かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 197

2015年02月25日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究 24 (2015年2月) 【単独者】『寒気氾濫』(1997年)83頁
          参加者:かまくらうてな、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
           レポーター:崎尾 廣子
          司会と記録:鹿取 未放


197 油絵のじっと動かぬ大楡は樹冠に空が張りついている
    
     (レポート)
 油絵に描かれている空はおおむね絵に奥行きを与えている。しかしこの油絵の空は「樹冠に空が張りついている」である。絵の遠近感をそこなう空であるようだ。しかし「大楡」の「樹冠」の存在を際だたせていると思う。「張りついている」と独特な言葉で捉えているこの油絵に吸い込まれるようだ。(崎尾)


     (意見)
★松男さんは現実の樹を信奉している人だから、この油絵は生きるということを象徴できていない
 と思っている。樹冠は光合成をしている所でしょう。そこへ空が張り付いてしまったら元気がな
 くなってしまう訳よ。絵は実物に劣っていると考えている。(曽我)
★水彩画なんかだと全てのものが動きそうな感じがする。ところが、油絵は存在を強く出し過ぎる
 ために固まってしまう。東洋の絵の緩い感じが心にあってこの油絵は駄目と。(慧子)
★大楡は自分のことで、周囲に対する違和感を表現したのだと思う。(うてな)
★上の句と下の句の関係が、不思議な技法の歌ですけど、大楡はうっとうしくて窒息しそうな感じ
 なんでしょうかね。(鹿取)
★「油絵のじっと動かぬ大楡」というのは単独者だと思う。崎尾さんのいう奥行きがあるというの
 は関係を持つことだと思う。(鈴木)