かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠233(中国)

2017年10月19日 | 短歌一首鑑賞

     馬場あき子の旅の歌30(2010年9月実施)
      【李将軍の杏】『飛天の道』(2000年刊)184頁
       参加者:N・I、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:曽我 亮子
      司会とまとめ:鹿取 未放


233 国王の意志なりし后妃剃髪図無惨のごとし並みて削がるる

      (レポート)
 国王の命で後宮の皇后・妃全てが並んで剃髪されている壁画はまことに残酷な絵である。女性にとって正視できないくらい悲しい絵ではあるまいか…。この絵は莫高窟第445窟にある弥勒経変ではないかと思われる。「経変」とは教典の内容に基づいて描かれた壁画を指す。第445窟は中期(盛唐)の造営で、本邦では奈良時代に当たる。第445窟の壁画は現在未公開、写真撮影も許されていない。為に資料も解説書も見当たらず、模写図(平成2年、風戸里美氏)によって想像するしかない。国王の出家に伴う后達の剃髪を描いた壁画のようだが、作者は女性の身にとって何よりも悲しい剃髪の命に深く同情し、国王の命に従わざるを得なかった后妃の悲しみと哀れを詠われたのだと思う。(曽我)


     (当日意見)
★「后妃剃髪」は何かの罰だったのではないか。(藤本)
★乾いたことばを並べている。「無惨のごとし」だけが心。(慧子)
★「教変」だから教え。王は熱狂的な仏教者で布教の為にこういう絵を描かせた。剃髪すれば普通
 の生活は出来ず、仏教に帰依するしかない。(曽我)
★作者は「無惨のごとし」と言っているから、並んで剃髪される后妃達に同情はしているんだろう
 けど、作歌の意図はどうなのかなあ。王は自分の意志による出家だからいいけど、后妃達は出家
 したくない人たちもいっぱいいただろうに、嫌だという意思表示は認められず一律に踏みにじら
 れることへの無惨さなのかなあ。王が亡くなったら后妃達は全員水銀のまされて後を追わせられ
 た、等という話もあるし。私個人は、「髪は女の命」とかいう考え方そのものが女性差別だと思
 っています。もちろん髪は大事ですけど、「女の命」とは思わないです。やっぱり、権力によっ
 て自由意志が踏みにじられる無惨さを言っていると私は解釈します。(鹿取)

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