雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

沖で待つ

2009-08-28 21:09:36 | 
絲山秋子著"沖で待つ"を読みました。
芥川賞受賞作だそうです。
紹介記事を読んでおもしろそうだなと思って
図書館で借りました。
ずっしりしたカツ丼を食べるつもりだったのに
ケーキが出てきたという感じになりました。
あまり人の感想を聞いちゃいけませんね。
この本にがっかりたというのではありません。
いい本でした。
1時間程度で読めます。
書いてしまいますが読んでみようという方は
この下はスルーして下さい。

及川さんこと私が語り手です。住宅設備機器メーカ
に就職します。及川さんは女性です。
同期に牧原太がいます。関東出身の二人は入社して
九州へ配属されます。
バス、トイレ、キッチンの設備の営業職です。
特約店や設計事務所に打ち合わせやらクレーム
処理やらに飛び廻る日々を送ります。
同期の仲間として気軽に言い合える関係です。
恋愛感情はなしです。
牧原は太ってきて回りの人に太っちゃんと呼ばれて
親しまれています。
事務所の先輩でベテランの井口さんと結婚します。

及川さんは茨城へ転勤になります。太っちゃんも
数年後に東京へ単身赴任になります。

何年かぶりに会って太っちゃんが秘密はあるかと
言い出します。死んでしまった後に秘密を人に
見られたくない、その時にはパソコンのハード
ディスクを壊してくれと、先に死んだら残った
方が壊す約束をします。

太っちゃんが突然死にました。投身自殺の巻き添えを
くって死にました。
私は渡されていた鍵とドライバーと手袋を持って
部屋に忍び込みます。約束通りにハードディスクを
壊します。

九州の太っちゃんの家を訪ねた時に井口さんから
太っちゃんが残したノートを見せられます。
そこには詩が書かれていました。
これが人に見られたくないものだったのです。
それなのにノートを残してしまってそのかけらを
人に見られてしまいました。

「俺は沖で待つ
小さな船でおまえがやって来るのを
俺は大船だ
何も恐くないぞ」

題名の沖で待つはこの詩からとられています。
いっしょに仕事に励んだ仲間としての友情。
わかるような気がします。