かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠211(中国)

2016年08月12日 | 短歌一首鑑賞

   馬場あき子の旅の歌28(2010年5月実施)
        【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)172頁
         参加者:曽我亮子、F・H、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
         レポーター:渡部 慧子
        司会とまとめ:鹿取 未放

211 ぽんと咲く蓮の花より生れたる童子よろこびて水に跳ねゐつ

      (まとめ)
 莫高窟の壁画の中にこういう童子の絵もあるのだろう。蓮はぽんと音をたてて開くとよく言われるが、蓮から生まれた童子が喜んで水に跳ねている楽しい図である。あるいは西方浄土の蓮の池に極楽往生をして誕生した童子がいて、それを祝う飛天が描かれている絵かもしれない。「よろこびて」の字余りになる「て」に含蓄がある。(鹿取)


          (レポート)
 詞書きや題をともなっていないが、蓮華蔵世界の一事象、童子誕生絵図を見ての一首であろう。はちすの咲く音を聞きにゆくという巷の話もあるところから初句、二句はうなずける。三句から五句の鑑賞の前に、釈迦誕生説話を紹介したい。それは生まれてただちに歩き、天上天下唯我独尊とつぶやき、天を指したというものだ。これにちなんで、掲出歌の「童子」は「蓮の花より生れたる」や、すなわち「よろこびて水に跳ねゐつ」と理解したい。清浄な世界の象徴「蓮」から生まれ、煩悩に汚染されない仏性としての童子誕生図とは、これの世に生まれいづる全てを祝福する象徴図であろう。そう感受された作者の言葉「よろこびて」が輝いており、「水に跳ねゐつ」も童子に愛情をこめた物言いだ。(慧子)


          (当日発言)
★お釈迦様は蓮の花からは生まれていないし、「天上天下唯我独尊」の話は紹介されなくても誰で
 も知っています。それから「童子誕生絵図」が莫高窟にあるんですか? (藤本)


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