かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠(韓国) 424

2016年01月10日 | 短歌一首鑑賞
  馬場あき子の外国詠 (2013年12月)【発光 武寧王陵にて】『南島』(1991年刊)P91
      参加者:K・I、崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:崎尾廣子
      司会と記録:鹿取 未放
 

424 埋葬の王妃の闇に発光せし金釵王冠のほのけき宇宙

     (レポート)
 王陵の中の暗闇で王妃の棺が置かれていた跡を見つめているのであろうか。百済中期の都・熊津(ウンジン)での王妃の華やかであったであろう日々を想い描いているのであろうか。「発光」で「金釵王冠」は闇の中でこそ本来の輝きを放つと詠っていると感じ取る。「ほのけき宇宙」から朝鮮史の中で六世紀武寧王国が存在し、王妃が生きた事実がはかなげに伝わってくる。結句がこの歌の詩情を深めており、余韻が生まれている。(崎尾)
 ■金釵はかんざしである。金釵王冠はそのかんざしが五つ下がっている。(図説韓国の歴史・河出書房新社)


     (当日発言記録)            
★闇の中で屍と共にある「金釵王冠」は妖しく光り輝いていたであろうが、「本来の」かどうか  
 は疑問だ。(金そのものの性質にのみ則せばそうかもしれないが、ここは人間とのからみで考
 えてみたい。)生前、王妃が儀式でかむったときがあったろうから、墓の中の輝きに、作者は 
 生前の王妃の華やか姿を偲んでいるのだろう。結句の「ほのけき宇宙」は、直接には王と王妃 
 の棺が並べられた石室のことを言っているのだろうが、死後もほのかに繋がっているふたりの 
 愛のかたちのようなものを感じる。(鹿取)