かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠 113(スペイン)

2014年01月14日 | 短歌一首鑑賞
   【西班牙 Ⅰモスクワ空港へ】『青い夜のことば』(1999年刊)P50
                 参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
                 レポーター:崎尾廣子
                   まとめ:鹿取未放


69 イベリア航空の小さな窓からみるだけのモスクワ空港のかなとこ雲よ

  (まとめ)(2008年5月)
 モスクワではトランジットだったのだろう、空港しか詠われていない。ここは飛行機の窓から見ている場面。かなとこは、上が平らになっていて、金槌を受ける台らしい。よって、かなとこ雲は、入道雲の一種だが雲の先端が平らになったものをいうらしい。
 かなとこには日露の過去の関係に関わる何か、あるいは圧政や粛正にかかわる何かの暗示があるのだろうか。
   (鹿取)


     (レポート)(2008年5月)
 旅客機の窓はなぜか小さい。その小さな窓からロシアの広大な大地高くに湧く雲が目に入る。かなとこ雲である。かなとこという言葉から想像する雲の姿は厚く角張っている。が、なぜか丸みを帯びているように思えるのは結句の「よ」のもつひびきによるのであろうか。言いしれぬ親しみにある作者の思いが伺える。また木訥であるかのように思えてくるロシア人の人柄までも連想する。固有名詞であるイベリア航空、モスクワ空港が「の」と相俟って言葉の持つ堅さをやわらげている。小さな窓とも遊べる楽しさが旅にはまたあると表現しているのであろうか。(崎尾)