かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

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馬場あき子の外国詠68(スペイン)

2015年10月12日 | 短歌一首鑑賞

 馬場あき子の外国詠8(2008年5月)
       【西班牙 Ⅰモスクワ空港へ】『青い夜のことば』(1999年刊)P50
       参加者:N・I、M・S、H・S、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:H・S
       まとめ:鹿取未放

  ◆ものを書くことや鑑賞に不慣れな会員がレポーターをつとめています。不備が多々ありますが
   ご容赦ください。

68 歴史の時間忘れたやうな顔をしてモスクワ空港にロシアみてゐる

       (まとめ)
 ここに詠われた「歴史の時間」とは何を指すのかを巡って会員が活発に応酬をした。議論を交わすことでみんなの認識が深まっていくことを意義のあることだと思った。
 「歴史の時間」をロシア古来から現代までの歴史だ、とみる見方と、学校で習った歴史教育のことだとする二つの意見が出された。また、客観的なロシアの歴史ではなく、日本や自分との関わりのあったロシアのことだという見方も出された。思うにそれらの意見全てを包み込んだような「歴史の時間」であろう。ロシア建国から始まって日露戦争あり、ロシア革命あり、シベリア抑留あり、戦後のもろもろの推移とその結果としてのソ連崩壊もある。それらを作者が忘れているわけではないが、もろもろは一旦脇に措いて一旅行者として目の前のロシアを興味津々の眼で見ているのである。ここはトランジットのようだが、空港の職員、行き交う人々、売店のありよう、トイレなどの設備、観察するものはいくらでもある。
 馬場には「見る」歌に秀歌が多いが、この歌もその独特な「見る」歌の系列上にある。(鹿取)


     (発言)
★ロシアを自分や日本との関係で身に引きつけ、今のロシア、これからのロシアを見てやるんだ
 という思い(藤本)
★高尾太夫の「忘れずこそ思ひ出さず候」に通じる思い(M・S)
★レポーターはいつも字余りにこだわっていますが、4句のロシア空港のような固有名詞は長く
 なっても仕方がありません。あまりそこに意味づけをしない方がいいです。(鹿取)  


     (レポート)
 アレクサンドル二世による1861年の農奴解放令があり、日露戦争の敗北後、血の日曜日事件を契機に第一次ロシア革命へと発展する。1917年に300年続いたロマノフ王朝は倒れ世界で初めての社会主義政権が成立した。(旺文社 世界史事典より)その後の変遷を経ての今日のロシアである。国への入り口であるモスクワ空港にあって、歴史の年代等は頭に置かず、細くも、広くも、短くも、長くもあった目には見えない流れ去った時間をじっと見つめている作者の姿が目に浮かぶ。初句、4句が字余りにうたわれて一首の中で際だっているようにも思えるが、今見ているロシアを生き生きとさせており、特に位置の明確さがそれを深めている。歴史の見方をふと考えさせられる。(H・S)

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