するなと見つかるたび警察官に
こごとをくらっています。
白い粉が入った鞄をめぐって騒動が持ち上がります。

"豚まんのコーザブロー"
経営難に陥った児童養護施設の経営者と施設で育った
男女が店にやってきます。
経営難につけこまれて施設を手放さなければならない
よう追い込まれています。
馬子の演出で芝居を打つことになりました。
コーザブローはテレビの制作をしています。

"ラーメンの喝瑛"
喝瑛は禅僧です。ラーメンが好きで食べ歩きをしています。
師にラーメンの定義はなにかと問われました。
ずっと食べ歩いていますがわかりません。
究極のラーメンはない、と馬子に言われます。
ラーメンは"無"です。

店が消えてしまうというのはおもしろい発想です。
馬子が次々と別の場所の別の店で別のものを売るためには
店が消えてしまうのが一番です。
人の心を見抜きうまく解決してやる結構かっこいい
おばさんです。
イルカももっと活躍するのかなと思っていたのですが
そこにいるだけみたいであまり存在感はりませんでした。

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